4 / 164
4
しおりを挟む「ああ、いたいた。ラファエル!」
呼び掛けに視線を地上へと降ろした。
陽の光が眩しいのだろう、片手を軽く目に翳しながらこちらを見上げる男前の姿があった。
「……カイル」
「降りて来いよ!もうじき式がはじまるぞ」
ちらりと腕時計に目をやった。
確かにずいぶんと時間が過ぎていたようだ。
本を片手に身を起こす。
そして軽い動作で跳べば、たゆんだ枝がさわさわと揺れる。
ひらひらと舞い散る幾つかの葉と共に地上へと降り立った。
「わざわざ探しに?」
「どーせまたどっかで一人黄昏てんだろうと思ってな」
一人で黄昏てる……。
そんなイメージなのか、俺。
ニカッと笑う目の前の男は、ムカつくぐらいに男前だった。
服の上からでもわかるしっかりと鍛え上げられた体躯。
足、長すぎだろ。そう文句を言いたいぐらいの長身に男らしい顔立ち。
ダークグリーンの髪と、髪色より明るい緑のキリッとした瞳。
見るからにモテ男なコイツは当然のようにゲームキャラ。
大剣を振るいながら体術も使えるわりと使用頻度高めのキャラだった。
やっぱさ、男の子としては剣で恰好良く闘うの憧れんだわ。
一番お気に入りだったのはクラウ・ソラスの隊長。
剣に魔法に体術とオールマイティー感つよつよの一押しキャラ。
あとはパワーとスピードのバランスがいいカイルに、大規模魔法で広範囲攻撃可な侯爵子息、飛び道具とスピードが武器のクラウ・ソラスメンバーなんかが俺の鉄板。
一応他のキャラも一通りはやったけどな。
パワー重視系はあんま得意じゃないんだよな。
バッタバタと敵を倒したいからある程度スピード欲しいし、逆に女の子とかは威力がね。
キャラデザ的には好きなキャラでも使いやすいのってやっぱ偏るんだよなぁ。
「ほら、とっとと行こうぜ」
頭の後ろで腕を組んで歩き出すカイルに続く。
カイルはクラスメイトだ。
なにやら友達認定されてるようでこうしてちょくちょく声を掛けてくる。
イケメンで人気者、カーストトップなカイルが何故に俺なんかに構うのかはよくわからんが、普通にいい奴だと思う。
これで性格悪ければ
「イケメン爆ぜろ!!」というところだが……。
性格込みでイケメンか。……チッ。
そして俺は落ち着いた物腰の大人しい奴だ。
なんせ一人で黄昏てる奴だしな。
現在17歳。
この歳になれば大人びた奴もいて差はあまり歴然とはしないが、前世の記憶持ちという事情故に同じ歳の連中より精神年齢が上だった俺のスタンスは常に一歩引き気味だ。
幸いにも「スカした奴」扱いでハブられることもなく、周囲と適度な距離を保ちつつ関係は至って良好。
物腰や言葉遣いは内面よりもだいぶ丁寧だ。
貴族社会だし、下手に地を晒すと目上の相手にもうっかりミスりそうなんで。
ならいっそ常にお貴族様っぽくしといた方が楽だよな、という考えによるものだがまぁまぁ好評なのでこのままいこう。
他愛ない話をぽつりぽつりと挟みながら式場へと向かう。
今日は入学式。
カイル同様俺の鉄板キャラだった侯爵子息、それから王子に婚約者のご令嬢にその他数人。ゲームの主要キャラだったキラキラ軍団のご入学の日だ。
689
あなたにおすすめの小説
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
炎の精霊王の愛に満ちて
陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。
悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。
ミヤは答えた。「俺を、愛して」
小説家になろうにも掲載中です。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる