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しおりを挟むうーわー……。
目の前の面々を見て、内心そんな声を漏らした。
微妙に顔も引き攣っちゃう。
昼休み、カイルに引きずられてきた食堂に集ったもはやお馴染みの顔ぶれ。
レイヴァンは明らかに不貞腐れたムスッとした顔をしているし、
そんな彼とは対照的にキラッキラした笑顔で俺を見るリーゼロッテ様。
アレンや王子の表情にも好奇心が浮かんでいるし、これはレイヴァンから聞いたんだろう。
とりあえず、混んでしまうので注文を先に済ませるのが先。
食いっぱぐれるのはごめんだ。
「ねっ、ラインハルト様っ。今日は私の分のご注文をお願いしてもよろしいですか?私、シーフードリゾットが食べたいですわ」
両手を組んで可愛らしくおねだりするリーゼロッテ様。
「ラファエル様はなにをお召し上がりになりますか?」
「えっ?……えっと、じゃあ “おすすめ” を……」
急に振られて勢いに押されるままに迷った時の一品を告げれば、「ですって」とばかりにカイルに素晴らしい笑顔を向けるリーゼロッテ様。
王子とカイルは引き攣った顔で了解の頷きを返し、同じく引き攣った顔のレイヴァンとアレンとともに行列へ。
「さっ、お座りになってくださいな」
ぽつりと取り残された俺は「あっ、はい……」とキラキラ笑顔に気圧されながらも席につく。
正直、逃げたい。
そっからは予想通りで瞳を輝かせたリーゼロッテ様からの質問攻め。
「告白はどのタイミングで?」
「どのようなお言葉でしたの?」
「一度はお断りされたとか……」
ずずずいと身を乗り出して頬を蒸気させてる姿は下手な誤解を生みかねないのでちょっと離れましょうか。
お願いだから落ち着いて。
みんなー早く戻ってきてー。
そしてリーゼロッテ様、レイヴァンとの恋バナ聞き出すためにあえて混んでるエリアのメニューにしませんでした?
普段ならここにリーゼロッテ様と残っているのは王子なのに、あからさまに狙って俺を残しましたもんね。
レイヴァンより聞き出しやすいって思われたのかもしれない。
とりあえず、適度にかわしつつ無難なとこだけぽつぽつ答える。
もちろん、あの夜のことやキスのことは言わない。
それにしてもリーゼロッテ様、めっちゃ食いつき激しいな。
いままで一番のテンションの高さなんだけど……。
ご友人の令嬢の恋バナでもここまでじゃなかった気が。いや、盛り上がってはいたけどさ。
グラスの水に口をつけ、もしかして……とチラっと視線をやったその時だった。
「ところで、ゼリファン様からもなにかアプローチがありましたの?」
「……ぶっ」
口輪筋を総動員して唇を引き結ぶ。
あっぶねー!!
公爵令嬢に口から水ぶっかけるとこだったっ!!
そんでもって、何故そのことをっ?!
わずかに瞳を見開き、動揺を見せた俺に対して一層キラキラ煌めく瞳。
大興奮のその姿に俺の中の疑惑が確信へと近づいた。
やっぱりBでLがお好きなお方ですか?
なんだっけ、貴腐人とかいうんだっけか??
「お待たせしました!」
別に気づきたくもなかったことを気づいてしまった俺の元へと乱暴な足取りでレイヴァンが帰ってきた。よほど急いだのか、手にしたトレーの “本日のおすすめ” はセットのスープが少しだけ零れている。
そんなレイヴァンの背後にはやはり両手に同じメニューを持ったカイルとアレン。
さすがに王子に両手持ちさせるわけにはいかないので王子の分はアレンが担当したようだ。
とりあえずリーゼロッテ様の追及から逃れられほっと息を吐く俺の向かいで、小さく舌打ちが聞こえた気がしたのは気のせいだろうか?
気のせいだよね?
令嬢が舌打ちとか、しないよね??
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