【蒼き月の輪舞】 モブにいきなりモテ期がきました。そもそもコレ、BLゲームじゃなかったよな?!

黒木  鳴

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「負傷者の対応や騒ぎの収束に忙しくて親族への連絡までは手が回っていないだろうが……。エバンスの場合は目立ってもいたし周囲に聞けば転移で搬送されたことはきっとすぐに伝わっただろう」

「……目立ってた」

うわー、最悪。と思う一方で納得もした。

なんせ対峙してた魔獣が魔獣だ。
注目を浴びてても仕方がな……。

「そうそう、大画面にドドーン!って大写し」

「っ?!」

衝撃発言に目を見開く。

すると俺の反応にレイヴァンがちょっと首を傾げた。

「気付いてなかったですか?あなたやゼリファン隊長の戦闘はルシウスによってスクリーンに映し出されてましたけど……」

「マジで……」

思わずマジでとか言っちゃったよ。
そんぐらい衝撃が強い。なんなら頭を抱えたい。

ブチ切れた俺の姿、めっちゃ見られてるってこと?

両手で頭を抱えるかわりに、よろっと手を額に当てる。

心なしか頭痛がぶり返してきた気がする……。


それから王子が人を呼んでくれて、兄さんたちに連絡を……って話になったところで別の使用人が部屋に訪れた。

「エバンス伯爵家のご長男・セラフィ様がお見えです。……いかがいたしましょう?」

心配して城まで押しかけてきたらしい。

なんてタイムリー。

すぐさま許可が出され、兄さんたちがやってきた。

「エルくんっっ!!!」

開口一番俺の名を叫び、突進してくる兄さん。

ぐぇっ。

「エルくん大丈夫っ?!まだ眩暈する?頭痛い??」

「エルくん平気?」

抱きついてきた二つの塊、兄さんとシエルにはきっと俺しか見えてない。
涙目の似た者親子に「大丈夫」と答えつつ、ちょっぴり焦る。

子どものシエルはともかく兄さん!
部屋にいる面々見て!!
ご挨拶して!!

「セラフィ、シエル」

凛としたエルザさんの声が二人を呼ぶ。

「御前で失礼を致しました」

ピンと背を伸ばし、淑女の礼をしつつ部屋の面々へと謝罪を告げれば、この場で一番身分の高い王子が代表して「構わない」と寛容に答えた。

遅れて部屋の面々へと気づいたシエルが「あっ、リーゼロッテ様」と嬉しそうに声をあげた。
シエルの本来の姿をはじめて見るリーゼロッテ様たちは改めて驚きつつも、無邪気に再開を喜ぶ可愛らしい幼児の姿に笑みを浮かべる。

「セラフィ」

エルザさんの声には困ったような、しょうがないわねという色が滲む。

「……」

そしてその声を受けた兄さんはといえば、部屋にいる面々にピシリと石のように固まっていた。

「兄さん」

ちゃんとして、の意味を込めて腕をトントンと叩けば、ギシギシいいそうな動きで涙目が俺を見る。

「エ、エルくんっ……。なんかすごい見たことある方ばっかの気が……」

否定してっ!と訴えてくる兄さんにエルザさんと二人でコクリと頷く。

ピッ!と跳び上がり、ワタワタと慌てる姿は小動物のようで和むのだが……伯爵家の嫡男の威厳は微塵もない。

涙目で慌て、相手を理解し、ぎこちない動作ながらも姿勢を正し礼をした兄さんは精一杯の貴族の仮面をかぶる。

「大変失礼を致しました。ラファエルの兄、エバンス伯爵家のセラフィと申します」

「その妻のエルザでございます」

「シエルです!」

いまだに涙目を引きずっている兄さんには悪いけど、ショックを引きずってた心がちょっとほっこりした。
流石は我が家の癒し担当。
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