160 / 164
160
しおりを挟む「負傷者の対応や騒ぎの収束に忙しくて親族への連絡までは手が回っていないだろうが……。エバンスの場合は目立ってもいたし周囲に聞けば転移で搬送されたことはきっとすぐに伝わっただろう」
「……目立ってた」
うわー、最悪。と思う一方で納得もした。
なんせ対峙してた魔獣が魔獣だ。
注目を浴びてても仕方がな……。
「そうそう、大画面にドドーン!って大写し」
「っ?!」
衝撃発言に目を見開く。
すると俺の反応にレイヴァンがちょっと首を傾げた。
「気付いてなかったですか?あなたやゼリファン隊長の戦闘はルシウスによってスクリーンに映し出されてましたけど……」
「マジで……」
思わずマジでとか言っちゃったよ。
そんぐらい衝撃が強い。なんなら頭を抱えたい。
ブチ切れた俺の姿、めっちゃ見られてるってこと?
両手で頭を抱えるかわりに、よろっと手を額に当てる。
心なしか頭痛がぶり返してきた気がする……。
それから王子が人を呼んでくれて、兄さんたちに連絡を……って話になったところで別の使用人が部屋に訪れた。
「エバンス伯爵家のご長男・セラフィ様がお見えです。……いかがいたしましょう?」
心配して城まで押しかけてきたらしい。
なんてタイムリー。
すぐさま許可が出され、兄さんたちがやってきた。
「エルくんっっ!!!」
開口一番俺の名を叫び、突進してくる兄さん。
ぐぇっ。
「エルくん大丈夫っ?!まだ眩暈する?頭痛い??」
「エルくん平気?」
抱きついてきた二つの塊、兄さんとシエルにはきっと俺しか見えてない。
涙目の似た者親子に「大丈夫」と答えつつ、ちょっぴり焦る。
子どものシエルはともかく兄さん!
部屋にいる面々見て!!
ご挨拶して!!
「セラフィ、シエル」
凛としたエルザさんの声が二人を呼ぶ。
「御前で失礼を致しました」
ピンと背を伸ばし、淑女の礼をしつつ部屋の面々へと謝罪を告げれば、この場で一番身分の高い王子が代表して「構わない」と寛容に答えた。
遅れて部屋の面々へと気づいたシエルが「あっ、リーゼロッテ様」と嬉しそうに声をあげた。
シエルの本来の姿をはじめて見るリーゼロッテ様たちは改めて驚きつつも、無邪気に再開を喜ぶ可愛らしい幼児の姿に笑みを浮かべる。
「セラフィ」
エルザさんの声には困ったような、しょうがないわねという色が滲む。
「……」
そしてその声を受けた兄さんはといえば、部屋にいる面々にピシリと石のように固まっていた。
「兄さん」
ちゃんとして、の意味を込めて腕をトントンと叩けば、ギシギシいいそうな動きで涙目が俺を見る。
「エ、エルくんっ……。なんかすごい見たことある方ばっかの気が……」
否定してっ!と訴えてくる兄さんにエルザさんと二人でコクリと頷く。
ピッ!と跳び上がり、ワタワタと慌てる姿は小動物のようで和むのだが……伯爵家の嫡男の威厳は微塵もない。
涙目で慌て、相手を理解し、ぎこちない動作ながらも姿勢を正し礼をした兄さんは精一杯の貴族の仮面をかぶる。
「大変失礼を致しました。ラファエルの兄、エバンス伯爵家のセラフィと申します」
「その妻のエルザでございます」
「シエルです!」
いまだに涙目を引きずっている兄さんには悪いけど、ショックを引きずってた心がちょっとほっこりした。
流石は我が家の癒し担当。
620
あなたにおすすめの小説
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
植物チートを持つ俺は王子に捨てられたけど、実は食いしん坊な氷の公爵様に拾われ、胃袋を掴んでとことん溺愛されています
水凪しおん
BL
日本の社畜だった俺、ミナトは過労死した末に異世界の貧乏男爵家の三男に転生した。しかも、なぜか傲慢な第二王子エリアスの婚約者にされてしまう。
「地味で男のくせに可愛らしいだけの役立たず」
王子からそう蔑まれ、冷遇される日々にうんざりした俺は、前世の知識とチート能力【植物育成】を使い、実家の領地を豊かにすることだけを生きがいにしていた。
そんなある日、王宮の夜会で王子から公衆の面前で婚約破棄を叩きつけられる。
絶望する俺の前に現れたのは、この国で最も恐れられる『氷の公爵』アレクシス・フォン・ヴァインベルク。
「王子がご不要というのなら、その方を私が貰い受けよう」
冷たく、しかし力強い声。気づけば俺は、彼の腕の中にいた。
連れてこられた公爵邸での生活は、噂とは大違いの甘すぎる日々の始まりだった。
俺の作る料理を「世界一美味い」と幸せそうに食べ、俺の能力を「素晴らしい」と褒めてくれ、「可愛い、愛らしい」と頭を撫でてくれる公爵様。
彼の不器用だけど真っ直ぐな愛情に、俺の心は次第に絆されていく。
これは、婚約破棄から始まった、不遇な俺が世界一の幸せを手に入れるまでの物語。
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる