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しおりを挟む「最近王都で大人気のカフェがありますの。お食事もスイーツもとっても美味しいらしいですわ」
可愛らしく小首を傾げるリーゼロッテ様の表情が「連れて行って」と雄弁に語っている。
婚約者の可愛いオネダリに王子もまんざらでもなさそうだ。
そのままデートの予定を立てはじめるカップルを横目に昼食を食べ進める。
バカップルめっ!! だの イケメン爆ぜろ!! と罵ったりなんてしない。
あーいうのは周囲に迷惑かけたりイラつかせる奴らに吐く呪詛だ。
「あー、あのカフェ、めっちゃ混んでますよ!予約必死。俺も何度か女の子連れてこーと思ったんですけどまた行けてねぇです」
チッ!!舌打ちをなんとか抑え込んだ。
イケメン爆ぜろ!!
封じた筈の言葉が危うく口を出かけたぜ。
初々しくも微笑ましいカップルと違い、カイルのいう “女の子” は彼女でもなんでもないその場限りの子たちだからだ。
このモテ男めっ。
呪詛を打ち消しつつ、んっ?と首を傾げた。
「確かに混んでいたけど……別に必ず予約が必要ってわけでもないだろう?」
だってこの前、普通に入れたし。
いや待てよ?
そーいや、並んでる子らいたような……。
「エバンス様は行かれたことがありますの?いかがでしたかっ?」
身を乗り出して尋ねてくるリーゼロッテ様。
「美味しかったですよ。接客も丁寧で感じも良かったですし」
「何を召し上がられましたの?」
「一番人気のガレットのランチにデザートにミルフィーユを。あとは一品料理を少しつまませて頂いたりですね」
内装だのメニューだのをあれこれと聞いてくるリーゼロッテ様に答えていると、ニヤニヤしたカイルに肘で突かれた。
「で?」
主語のない問いにパスタをクルクルしながら首を傾げる。
いっそうニヤニヤとするカイルの笑み。
よくわからんが、なんとなくムカつくんで殴っていいか?
「お相手は誰だって聞いてんの。ってかおまえコレいたんだ。水臭ぇなぁー紹介しろよ!!」
コレと立てられた小指をグィッと反らしてやりてぇ!
だがまぁ、コイツがニヤニヤしてた理由はわかった。
「別にそういう相手じゃないよ」
「えー嘘だぁ。あんな予約激ムズの店連れてっといて?」
「本当だよ。それに店はたまたまだと思うよ?人気だからっていうよりも、個室があるから選んだだけじゃないかな。そもそも女性と行ったわけじゃないし」
「待って!!ラファエルが誘ったんじゃなくて?しかもあの人気店の個室を抑えられるとか!つか、マジで相手誰?!」
「こ、個室……ラファエル様、それはだ、大丈夫でしたの……?」
話しを切り上げようと放った言葉だったのに、何故か逆に驚きと喰いつきを誘ってしまった。
そしてリーゼロッテ様、その大丈夫でしたの……?ってなにがですか?
いえ、やっぱ聞きたくないんでいいです。
カイルとリーゼロッテ様だけじゃなくいつの間にか全員の意識がガッツリこっち向いてるし。
「ラファエル、お相手のお名前は?」
「だから……」
「別に知り合いとお食事しただけなら隠すこともないでしょう?」
間髪入れずに返されたレイヴァンの言葉にはぁと小さく溜息を一つ。
別に隠すことじゃないけどね。
説明も面倒だなって思っただけで……。
アイスプリンスと名高いレイヴァンのあの表情はご機嫌斜めの合図だ。
子どもっぽくムスっとしてる時より、表情が凍ってる時の方が一層機嫌が悪いんだよ。
こうなったら誤魔化す方が面倒だなと、素直に口を開いた。
「先日、たまたまゼリファン隊長とお会いしてお食事をご馳走になっただけだよ」
素直に吐いた方が面倒なことになるとか、思いもしなかった……。
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