宇宙(そら)きゃんっ! 私、ぼっち女子高生だったんだけど、転校先で惑星降下アウトドア始めたら、女の子にモテモテになりました!

MITT

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第二話「ユリちゃんの夏休み」③

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 とにかく、私達強化人間が宇宙の戦場に投入されることもなく、ユリも将来的には平和なデスクワークやら、AI達のお守り役とか、そんな感じの業務に従事することになりそうだった。
 
 どのみち、私なんてエースパイロットとかには、程遠い……闘争心が薄いっ! なんて教官に怒られたりしてたからね。
 
 私、誰かと競ったり、勝負事って苦手。
 対戦ゲームとかだと、夢中になっていつの間にか勝ってるって感じだったりするけど。
 戦争とかに向いてるとは、思えなかったから、別にこれでいいかなって思ってる。
 
 いずれにせよ、私はエーテルロードの戦争なんて、全く関わり合いがなかった。
 
 そもそも、エーテルロードの事も一般的には、単なる通路……街中にもある高速道路みたいなものと認識されていた。
 当然、いち女子高生に過ぎない私が知ってることなんて、たかが知れてる。
 
 エリコお姉さまは、エーテル空間の軍用技術開発という形で色々関わってるみたいだけど、どのみち、私達にはあまり関係ない話ではあった。
 
「……あの。キリコ……お姉ちゃん、色々問題ある……けど……よろしく」

 キリコお姉の生活力のなさは知ってたけど、社会人デビューしてもこの有様だとは……。
 今後もよろしくと言う意味を込めて、三つ指付いて二人に深々と頭を下げる。

「あはは、センセ……この妹ちゃんええ子やな。まったく、そんな風に頼まれちゃったら、無下には出来んな。エリー、こりゃちょくちょく、センセの様子見に来んとアカンなぁ」

「そうですね。キリコ先生って意外と生活力無いって解りました。妹さん……ユリコさんも心配なさらず、わたくし達におまかせを!」

「ちょっと! 二人共、なにそれっ! それじゃ、私がほっとくと干からびかねないって言ってるようなもんじゃない! ユリちゃんも少しはフォローしてよっ!」

 うん、とっても心配。
 4月から赴任して、8月までのわずか4ヶ月で、ゴミ溜めのようなお部屋を生み出したのだから。

 この姉の生活力のなさは、ヤバイ。
 
「自覚ない時点で……やばい」

 そう言って、力いっぱい頷く。
 
 すると、何故か二人が大笑いする。
 ……なんか和んだらしかった。
 
 どこかで、チリリーンと、風鈴の音が聞こえた気がした……。
 夏の日差しというには、少し穏やかな日差し。
 
 ……穏やかな優しい……夏のひととき。
 
 とにかく、キリコ姉の教え子たちとの出会いってのは、こんな風だった。
 
 けど、彼女達が後々私にとって、かけがえのない友だちになる。

 この時、私はそんな事は夢にも思ってなかった。
 でも、これは彼女達との出会いと言う私の大切な記憶。
 
 小さな……けど、忘れ得ぬ素敵な夏の思い出……。
 
 
 それから……。
 私は、キリコ姉のところで、まるで甲斐甲斐しい新妻のように、身の回りの世話やらご飯やら作ったりして、お姉ちゃんにとっても感謝された。
 
 教え子の子達とは、たまに見かけても挨拶する程度にとどめていた。
 
 まがりなりにも姉妹だし、私はこのコロニーではとっても目立つ風貌なので、キリコ姉の教え子達も、外で買い物とかしてて、顔を見ると挨拶くらいはしてくれた。
 
 ちなみに、髪の毛はプラチナブロンドで、ロングボブ……所々に赤いのが混じってるけど、それは放熱ファイバー。

 骨格強化や脳強化の弊害で、身体に熱が籠もりやすいので、この手の強制冷却システムが身体のあちこちに組み込まれてる。
 
 肌も白いし、目もガラス製のカメラアイに換装済み。
 
 まぁ、普通に珍獣扱い……にもなるよねぇ……。
 ここ、身体改造者ってびっくりするほど居ない。
 
 教え子の子達とも、友達になりたいなーって思わなくもなかったけど、どうせ夏休み明けたら、私はエスクロンに戻る予定。

 仲良くなると別れが悲しくなるって言うから、敢えて深入りはしなかった。

 何よりも、次々と物騒なニュースが流れるようになっていて、呑気にしてられなくなっていたってのもあった。
 
 エスクロンの社有中継港にして、銀河連合有数の艦隊、永友艦隊の母港プロクスターでの大規模テロ発生を皮切りに、エーテルロードへの謎の第三勢力の進出……。
 
 エスクロンやアドモスのような武闘派企業とクリーヴァ社の暗闘は益々激しさを増していた。
 
 ……そんなエーテルロードの戦争は、一見平和なコロニーですら、確実に影を落としつつあった。
 
 私にも、遠まわしに社から帰還を促す連絡があり、そろそろエスクロンに帰ろうかなとも思い始めていたのだけど。

 エーテルロードも色々物騒になっているとかで、輸送艦や旅客船も護衛艦なしでは、危なっかしい状況となり、エスクロン行きのチケットも全然取れない……なんて状況が続いていた。

