行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
18 / 44
第1章

第17話 実食

しおりを挟む
案内された宿の部屋。広さは3畳くらいだろうか。ここは一人部屋で、ベッドとサイドボードと椅子が一つづつ置かれているだけのシンプルな部屋だ。
窓は一つあるがガラスははまっていない。代わりに木の板が取り付けられており、それを押すと下部が開いてそこを突っ張り棒で支えるタイプのようだ。先ほど雑貨店のエピスが『メガネは高級品』と言っていたので、この世界にもガラスはあるが高いんだろうな。
ベッドは木でできており、マットレスの代わりにワラのようなものを束ねて敷き詰め、その上に布をかけた感じで、枕と毛布も置かれている。寝心地はイマイチだが、清潔感はあるし、屋根のあるところで落ち着いて眠れるだけでも良しとしよう。ちなみに部屋割りは、俺とコータがそれぞれ一人部屋、ミーコとサーヤは2人でツインの部屋だ。

ベッドに寝転んで一息ついていると、ほどなくしてミーコ達も来たようで、廊下が騒がしくなった。しばらくして廊下に出ると、ちょうど他の3人も一旦自室に入って荷物を置いて出てきたところだった。
部屋には内側からしか鍵がかからないようなので、念のためだいたいの荷物は持ったままで、夕食をとるため一階の酒場へと移動した。

酒場の壁には札がいくつか掛けてあり、メニューと値段が書かれている。ラーメン屋とか昔ながらの食堂のような雰囲気だ。空いている端っこの方の席に座るなり、受付にいた少女が駆け寄ってきた。

「ご注文はお決まりですか?」

せっかちだな。まだメニューもちゃんと見てないっての。そう思いつつメニューに目をやって、4人で相談しつつ注文していった。

俺とコータはとりあえずエールを、サーヤとミーコは水を頼んだ。そして、パンとスープに、せっかくなのでホーンラビットと野菜を炒めたものを頼んだ。4人分頼んで230リア、こちらも前払いだった。

飲みものとパンとスープはすぐに運ばれてきた。パンは普通のコッペパンのような感じだが、日本で食べるものより少し固く、甘味も少ない印象だ。
スープは野菜たっぷりで、ジャーキーのような肉の細かいものが入っていた。味付けはシンプルに塩のみっぽい感じだが、よく煮込まれた野菜とキノコ、ジャーキー風の何かからの出汁がよく出ており、充分に美味しかった。

「スープもパンも結構美味しいね!」

「お腹が空いてるせいもあるでしょうけど、トロトロになった野菜が美味しいですね!」

「メシは美味いっすけど、エールがぬるいのが残念っす…」

「だな。エールは飲みやすくはあるが、うまくはないな。これならワインの方が良かったか」

口々に感想を言いながら食べているうちに、いよいよホーンラビットの料理が運ばれてきた。
4人分がまとめて盛られた大皿には、名前のわからない様々な野菜とともに、肉が見え隠れしている。平たく言うと肉野菜炒めだが、かなり野菜が多めだ。

「コレって、俺たちが持ち込んだ肉?」

運んできた例の少女に尋ねると、満面の笑みで返事が返ってくる。

「はい! ここ最近ホーンラビットの入荷がなかったので、みんな喜んで注文してますよ!」

そう言うと、少女は客が帰ったテーブルの食器を下げるために、足早に去っていった。
4人でしばし肉を見つめ、思ったことを言い合う。異世界初のモンスター料理はちょっと敷居が高い。解体も見ていたからなおさらだ。

「これが俺たちが倒したホーンラビットか…。モンスターの肉と思うとちょっと食い辛いな」

「モンスターの肉…。いや、ウサギの肉と思えばイケる、っすかね…? う、解体思い出しちゃったっす」

「あたしはウサギと思ったら余計無理なんだけど! ウサギって、食用っていうよりペットってイメージだからなぁ…」

ミーコが顔をしかめて言う。確かにペットをイメージすると躊躇ちゅうちょしてしまうが、あの凶暴なホーンラビットをペットと同列にはできんな。

「モンスターの肉…。こちらでは普通に食べられてるんだから、身体に何か影響があったりはしないですよね? ここはトドメをさしたコータさんからどうぞ」

「え、自分っすか? いやいや、年長者の優介さんからっしょ!?」

サーヤもコータもすごく嫌がってるわけではないのだが 、一番に手を付けるのは戸惑いがあるようだ。このまま行くとダチョウ倶○部的なアレになるんだろうか? とりあえずノッてみる。

