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しおりを挟む嫌がらせの方向が変わった……。
「せーんぱいっ」
以前のように…………いや、以前以上に馴れ馴れしく接してくるフィガロ。
近い、近い、近い。
「邪魔です!」
俺の腕を掴んだフィガロの手を、レイヴァンがぺいっ!と剥がして立ちふさがる。
怒り心頭のレイヴァンをニヤニヤしながら見るフィガロは非常に楽しそうだ。
「くだらない嫌がらせはいい加減やめたらどうですか?」
「はぁ?なんのことー?」
「嫌がらせなんて心底人間のクズですね」
「証拠もないのにクズよばりとかサイテー」
いやマジ、小学生のケンカかよ。
そして周囲の注目めっちゃ浴びてるんで止めて下さい、マジで。
俺へのくだらない嫌がらせにブチ切れ遊ばしたレイヴァンくんは、二年のフィガロの教室へと特攻した。
絶対零度のアイスプリンスに周囲は騒然とし、二人を止めるのにとても苦労しました。
そんな俺を見てフィガロくんは思ったようです。
“これ、一番の嫌がらせになんじゃね?” と。
それ以来、モノを隠されたり、根も葉もないデマをバラまく嫌がらせは劇的に減り、レイヴァンを煽ることで俺を困らせる作戦に出やがった。
敢えてレイヴァンの前で俺に馴れ馴れしく接し、距離がやたらと近い。
無駄に顔を近づけて覗きこんできたりするもんだから、リーゼロッテ様のお仲間と思われる女子らにきゃあきゃあされたり、周囲からひそひそされたりとても迷惑しています。
んでもって、レイヴァンが挑発に乗るわ乗るわ。
それでさらにフィガロが絡んでくるっていう悪循環。
正直、非常にやめて頂きたい。
そもそも可愛い女の子にならともかく、嫌がらせのために野郎に距離つめるとか体張りすぎじゃね?
ひそひそされてんの俺だけじゃなくお前もだから。
むしろ俺が一方的に言い寄られてるように見えるから、風評被害被るのお前だぞ?
コイツ、バカなんだろうか?と思いつつも、迷惑って意味なら今までのどの嫌がらせより迷惑ではある。
目的のためなら手段も犠牲も厭わないってか、ある意味すげぇな……とか、げんなりしつつも関心している場合じゃなかった。
早めに手を打っておくべきだった。
そう痛感したのは数日後。
興味を帯びた視線がちらちらと向く。
“俺とレイヴァンが付き合っている。”
その噂は他のどの噂よりも早く知れ渡ったようだ。
この様子だときっと今日中に学園中に知れ渡っていることだろう。
舌打ちしたいのを押し殺し、教室へと向かう。
まさかフィガロがここまでするとは思わなかった。
口喧嘩や小馬鹿にした態度はとっているが、レイヴァンに対し一線を超えることはないと思っていたが当てが外れた。
レイヴァンは侯爵家の嫡男にして、宰相閣下の子息。
しかも王族であるラインハルト様の親友だ。
流石に本気で侯爵家を敵に回すことはないだろうとは思っていたのに……。
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