 キリコお姉は、今の上げ膳据え膳の生活にすっかり味をしめてしまって、ずっといて欲しいなんて言ってたけど、そうもいかない……。

 通信制教育だって、たまには学校に行かないといけないし、住民登録がエスクロンなので、各種免許の更新とか新規所得は、エスクロンでないと出来ない。

 そもそも、私のクオン滞在資格は観光ビザだから、本来は8月末までで、延長申請しても9月まで……それを過ぎたら、拘束されて強制送還されても文句言えない。
 
 けれど、ある日。
 エリコお姉さまからの衝撃的な連絡が来たことで、私の身の回りの環境は、激変することになる。
 
「はい、クスノキ……です」

 キリコ姉の部屋で、のんびりとテレビを見ていたら、部屋の電話にコール。
 おせんべを齧りながら、呑気に返事をする。
 
「キリコ? あ、ユリちゃんか……。あ、あのさぁ、キリコ近くにいる? 代わって欲しいんだけど」

 珍しく緊張したような声色のエリコお姉さま。

「お姉さま……。キリコ姉まだ学校……。週一の登校日……お仕事、ユリ……お留守番」

「そっかぁ、キリコって……授業中だとダイレクトコール取ってくれないのよね。夏休み期間だから、部屋にいると思ったのに……参ったなぁ、すごく急ぎの用件なのに……」

「急ぎの伝言……ユリ、言付かるよ」

 私がそう答えるとお姉さまは、何故か押し黙る。
 
 何か、思案しているようだった……なんだか、悪い予感がしてならないんだけど、それなら、尚更秘密になんてして欲しくなかった。

「……ユリちゃんには、黙っておきたかったんだけど……。ああ、もうっ……しょうがないか。いい、落ち着いてよく聞いて、これはユリちゃんにも関係ある話だから」

「……はい。ユリは大丈夫……です」

「お父さんがクリーヴァの奴らの人質にされた……。アドモスのカドワキさんやマダム・サリバンもね。奴ら、交渉の席でいきなり兵士を乱入させて銃を乱射。その場に居た全員を拘束。それだけに飽き足らず、連中、人質の家族にも狙いを付けてるらしいの……どうも、家族を人質に取って、逃げられないようにした上で都合よく利用するつもりだって話……。とても正気とは思えないわ」

「な、なんですか! それっ! けど、そうなると、お姉さまは大丈夫なんですか?」

 そうなると、自分も危ない……って話なんだけど、私は自分なんかより、お姉さま達家族の方が大事だった。

「私は、本社のガチガチのセキュリティに囲まれてるし、お母さんも一緒だから大丈夫。けど、ユリちゃん、それにキリコもなんだけど……二人のところまでは、すぐには手が回らないみたいなの。でも、幸いそこは独立コロニー国家。そこから動かない限り安全だから、悪いけどしばらく、そっちにいて! いい、戻ってこようなんて思わないで!」

「……わ、私……そろそろ、引き上げようと……思ってたし……お姉さま達も心配……だから」

「駄目っ! 今、エーテルロードのあちこちで、クリーヴァ社の戦闘艦隊と銀河連合の艦隊が派手に戦闘してるらしいの。民間航路は連合政府通達で完全に停止中。もうエーテルロードはどこも大騒ぎになってるから、どのみち、しばらく動けないと思う……あ、ごめん! キリコから連絡来た……とりあえず、じきにうちのセキュリティ部門がそっちの守りを固めてくれるし、学校もキリコのとこにでも通えるようにしとく。滞在資格なんかもなんとでもなるから、ユリちゃんは何も心配しなくていい。じゃ、いったん切るわね。また連絡するからっ!」

 ……それだけ言い残して、エリコお姉さまからの通話は切れてしまった。
 
 お父さんが、とっても危ない状況にいる……それだけは解った。
 TVのニュースでは、クリーヴァとの交渉中継なんてのをやってたけど、中断して、しばらくお待ち下さいなんて表示されてる。
 
 ……なんか、大騒ぎになりつつあるってのは、私にもわかった。
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