9 / 35
第九話 「仲間探し」
しおりを挟むクロムさんから依頼を受け取った後。
僕は闇ギルド内をちょろちょろと歩き回っていた。
おすすめされたからには仲間でも集めようかと考えている。
別に一人でも大丈夫だとは思うけど、一応初依頼なので成功率を上げようという魂胆だ。
失敗したら報酬と同じ額の罰金を取られるそうですし。
それに、仲間の当てがないわけでもないからな。
というわけで僕は、薄暗い闇ギルドの中を視線を泳がせながら徘徊していた。
どこにいるかなぁと目を凝らしてみるが、なかなかに見つからない。
心なしか周りの闇冒険者たちからちらちらという視線を感じるけれど、特に気にしないことにした。
やがて僕は点在する黒テーブルの一つから、ある人物の姿を見つけ出す。
その人はなぜか隅っこの席で、ぽつんと一人だけで座っていたが、それも特に気にしないことにした。
歩み寄っていき、躊躇わずに声を掛ける。
「あの」
「……?」
振り向いてくれたのは、今朝に会った明るい茶髪の女の子だ。
まだお互いに名前も知らず、一回だけしか交流していないが。
見ず知らずの僕に色々なことを教えてくれたので、もしかしたら依頼の方も手を貸してくれるのではないかと考えた。
依頼の手伝いを頼むなら彼女以外に思いつかない。
というか彼女以外にはとてもじゃないが声を掛けられない。
ただでさえ人見知りなのに、そのうえこんな怖い人たちの中から仲間を集めるなんて到底無理だ。
だから一度見知った彼女ならたぶん大丈夫だと思って、意を決して声を掛けることにした。
すると少女は、なぜか少し警戒した様子で返事をしてくれた。
「あ、あぁ。朝の暗殺者さんですか。私に何かご用ですか?」
「あっ、いや、ちょっと話があってさ……」
若干身を引いている彼女を見て、思わず言葉が詰まってしまう。
なんだか拒絶されているみたいだ。
しかし他に当てもなく、僕は予定通り彼女に協力の話を持ち掛けようとした。
「こ、この後とか暇かな?」
「……?」
女の子の誘い方なんてまるで知らないので、出来損ないのナンパみたいになってしまった。
やり直したい。
そのせいかどうかはわからないが、余計に彼女を警戒させてしまったようだ。
少女はさらに身を引きながら、僕の問いに答えてくれる。
「ま、まあ、依頼もないですし、特に用事はありませんけど」
「ホ、ホント!? じゃあさ、もしよかったらなんだけど……ぼ、僕と一緒にクエストしに行かない?」
「えっ……?」
まるで予想だにしなかったのだろうか。
少女は虚をつかれたように目を丸くして、ピタッと固まってしまった。
そして気のせいか、周りからも息を呑む気配を感じる。
「お、おい、暗殺者のやつ……」
「あぁ。リスカのことを誘いやがった」
「あいつ正気かよ」
「……?」
上手く聞き取ることはできなかったが、皆一様に驚いているようだった。
何かおかしなことを言っただろうか?
闇ギルドでは協力して依頼に対応するケースが多いんじゃなかったっけ?
むしろそうして手段を選んでいられないのが闇ギルドじゃなかったの?
と疑問に思っていると、少女が戸惑った顔で逆に問いかけてきた。
「ど、どうして、私なんですか?」
「えっ? どうしてって、それは……」
特に悩むこともなく、正直な答えを返す。
「一番声を掛けやすかったからだよ」
「こ、声を? 私がですか?」
「う、うん。今朝も何も言わずに助けてくれたし、一緒にクエスト行ってくれるんじゃないかなって思って。それに君も知ってると思うけど、僕まだ闇ギルドに入ったばかりで知り合いなんていなくてさ、頼りになるのが君以外にいなかったんだよ」
「……」
偽りない返答をすると、なぜか少女は再び硬直してしまった。
先ほどからなんだか妙な反応ばかり返ってくるな。
当然それを訝しく思ったのだが、これも特に問いただすことはしなかった。
代わりに僕は、ダメ押しと言わんばかりに、彼女に声を掛けた理由を重ねることにした。
「あっ、あとそれから」
「……?」
「他の人と違って、僕のことを見つけてくれたから」
「は、はいっ?」
「ほら僕、こんな天職のせいか、めっちゃ影薄いし。普段から全然人に気付かれない体質があるんだけど……」
朝方のことを思い出して、僕は笑みを浮かべる。
「君は人ごみの中から僕のことを見つけてくれたでしょ」
「は、はぁ……」
「だから、それがちょっと嬉しくて、もう少しだけ君と話してみたいなぁ……って思っててさ」
「……」
三度の静止。
しかしこれは僕の正直な気持ちだ。
僕はもう少しだけでもいいから、この子と話をしていたかった。
人波の中から僕を見つけてくれた人は初めてだし、何よりここまで親切にされたことだって一度もなかったから。
だけどまあこれは、ただの僕のわがままに近いので、無理強いするわけにはいかない。
だから僕はおどけた感じで付け加えた。
「あっ、もちろん、嫌だったら全然断ってくれてもいいからさ。突然こんなこと言われても困るだろうし……」
「…………行きます」
「……えっ?」
「クエスト、私も一緒に行きます。一緒に行かせてください!」
「……」
今度はこちらが固まる番だった。
少女は先ほどからの弱々しい様子とは打って変わって、力強い返事をしてきた。
微妙な反応が続いていたので、てっきり断られるかと思っていたけど。
まさかこんな出来損ないのナンパみたいな誘いを受け入れてくれるとは。
それにこの妙な熱は、いったいどういう理由なのだろう?
なんて不思議に思っていると、またしても周囲から息を呑むような気配を感じた。
「あ、暗殺者とリスカが……」
「なんだよその組み合わせ」
「絶対にやばいだろ」
なんだか外野がうるさい。
闇ギルドに感じた最初のクールな印象が、次第に音を立てて崩れていった。
まあそれはいいとして、今はとにかく少女との自己紹介を済ませるべきだ。
そう考えた僕は、改めて姿勢をただし、眼前の少女に手を差し伸べた。
「そ、それじゃあよろしく。えっと……」
「リスカ。私の名前はリスカです」
「僕の名前はアサト。これからよろしくね、リスカ」
「はい。よろしくお願いします、アサトさん」
僕らは握手を交わす。
こうして僕は、念願とは少し違うけど、初めてパーティーを組むことになった。
0
あなたにおすすめの小説
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる