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しおりを挟むなんだかんだで出し物や出店を楽しんだ一日目も終わり、脳筋兄弟待望の二日目突入。
……二人とも赤点はなんとかクリアして無事特訓に明け暮れていた。
「よつっしゃあ!やるぞ!」
「おー!!」
ヤル気満々で屈伸したり腕立てしたりと準備運動に励むカイルたち。
人がいるとこで腕立ては邪魔だからやめとけ。
それなりの広さのある円形闘技場には大勢の観客。
出場者たちも観戦する方も早くも熱気に包まれていた。
「じゃあ頑張って」
席に移動する前にレイヴァンの肩をポンと叩いて激励すれば、気負った様子もなく「はい」と微笑まれた。
「それなりな結果は残せるように頑張りますね」
「うん、応援してる」
「それは百人力ですね」
ざわざわっと揺れる空気。
おっと、マズい。
レイヴァンのレア(周囲のとっては)な笑顔が観客たちに目撃されてしまったぜ。
「カイルとアレンはまた随分と張り切ってるな」
「そうですね。トーナメント自体もですが、クラウ・ソラスとのデモンストレーションを勝ち取りたいでしょうし」
「白熱した試合になりそうですわね。ふふっ、ラインハルト様は後悔なさってなくて?」
悪戯っぽく覗きこんでくるリーゼロッテ様の言葉に王子がちょとだけ唇を引き結ぶ。
「別に、出ようと思えば機会はまだ来年も再来年もある。……今回は色々と俯瞰して見たかったからこれでいい」
確保できたわりといい席でそんな会話を繰り広げる。
三人とも手元には飲み物と軽食類も用意して観戦準備は万端。
司会がコロシアムの中央で声を張り上げ、周囲が沸き立つ。
クジ引きの結果発表のあとはいよいよ試合スタートだ。
今日のプログラムはまず生徒たちのトーナメント、そしてデモンストレーションとして魔獣との闘い、クラウ・ソラスの試合の流れだ。
トーナメントの優勝候補はカイルと隣のクラスのライバルくん。
学生の試合といいつつ、流石は魔物が蔓延る世界だけあってその実力は凄まじい。
バトル漫画さながらの迫力に、手に汗握りつつめっちゃ堪能した。
いや、これは貴族共めっちゃプレミアチケットに食いつくはずだわ。
テレビもゲームもないこの世界では興奮度かなり高い娯楽だと思う。
ぶっちゃけ、王子とリーゼロッテ様も出てほしかった。
とくにリーゼロッテ様。
ドレスで華麗に闘う姿、めっちゃ絵になると思うんだよね。
校外学習で見たけどあの時は余裕とかなかったし、ぜひ華麗な足技を拝見してぇ。
大方の予想通り、決勝戦は例の二人だった。
アレンもそこそこいいとこまで進んだんだけど、三年に負けてしまった。惜しかっただけにまだ立ち直れていないようだ。
「ほら、決勝戦がはじまりますよ」
あそこでもっと……いや、あっちで……反省点をブツブツ口にしつつ項垂れているアレンの肩をレイヴァンが揺する。
落ち込んでいるアレンとは対照的に、レイヴァンはさほど結果を気にしていないようだ。
大規模魔法を得意とする彼はどちらかというと対人戦より魔獣相手の方がその実力を発揮する。本人もそれを理解しているから余計だろう。
だが実に恰好良くてイケメンでした。
実はいまもふよふよしてる黄緑の一つ目モンスターみたいなフォルムにパタパタ揺れる水色の羽の飛行物体・ルシウスくんがスクリーンに映し出す映像に内心大興奮だった俺。
永久保存版として映像をお持ち帰りしたいくらいだ。
……残念ながらルシウスに再生可能な録画機能はないけどね。
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