行方不明の幼馴染みが異世界で勇者になってたらしい

肉球パンチ

文字の大きさ
40 / 44
第1章

閑話 決意(ケインの話)

しおりを挟む
今日もそろそろ狩りにでも行くか、と家を出たところで珍しく来客があった。この前ホーンラビットを持ってきた日本人達とソイツ等を引き連れたアヤメとノバラだ。アヤメがここに連れてくるなど、嫌な予感しかしない。大勢でゴチャゴチャ言われちゃ堪らんから、リーダーっぽいヤツとアヤメだけを家に招き入れた。

見ると、アヤメはイタズラでも仕掛けたような、ワクワクしたような顔をしてやがる。昔は顔に似合わずお転婆てんばで、よくこんな表情をしてたもんだ。大人になって落ち着いたと思ってたが、相変わらずか……。大方おおかた、コイツ等が日本人だと明かして俺が驚くのを楽しみにしてるんだろう。わざわざ乗ってなどやらんがな。

俺がコイツ等を日本人だと言い当てたことにアヤメもユースケも驚いたマヌケ面をしてたが、俺だって伊達に20年も冒険者やってたわけじゃない。世界中あちこち行く中で、祖父じいさんと同じ日本人てヤツに一度会った事もある。祖父じいさんから聞いてた通り、そいつも黒髪で茶色っぽい目だった。それに、名前のこともある。ユースケとかサヤカとか、アリアのどの国でも聞かない珍しい名だ。極めつけは異様に世間知らずだったことだな。ホーンラビットの解体を顔をしかめて見てたり、売れる部位やら物価についても聞いてきた。慎重に言葉を選んでる感じだったが、アリアに生まれてここまで旅してきたってんなら、今更な質問だろう。それを知らねぇってことは、アリアに来て間もないってことだろうよ。だから、コイツラがここに来たその日のうちに、日本人だと確信してた。

とりあえず用件を聞くと、こっちで行方不明のダチを捜すために急いで強くなりたいと言う。レベルも低く世間知らずのくせに、人探しの旅に出るなどと正気を疑う。いや、世間知らずゆえか。本当なら、旅なんかやめさせるのがコイツラのためだろう。先にアリアに来たはずだという男だって、生きてるかどうかも怪しい。いや、むしろ既に死んでる可能性が高いんじゃねぇか?

アヤメだってそれくらい分かってんだろうに、それでも止めずに協力してるっつーことは、止めても無駄と判断したってとこか。実際、俺が多少威圧したところで、このユースケという男は引く気は一切ないようだ。なら、ここで俺が突き放したところで諦めもしないだろうし、聞いた以上は俺もどうしたって気になる。それに、アヤメが実戦訓練に付き添うとか言い出しかねんしな。それで万が一があったりしちゃあ、祖父じいさんやアヤメの旦那に顔向けできねぇ。あんまり他人と関わりたくねぇってのに、まったく、面倒な事を押し付けてくれるもんだ。

それにしても、このユースケというヤツはグループのリーダーなんだろうが、捜したいという相手はダチだったな。ダチのために異世界こんなとこまで来て命かけるなんぞ奇特きとくなヤツだが、そんなお人好しがリーダーじゃあ、危なっかしくてしょーがねぇ。リーダーには、時として仲間以外を切り捨てる非情さも必要だ。そして、何があっても仲間と自分だけは生き延びる事を第一に考えられなければならん。その上で、目的を達成するんだっつー気概を持ち続けられんのか?
まぁ、仕方ねぇから面倒は見てやるつもりだが、場合によっちゃあ痛い目見せてでも諦めさせるように持っていった方がいいか。

とりあえず、何故なぜそうまでしてそのダチを捜そうとすんのか聞いてみることにした。まぁ、答えは大体予想してるがな。親友が、モンスターなんかがいる世界で独り彷徨さまよってんのかもしれねぇってんだから、心配でいてもたってもいられねぇとか、自分たちだけが安全なところで暮らしていくのは後ろめたいとか、まぁそんなとこだろう。コイツラはモンスターなんかいない平和な場所から来たってんだから、村の外の脅威きょういなんかを甘く見てるんだろうな。そういう理由だったら、甘っちょろいとは思うが、まぁ嫌いじゃねぇ。まずは現実をしっかり見せて、その上でまだ諦めねぇってんなら、しっかりきたえてやるか。でもって、俺たちのように大事な時に判断を間違えねぇように言い聞かせねぇとな……。

