その免罪符は飢えていた。

ひづき

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 それからは、性的な嫌がらせ?調教?躾?をされながら監禁される日々が続いた。



 毎食粥しか食べていないせいか、社会と断絶されて日付すら分からなくなっているせいか、莉緒リオはいつの間にか抵抗するのをやめていた。こんなのはオカシイと思うのに、頭が働かないのだ。自身の思考力が低下している、それを実感して、認識しているのに、心は動かない。

「ヤナトは、おれが欲しいの?」

 毎日可愛いと言いながら触れてくる梁都ヤナトに問い掛ける。その手の温かさに、何となく浮かんだ疑問だった。それについて考えるという力が今の莉緒リオにはない。

「変な事を聞くね。莉緒リオはずぅっと僕のものだよ?」

「そうだっけ───?」

 梁都ヤナトが膝に触れる。その意図を汲んで莉緒リオは自ら大きく脚を開いて仰向けに転がる。そこが寝台でも床でも、最早関係ないし、違和感も覚えない。秘部に硬い肉の棒を挿入され、拓かれる感覚に「んあっ!」と声を上げた。へその周囲の筋肉がビクビクと痙攣する。気持ちいい。でも切ない。ちょうだい、ちょうだいと、肚が雄に媚びてしまう。

「ここは、ちゃーんと、僕を覚えて、僕を歓迎してくれてる。うれしいな」

「うれし、俺も、うれし、ひあっ!やっ!んんっ!」

 突然激しく乱暴に前立腺を擦られて喘ぐ。胎内の奥の奥を先端で叩かれるような激しさに痛みを覚えて涙を滲ませた。痛いはずなのに、じわじわと熱が広がってむず痒いような物足りなさに、莉緒リオはぎこちなく腰を揺らす。揺らすが、梁都ヤナトの肉棒は莉緒リオの欲しいところを避けるように動き、逃げる。

 その動作に、莉緒リオは絶望した。

 ───パパもママもリオを愛してくれないのに!

 ───リオを愛してくれるのはおにいちゃんだけなのに!

「おにいちゃん、やだぁ」

 ボロボロと子供のように滂沱の涙を零し始めた莉緒リオに、いつも笑顔を崩さない梁都ヤナトが珍しく呆気にとられる。そんな梁都ヤナトの変化が目に入らないほど、涙で前が見えない。

「ご、ごめん。ごめんね、莉緒リオ。号泣させるつもりじゃなかったんだけど」

 慌てた梁都ヤナトが腰を引こうとするので、莉緒リオ梁都ヤナトの腰に脚を絡めて引き止める。腕を伸ばし、梁都ヤナトに抱き着いて離れない。

「やだ。やだやだ。はやく、はやく、もっとちょうだい!おなかが切ないよぉ」

「あー、お強請りは嬉しいけど、そんなにがっちりホールドされたら流石に動けないから、ね?」

「…まだぬかない?」

「まだ抜かない。約束する」

 その言葉に、莉緒リオは笑う。まるで迷子の子供が親を見つけたかのような笑顔を見せた。

 その様に梁都ヤナトは慈愛に満ちた笑みを返す。





 号泣してからというもの、莉緒リオの待遇が変わった。

 梁都ヤナトが購入してきた衣類を着るようになり、寝室以外の部屋へも自由に出入りして良くなった。梁都ヤナトが一緒なら外出も出来る。

 今まで梁都ヤナトが在宅の仕事をしている間、莉緒リオは寝室で惰眠を貪る以外にやることがなかったけれど、久しぶりに台所で食事を作るようになった。粥以外を食べ、人間らしい生活に戻ると少しずつ思考力も戻ってくる。

 莉緒リオは、自身の意志で、梁都ヤナトから離れないと決めた。世界で唯一自分を愛してくれる人、しかも法的にも兄弟なのだ、離れる必要性を見出だせない。梁都ヤナトに監禁されなければ、今も尚、どうせ誰も自分を愛さないと決めつけて自ら不幸を呼び寄せ続けていただろうと莉緒リオは思う。

 他に方法はなかったのか…?と思わないこともないが、結果が良ければ別に良いかと考え直す。

「まさか莉緒リオがこんなに料理上手だなんて知らなかったな」

 仕事に区切りをつけたらしい梁都ヤナトがリモート会議用のインカムを頭から外し、ダイニングテーブルについた。莉緒リオはすかさず、梁都ヤナトの前にご飯と味噌汁を差し出す。

「俺はアンタがレトルト食品オンリーで生活してたことの方が信じらんねぇよ」

 なんでも梁都ヤナトは同居していた義母(莉緒リオの実母)による手料理は気持ち悪くて生理的に受け入れられなかったらしい。あの女の、ねっとりとした性的な視線も気持ち悪く予定を詰め込んで在宅時間を最低限にしていたという。

「あのババアが莉緒リオに八つ当たりしないよう、最低限の機嫌はとっていたが、本当に気持ち悪かった…。莉緒リオとは引き離されるし、本当に最悪だったよ」

 まるで後遺症のように、誰かの手料理というものを身体が受け付けないのだという。外食もプロによる手料理であることは変わらず苦手だとか。レトルト食品はあくまで工場で機械が製造していると自身に言い聞かせて何とか食べられる程度。重症である。
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