【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

文字の大きさ
142 / 164

142

しおりを挟む


そんなこんなではじまりました、学園祭一日目。

賑やかな通りをいつものメンバーで練り歩く。
なお、ずっとみんなで行動しているわけではない。ついさっき合流したところだ。

「素晴らしい演奏でしたね」

「ええ、本当に。前回の公演も素晴らしかったですけど、今回も素敵でした」

興奮したように話すのはレイヴァンとリーゼロッテ様。
音楽に興味がある二人は感動もひとしおのようだ。
確かに芸術に造詣が深くない俺でも、すごいと感動するほどには圧巻の演奏だった。

「音楽かー。俺、無理そう」

「兄さんは開始早々寝ると思う」

頭の後ろで腕を組みつつこぼすカイルにアレンのツッコミが飛んだ。

俺も激しく同意する。

「あっ、クレープがありますわ」

そう言ってリーゼロッテ様が指さした先にはなかなかの行列……。
だけどキラキラとしたリーゼロッテ様の瞳にダメといえる強者などおらず、その列へと並ぶ。

学園出身の貴族は食堂での洗礼で大丈夫なんだけど、そうでない貴族はたまに「何故私が並ばないといけないんだ!」とか騒いで回収されたりすんだよね。
学園祭あるある。

いつもにも増して警備は超厳重だから、問題起こすやつがいても即回収。
安全でなによりだ。

順番が回ってきて選んだのはチョコバナナ、バニラアイス入り。
イチゴとどっちにするか迷ったが王道のバナナをチョイス。

無難な選択だと笑いたければ笑うといい(実際カイルに笑われた)。

しょっぱい系のクレープとかも気にはなるんだけど……デザートのイメージが強すぎて結局頼んだことはない。

俺は冒険できない性質なんだ。

チョコやホイップクリームがつかないように慎重にパクリ。

うん、うまい。
無難バンザイ!

「美味しいですか?」

「うん、皮もモチモチで美味しいね」

「ラファエルのはチョコバナナでしたよね。美味しいですか?」

「うん……」

じじじ……と注がれる視線。

再度の質問。
無言の攻防がしばし。

これは、アレですよね?

いやでも……流石に周囲に人が……とタジッとする俺の手元ではアイスがタラリとバナナに絡みつく。
じっと注がれる熱視線……。

「…………」

「…………」

「……一口食べる?」

「はいっ!!」

うわぁーお、いい笑顔。

人目を気にしつつ口元に近づければパクリとかじりつくレイヴァンは大変満足そうにもぐもぐしている。

「ラファエルもどうぞ」

ここで断っても無駄だと学習済みの俺は素直に顔をクレープへと寄せた。小さく一口かじりとる。

差し出されたイチゴティラミスもなかなかに美味しゅうございました。

視線の端ではリーゼロッテ様と王子も同じことしてた。

それにしてもストロベリーやブルーベリー、ホイップにカスタードにアイスにパイ、これでもか!とてんこ盛り素材を花束のように誂えたリーゼロッテ様のクレープめっちゃ食いにくそう。

長すぎる商品名を淀みなく注文した彼女に尊敬を覚えた俺は、スタバの呪文を詠唱できずに友人の注文に「同じので」とか言っちゃうタイプ。

周囲の視線を盛大に気にしつつ、クレープは無事完食しました。

まさかこんなとこで思わぬ落とし穴にはまるとは思わなかったぜ……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています

水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。 「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」 王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。 そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。 絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。 「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」 冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。 連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。 俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。 彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。 これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。

処理中です...