冒険者試験に落ちた少年、思い切って闇ギルドの門を叩いてみる

空 水城

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第九話 「仲間探し」

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 クロムさんから依頼を受け取った後。
 僕は闇ギルド内をちょろちょろと歩き回っていた。
 おすすめされたからには仲間でも集めようかと考えている。
 別に一人でも大丈夫だとは思うけど、一応初依頼なので成功率を上げようという魂胆だ。
 失敗したら報酬と同じ額の罰金を取られるそうですし。
 それに、仲間の当てがないわけでもないからな。
 
 というわけで僕は、薄暗い闇ギルドの中を視線を泳がせながら徘徊していた。
 どこにいるかなぁと目を凝らしてみるが、なかなかに見つからない。
 心なしか周りの闇冒険者たちからちらちらという視線を感じるけれど、特に気にしないことにした。
 やがて僕は点在する黒テーブルの一つから、ある人物の姿を見つけ出す。
 その人はなぜか隅っこの席で、ぽつんと一人だけで座っていたが、それも特に気にしないことにした。
 歩み寄っていき、躊躇わずに声を掛ける。

「あの」

「……?」

 振り向いてくれたのは、今朝に会った明るい茶髪の女の子だ。
 まだお互いに名前も知らず、一回だけしか交流していないが。
 見ず知らずの僕に色々なことを教えてくれたので、もしかしたら依頼の方も手を貸してくれるのではないかと考えた。
 
 依頼の手伝いを頼むなら彼女以外に思いつかない。
 というか彼女以外にはとてもじゃないが声を掛けられない。
 ただでさえ人見知りなのに、そのうえこんな怖い人たちの中から仲間を集めるなんて到底無理だ。
 だから一度見知った彼女ならたぶん大丈夫だと思って、意を決して声を掛けることにした。
 すると少女は、なぜか少し警戒した様子で返事をしてくれた。

「あ、あぁ。朝の暗殺者さんですか。私に何かご用ですか?」

「あっ、いや、ちょっと話があってさ……」

 若干身を引いている彼女を見て、思わず言葉が詰まってしまう。
 なんだか拒絶されているみたいだ。
 しかし他に当てもなく、僕は予定通り彼女に協力の話を持ち掛けようとした。

「こ、この後とか暇かな?」

「……?」

 女の子の誘い方なんてまるで知らないので、出来損ないのナンパみたいになってしまった。
 やり直したい。
 そのせいかどうかはわからないが、余計に彼女を警戒させてしまったようだ。
 少女はさらに身を引きながら、僕の問いに答えてくれる。

「ま、まあ、依頼もないですし、特に用事はありませんけど」

「ホ、ホント!? じゃあさ、もしよかったらなんだけど……ぼ、僕と一緒にクエストしに行かない?」

「えっ……?」

 まるで予想だにしなかったのだろうか。
 少女は虚をつかれたように目を丸くして、ピタッと固まってしまった。
 そして気のせいか、周りからも息を呑む気配を感じる。

「お、おい、暗殺者のやつ……」

「あぁ。リスカのことを誘いやがった」

「あいつ正気かよ」

「……?」

 上手く聞き取ることはできなかったが、皆一様に驚いているようだった。
 何かおかしなことを言っただろうか?
 闇ギルドでは協力して依頼に対応するケースが多いんじゃなかったっけ?
 むしろそうして手段を選んでいられないのが闇ギルドじゃなかったの?
 と疑問に思っていると、少女が戸惑った顔で逆に問いかけてきた。

「ど、どうして、私なんですか?」

「えっ? どうしてって、それは……」

 特に悩むこともなく、正直な答えを返す。

「一番声を掛けやすかったからだよ」

「こ、声を? 私がですか?」

「う、うん。今朝も何も言わずに助けてくれたし、一緒にクエスト行ってくれるんじゃないかなって思って。それに君も知ってると思うけど、僕まだ闇ギルドに入ったばかりで知り合いなんていなくてさ、頼りになるのが君以外にいなかったんだよ」

「……」

 偽りない返答をすると、なぜか少女は再び硬直してしまった。
 先ほどからなんだか妙な反応ばかり返ってくるな。
 当然それを訝しく思ったのだが、これも特に問いただすことはしなかった。
 代わりに僕は、ダメ押しと言わんばかりに、彼女に声を掛けた理由を重ねることにした。

「あっ、あとそれから」

「……?」

「他の人と違って、僕のことを見つけてくれたから」

「は、はいっ?」

「ほら僕、こんな天職のせいか、めっちゃ影薄いし。普段から全然人に気付かれない体質があるんだけど……」

 朝方のことを思い出して、僕は笑みを浮かべる。

「君は人ごみの中から僕のことを見つけてくれたでしょ」

「は、はぁ……」

「だから、それがちょっと嬉しくて、もう少しだけ君と話してみたいなぁ……って思っててさ」

「……」

 三度の静止。
 しかしこれは僕の正直な気持ちだ。
 僕はもう少しだけでもいいから、この子と話をしていたかった。
 人波の中から僕を見つけてくれた人は初めてだし、何よりここまで親切にされたことだって一度もなかったから。
 だけどまあこれは、ただの僕のわがままに近いので、無理強いするわけにはいかない。
 だから僕はおどけた感じで付け加えた。

「あっ、もちろん、嫌だったら全然断ってくれてもいいからさ。突然こんなこと言われても困るだろうし……」

「…………行きます」

「……えっ?」

「クエスト、私も一緒に行きます。一緒に行かせてください!」

「……」

 今度はこちらが固まる番だった。
 少女は先ほどからの弱々しい様子とは打って変わって、力強い返事をしてきた。
 微妙な反応が続いていたので、てっきり断られるかと思っていたけど。
 まさかこんな出来損ないのナンパみたいな誘いを受け入れてくれるとは。
 それにこの妙な熱は、いったいどういう理由なのだろう?
 なんて不思議に思っていると、またしても周囲から息を呑むような気配を感じた。

「あ、暗殺者とリスカが……」

「なんだよその組み合わせ」

「絶対にやばいだろ」

 なんだか外野がうるさい。
 闇ギルドに感じた最初のクールな印象が、次第に音を立てて崩れていった。
 まあそれはいいとして、今はとにかく少女との自己紹介を済ませるべきだ。
 そう考えた僕は、改めて姿勢をただし、眼前の少女に手を差し伸べた。

「そ、それじゃあよろしく。えっと……」

「リスカ。私の名前はリスカです」

「僕の名前はアサト。これからよろしくね、リスカ」

「はい。よろしくお願いします、アサトさん」

 僕らは握手を交わす。
 こうして僕は、念願とは少し違うけど、初めてパーティーを組むことになった。
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