声や態度には出さねぇが、内心ではそんなことを考えながら聞くと、外にいるメンバーの中にそのダチの妹がいるとか言い出す。メンバー内の総意とか、今はどうでもいいんだよ。それよりも、いざという時はリーダーであるユースケ個人の気構えだとか心の在り処ありかだとかが重要になったりするんだ。あ? まさかその妹に惚れてて妹のためにとか言うのか? 命懸けで女を守るんだってんならまだいいが、ただ格好つけたいだけとかだったら鍛える価値もねぇな。

少し苛立ちながら、ユースケ自身の気持ちを聞かせろと重ねて尋ねる。すると、しばらく考え込んだかと思えば、意外な答えが返ってきた。

――自分のためですね。相棒のくせにさんざん心配かけて、手のかかる妹押し付けて、いい加減にしろって殴りとばしたいです――

相棒……。聞いた瞬間、アイツの顔が思い浮かんだ。忘れたくても忘れられねぇ、アイツ――トマスの顔が。俺にとってトマスは正に相棒だった。ダチとかいう生温い関係ではなかったし、同じパーティの仲間ではあったが、他の2人とは一線を画す存在。ケンカしてようが意見の相違があろうが、どんな時でも信頼を置いていた、他に変わりのいない唯一無二の存在だった。

自分のために捜して、見つけたら殴りとばす、か……。ふん、きっぱり言い切りやがって、面白おもしれぇじゃねぇか。冷静そうに見えて中身は熱い。自分のためだとか言ってるが、「手のかかる妹」を押し付けられてやって、他のヤツらも相棒も放って置かない。要は全員、メチャクチャ大事なんじゃねぇか。
コイツ、最初はトマスに似てる気がしたが、むしろ俺に似てる気もするな。

いいだろう、しっかり鍛えてやろうじゃねぇか。
俺は実戦での修行をつけることを了承して、さっそく出掛ける準備をした。

修行に向かう道すがら、俺はさっきのユースケとのやりとりを思い出していた。話の最後、ユースケが「殴りとばしたい」と言った時に、何か引っかかるモンがあったからだ。俺も、前に誰かにそう言った気がするんだが……。いや、冒険者時代には殴るとか斬るとか言ったのは一度や二度どころじゃないんだが、確かに何かが引っかかったんだ。

草原で、オーク達をおびき寄せる薬に必要な薬草を集めさせている間、さっさと探し終えたユースケが素振りを始めた。盾役のコイツは軽めの盾を装備して片手で剣を振るっている。まだまだヘタクソだが、盾を持った真剣な目を見ているとトマスを思い出す。しばらくユースケを通してトマスを見ながら、俺はまたさっきの引っかかりに思いを巡らせ……、そこで唐突に思い出した。
それは、トマスが結婚を決めた時に、妙に改まって俺に言った言葉。相棒と交わした何気ない口約束。

ーーーーーーーーーー

「ケイン、もし俺が死んだら、エリーゼを頼むな」

「あ? なにイキナリ馬鹿なこと言ってんだ? 大事なら最後までてめぇで守りやがれ」

そう言った俺に、アイツはニッと笑って言った。

「もちろん死ぬつもりなんかないさ。万が一の保険だ。ほら、戦闘中に迷いがあったりするとダメだろ?」

「ちっ、しょーがねーな。そん代わり、俺を当てにしてさっさと死んだりしたら、殴りとばしてやるからな。覚悟しとけよ」

今度は若干、頬を引きらせて。

「ははっ、死んでまでお前に殴られるのは遠慮したいな。うっかり死なないように気を付けるよ」

ーーーーーーーーーー

馬鹿か俺は。アイツが死んだ時のことばかりに囚われて、あの時の約束をキレイサッパリ忘れちまって……。

そうか。ずっと、まだ何かやらなきゃならんことがあるはずと、そう感じてたのはこの事だったんだな。
それにしても、あ゛ークソッ! なんで今の今まで忘れてたんだ! まったく、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさすぜ。

もしかして、アイツが最期に盾を遺したのは「約束どおりエリーゼを頼む」とかいう俺へのメッセージだったのか? まさか、殴られるのが嫌で身体を遺さなかったとか。……んなわけねぇか。

そういえば最近、魔国関連で物騒な噂があったな。エリーゼはまだあの魔国との国境近くの領都にいるんだろうか……。
チラリとユースケを見れば、まだ一心不乱に剣を振っている。腕だけで振ってんじゃねぇよ、ヘタクソめ。コイツラへの修行は骨が折れそうだが、これが済んだらエリーゼを訪ねてみるか。それで、今度こそあの盾を受け取って約束を果たす。でもって、いつかあの世へ行ったら、トマスを捜して殴り飛ばしてやろうじゃねぇか。ちょっと遅くなった分、8割くらいの力に抑えてやるから、首洗って待ってろよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...