「いや、一番の功労者のサーヤからいっていいぞ」

「いえいえ、功労者だなんてとんでもないです! どうぞ、コータさん」

「俺は後でいいっすから、さあ、優介さん!」

「俺はもう、けっこう腹いっぱいだから、サーヤ食っとけ」

3人でノリ良く押し付け合うが、ミーコには誰も振らなかったため、ソワソワと話に入るタイミングをうかがっている。そろそろ頃合いか。

「じゃあ自分が。」
「いいよ、俺がいく。」
「ここは私がチャレンジし「ハイハイ! あたし食べる!」」

「「「どうぞどうぞ」」」

「え!? あれ?」

元ネタを知っているくせにアッサリひっかかるとは、アホだな。3人でミーコににっこりと微笑み、サーヤがミーコの皿に肉をよそって渡す。

「いや、あの、ノリで言っただけで、その「はいはい、大丈夫だから口開けて」」

サーヤが箸で肉を摘んでミーコの口に近づける。が、ミーコは口を真一文字に結んで目をつむり、首を左右に振る。

「往生際が悪いぞ、ミーコ」

「そーよ。観念しなさい」

俺とサーヤは悪ノリで追い討ちをかけるが、コータがかばおうとする。

「あー、やっぱり自分が食うっすよ」

「ホント!? コータもがごっ! …うぅ~」

油断してミーコが口を開けた隙にサーヤが肉を突っ込んだ。
ミーコは2~3秒まずにうなっていたが、観念したのか目をつむって肉をみ始める。

「もぎゅもきゅ…ん? あれ? おいしい! 何コレ、ヤバイ! めっちゃ美味しいんだけど!」

ミーコは肉を飲み込むと、今度は自分で皿に取り始める。その様子を見て俺たちも自分の皿に取って食べた。

うん、これは美味い! 肉自体は鶏肉に近い感じだが脂身が少なく少し硬い。味付けは香辛料が効いていて、唐辛子のような少しピリっとした感じが食欲をそそる。それがこの肉とよくマッチしていて、噛めば噛むほど旨みが口に広がる。白いご飯か冷えたビールが欲しくなるな。

「いや~、ウマイっすね! 白メシ5杯は食えそうっす!」

「ホント!すごく美味しいですね」

「うんうん、ご飯欲しいね! それに、もっとお肉いっぱい入ってればいいのにな~」

ミーコはあんなに嫌がってたくせに、現金なもんだ。皆と絶賛しながら食べていると、コータに酔っ払いが声をかけてきた。

「おぅ! このホーンラビット、兄ちゃん達が持って来たって?」

「うっす!」

「ここんとこホーンラビットは全然獲れなくてな。俺ぁ久々に食ったよ! いや~、ウマかった! ありがとな!」

「いえいえ。自分らは持ち込んだだけで…」

「最近獲れなくなったって、何か原因が?」

ふと疑問に思ったので聞いてみる。

「ん~、よくわからんが、最近魔国の王が倒されたとかって、その影響じゃないのかって噂はあるな。だが、実際魔国の王とそのへんのモンスターに関わりがあんのかどうかもよくわからんからな」

「へー、魔国の王が…」

それって所謂いわゆる魔王ってヤツか? 物騒だな。春樹のヤツ巻き込まれてなきゃいいが…。若干場が暗くなりかけたところで、コータが話題を変えるように酔っ払いのオジサンに声をかけた。

「それにしても、ここの料理ウマイっすね!」

「おうよ! ここのは天下一品だからな。2代前のオヤっさんが、どっか遠い異国から旅してきた料理人らしくてよぉ。そりゃあ研究熱心でいろんな新しい料理を生み出したんだよ。そのオヤっさんが生きてた頃は、王都からも料理人が修行に来たもんさ」

「そうなんですか? 余所者よそものは珍しいって聞きましたけど?」

「ああ、もう結構前の話だからな。今じゃオヤっさんの弟子やその弟子のそのまた弟子なんかが国中にいる。わざわざこんな辺鄙へんぴな田舎にまで修行に来たりしねぇよ。でもここの料理が一番だがな! まぁ飲めよ兄ちゃん、俺のおごりだ」

そう言いつつ、酔っ払いのオジサンは俺とコータのコップに自分の机の小樽こたるからエールを注ぐ。

「へ~! じゃあその人のおかげでこんな美味しい料理が食べれるんだね!」

「そーいうこった。お、姉ちゃん達なかなかべっぴんさんじゃねーか! どうだ、こっちのもウマイぞ。食うか?」

「わーい、やった~!」

「ははっ! 元気いい姉ちゃんだな~。」

そう言いながらオジサンは、自分の皿から料理を取ってミーコとサーヤの皿に一つづつ乗せた。それと同時に2人が驚きの表情を見せる。

「え! コレって…!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...