【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

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ドン引き。

まさにその言葉が相応しい表情にたじろぐ。

いやさ、わかるよ?

俺もそっち側ならするもん、ドン引き。
「コイツ、怖っわっっ!」って思うもん。

「お前……めっちゃ怖いな……」

青い顔で呟いたカイルの言葉はまさに俺に感想と同じで、否定できないのがつらい。


気まずくて無意味にシーツをぎゅっと掴みながら言い訳をこころみる。

「他に方法がなかったんですよ。カイルで駄目だった以上、あの魔獣に直接ダメージを与えられるのはゼリファン隊長ぐらいでしょう?あれ以上被害を広げずにあの個体をなんとかするべきだと思って……!」

「それはわかるがな……」

「うん、それはわかるんだけど……」

「それに内部攻撃なら通用する目算はありましたし。呼吸をする生物の特性上、内部まで外皮のように硬質なことはないでしょうし」

ゲームで口から攻撃してました!とは言えないのでそれらし理由を口にする。

実際、ガッチガチの強度を持つ臓器ってのはほぼないと思う。ゴムみたいに弾力がある魔獣とかならいるかもだけど、ある程度の伸縮性がなきゃ呼吸とかできないわけだし。

だがそんな俺の言い訳は逆効果だったようだ。

「ブチ切れて理性を失って、とかではなく理性的なのが逆に怖いな」

「……」

王子の一言にノックアウト。

「そ、それにちょっとキレてもいました……し……」

「キレ方が凄まじいな」

「すごい迫力でした」

ゼリファンだけでなくレイヴァンまでっ?!

「……オレ、絶対にラファエル先輩怒らせないようにします……ぜったい……」

しかもやたら真剣な青い顔で呟いたアレンの言葉に王子らが大きく頷くし……。

……危険人物扱いですか?
人相手にしませんよ?あんなこと。

もはやなにを言っても墓穴にしかならない気がしてきた。

こんな時は……話題を変えるしかない!!

パッと顔をあげた俺はそう判断した。

ただの苦し紛れの話題転換でなく、ものすっごく気になっていることもあるのだ。
そもそもブチ切れたのはレイヴァンやカイルの負傷、そして観客席への一撃が原因だ。

「観客たちの被害状況はどうなんですか?怪我人は?」

あの魔獣が尻尾の一撃を食らわせたあたり、あの辺に兄さんたちも居たはず……。
死者はいないとは言っていたが、大丈夫だっただろうか?

不安を滲ます俺に「大丈夫だ」と王子が首を振った。

「大きな怪我をしたものはほぼいない。兄上や護衛たちが結界で攻撃を防いでくれたからな。観客席の怪我人はかすり傷や、パニックを起こして逃げる際に転んだ者達ぐらいだ。安心していい」

ほっと息を吐き出す。

安心したと同時に怠さが再び襲って、ちょっと体がふらつきそうになった。
そのまま背もたれ代わりの枕に背を預ける。

「……ですがラファエルのご家族は心配なさっているかもしれませんね。連絡を入れた方がいいでしょう」

考えこむように口元に手を当てて眉を下げたレイヴァンの言葉にはっとする。

「そうだ……っ!丸一日経ってるんですよね……。私がここに運ばれたことだって知らないでしょうし……ラインハルト様、申し訳ありませんが誰か人を手配して頂いても?」

兄さん絶対心配してるじゃんっ!!

下手したら心配しすぎて泣いてる可能性もある……!!
やっばっ!!

「連絡はした方がいいが……お前が運ばれたのはすでに伝わっていると思うぞ?」

王子の言葉にそこは誰か伝えてくれたのかと思いきや、そうじゃなかった……。
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