【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

文字の大きさ
141 / 164

141

しおりを挟む

学園内は明日へと向けた飾りつけで一段と華やかだった。
中庭の一角、ライトアップ用だろう飾りが括りつけられた樹々の下で昼食をとっている。

「明日のコンサート、楽しみですね」

侯爵家のご子息が目を輝かせるほどのオーケストラ。
他にも有名な歌姫やら、劇団やらが招待される学園祭一日目……。

金、掛け過ぎじゃない?

去年、一昨年も「これが学園祭……マジで?」と前世の価値観からはカルチャーショックな学園祭だったが、節目である今年はさらに豪華。

これに疑問を抱かねぇ王侯貴族すげぇ……。

生粋のお貴族様であるレイヴァンに対しそんな感想を抱きつつ相槌を打つ。

「そういえばラファエルのご家族も来られるんですよね?」

「ああ、兄さんたちは昨日から王都に来ているよ」

もはや学園祭とかいいつつ生徒主体でもなんでもないそれは一大イベント。
生徒一人につき3人まで招待が認められているプラチナチケットは毎年大人気なのだ。

「ぜひお会いしたいです」

じっとおねだりするように見つめられ、もちろんと返せばふふっとレイヴァンの頬が綻んだ。

「噂のお兄様にお会いするのが楽しみです。きっと話があうと思いますし、それにシエルの本来の姿も見てみたいです」

の一言に思わずちょっと遠い目であははと笑う。


思い出すのはパーティーの日の一幕。

「これは珍しいものを見た」

毛を逆立てた猫のようなレイヴァンと、望んでもないのにスネークに拒否られたカイルやゼリファン……色々とカオスな状況に声を上げて笑う王太子殿下。

ひとしきり笑った殿下はまじまじと俺を見た。

「色々と噂は聞いていたが実際に会えてよかった」

「……噂、ですか?」

ふと視線を向けたのは王子。
ほら、接点そのぐらいしかないからね。

だが殿下は「ラインハルトからも君の名を耳にすることはあるけどね」と首を振った。
なにかを思い出しているらしいその表情はとても微笑まし気だった。

「弟の話題になったときかな?話を振ったらセラフィが嬉しそうに君の話をしていたよ。彼は家族、特に “弟” の話題が大好きだからね」

「…………」

思わずちょっと黙ってしまった。

次期当主である兄さんなら王太子殿下にお目通りしたこともあるだろう。
それにしてもここまで微笑ましそうって一体なにを言ったんだ兄さん。

「ふんすふんすと君の自慢をしていたよ」

「「「「「ふんすふんす?」」」」」

王太子殿下の謎のワードに訝し気な声を漏らす皆さん。

反して俺は…………。

そのワードに思いっきり納得してしまった。

親戚たちのパーティーなんかでも何度か見たことのあるその姿。
話題が俺のことになった途端に、フリスビーとってきた犬みたいに嬉しそうな顔でふんすふんすと饒舌になる兄さんの姿がめっちゃ浮かんだ。

兄さーーーん!!
王太子殿下の前でもあれやってんのかよ?!


そんなこんなで「弟大好き!」な認定をされた兄さんたちに会うのも楽しみにしてくれているようだ。

会わせるなら二日目がいいかな?
出し物が多い一日目より、二日目の方が待機時間も多いし。

「君のご両親もくるのかい?」

パニーニの最後の一口を食べきって、飲み物に手を伸ばしつつ聞いた。

「母上は。父上は無理でしょうね……なにせ王族の方々も来賓されますし」

苦笑いを浮かべならが返された答えに色々察した。

つまり……トップ陣が不在で城はてんてこ舞いなわけですね。

激務に忙殺されているだろう宰相サマにそっと同情した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

処理中です...