10 / 12
10話 涙
しおりを挟む
「ただいまー」
「おかえりー」
よく考えると、玄関を潜ると自然と『ただいま』と言う習慣のついてしまったな。
玄関には俺の服を着たリナが出迎えてくれる。
「お風呂にする?それとも わ、た、し?」
「何で2択何だよっ」
「だって、ご飯はまだ野菜炒めしか作れないからねっ」
リナはプクーっと頬を膨らませる。
「丁度よかったよ、今日の夕ご飯はカレーライスにしようと思ってたんだ」
「カレーライス??」
リナはまだ食べたことないもんな。
「ああ、作ってみてのお楽しみだ。と、その前に…」
「わ、た、し?」
俺はリナの額に軽くチョップする。
「いや風呂だ」
「も~~」
やはり、リナは頬を膨らませる。
今日の夕飯はカレーライスだ!
「「いただきます!!」」
食卓にはカレーライスが用意された。今日はリナに手伝ってもらいながら、一緒にカレーを作ったのだ。
「成!これ見た目以上に美味しい!!」
「だろっ?これがカレーライスだっ!」
リナは幸せそうにスプーンを持つ手を進める。リナがやってきて3日目というのに、この雰囲気にすっかり慣れてしまった。
でも、この光景にもいずれかは終わりが来るんだ…
俺の頭の中では今日の一芽との話が何度も繰り返される。
早く自分の中で考えをまとめなければ…
笑顔で会話しながらも、俺は広大で先の見えない世界で独り、迷子になっていた。
* * *
あっという間にカレーを完食してしまった俺たちはソファに腰を下ろす。
外では雨が降り始めた。室内は薄暗く、ザーザーと雨音が入ってくる。
今夜はリナのことについてしっかり話し合わなければ…
「リナ、大事な話があるんだが…」
俺は、姿勢を整え真面目な表情でリナを見つめる。
「告白でもするつもりっ?」
「ちげーよ」
リナもくつろいでいた姿勢を正す。
1つの笑みも見せないところから、きっと俺たちのことについての大事な話だと察したのだろう。
「リナの話なんだが、お前にはいつかは必ずこの家を出てもらいたいんだ」
「えっ?」
リナの顔がはっきりと曇る。
やはり社会に出ることに抵抗があるのだろうか。
だが、いずれは出て行ってもらわなければいけないんだ。お互いのためにも。
「それで、リナはいつまでここに居たいのか聞こうと思ってな」
リナの反応を見て、俺はなるべく彼女の意見を尊重しようと伝える。
そうすれば、彼女も分かってくれると思ったからだ…
「そ、そんな…」
リナの呼吸が乱れる。膝の上に作った彼女の拳が震える。
俺の考えは甘かったんだ。
そして俺の目には衝撃的な状況が飛び込んで来た。
「うっ、うう…」
リナは目尻から一筋の滴をながしていたのだ。
リナは嗚咽を我慢しながら、涙を溢れさせている。
その表情からは「驚き」や「悲しい」とはかけ離れた感情を連想させる。
そう、「絶望」だ。
「ちょっ、どうしたんだよ!リナが望む時間ここにいていいって言ってるんだぞ?」
涙を流すリナを見て、俺の気が動転する。
「ずっと…は?」
リナは、何か訴えてくるように問いかける。
「そ、それは…」
「そっか…そうだよね。迷惑よね…」
リナは表情を変えずに俯き、息を荒くする。
ザーザーザーザー
雨は勢いを増し、部屋の沈黙をかき消す。
一体何が、こうまで彼女を社会から遠ざけようとするのか。
「怖いのか?不安なのか?」
「分からない…何も」
リナはグチャグチャの顔で俺を見る。彼女からは普段からは全く想像もできない様な弱々しい声が。
『分からない』たった一言が俺にはとても重く、心に突き刺さるように感じた。
「そ、そうか…」
体が彼女を包み込もうと反応する。
こういう状況なら許されるかもしれない。逆にしてあげなければいけないのかもしれない。彼女を安心させるため、励ますために。
でも………
俺は彼女を包み込んであげられなかった。
俺の手は震え、正解を見失ってしまった。
もっと話を聞くべき、手だけでも握るべき、励ますべきだったかもしれない。
だが、俺に出来ることが何かは分からなかった。
俺はこの夜、彼女の涙を止められなかった。
「気持ちがまとまったら、また相談してくれ」としか言うことができなかった。
彼女の気持ちも自分のするべきことも、何も分からなかった
今日初めて俺達の間に壁ができてしまったのかもしれない。
【余談】
皆さんここまで読んでいただきありがとうございます!!
昨日は星をいただき、興奮してます!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
星や応援は私のモチベーションにつながるので、ぜひ!!評価お願いします!!
「おかえりー」
よく考えると、玄関を潜ると自然と『ただいま』と言う習慣のついてしまったな。
玄関には俺の服を着たリナが出迎えてくれる。
「お風呂にする?それとも わ、た、し?」
「何で2択何だよっ」
「だって、ご飯はまだ野菜炒めしか作れないからねっ」
リナはプクーっと頬を膨らませる。
「丁度よかったよ、今日の夕ご飯はカレーライスにしようと思ってたんだ」
「カレーライス??」
リナはまだ食べたことないもんな。
「ああ、作ってみてのお楽しみだ。と、その前に…」
「わ、た、し?」
俺はリナの額に軽くチョップする。
「いや風呂だ」
「も~~」
やはり、リナは頬を膨らませる。
今日の夕飯はカレーライスだ!
「「いただきます!!」」
食卓にはカレーライスが用意された。今日はリナに手伝ってもらいながら、一緒にカレーを作ったのだ。
「成!これ見た目以上に美味しい!!」
「だろっ?これがカレーライスだっ!」
リナは幸せそうにスプーンを持つ手を進める。リナがやってきて3日目というのに、この雰囲気にすっかり慣れてしまった。
でも、この光景にもいずれかは終わりが来るんだ…
俺の頭の中では今日の一芽との話が何度も繰り返される。
早く自分の中で考えをまとめなければ…
笑顔で会話しながらも、俺は広大で先の見えない世界で独り、迷子になっていた。
* * *
あっという間にカレーを完食してしまった俺たちはソファに腰を下ろす。
外では雨が降り始めた。室内は薄暗く、ザーザーと雨音が入ってくる。
今夜はリナのことについてしっかり話し合わなければ…
「リナ、大事な話があるんだが…」
俺は、姿勢を整え真面目な表情でリナを見つめる。
「告白でもするつもりっ?」
「ちげーよ」
リナもくつろいでいた姿勢を正す。
1つの笑みも見せないところから、きっと俺たちのことについての大事な話だと察したのだろう。
「リナの話なんだが、お前にはいつかは必ずこの家を出てもらいたいんだ」
「えっ?」
リナの顔がはっきりと曇る。
やはり社会に出ることに抵抗があるのだろうか。
だが、いずれは出て行ってもらわなければいけないんだ。お互いのためにも。
「それで、リナはいつまでここに居たいのか聞こうと思ってな」
リナの反応を見て、俺はなるべく彼女の意見を尊重しようと伝える。
そうすれば、彼女も分かってくれると思ったからだ…
「そ、そんな…」
リナの呼吸が乱れる。膝の上に作った彼女の拳が震える。
俺の考えは甘かったんだ。
そして俺の目には衝撃的な状況が飛び込んで来た。
「うっ、うう…」
リナは目尻から一筋の滴をながしていたのだ。
リナは嗚咽を我慢しながら、涙を溢れさせている。
その表情からは「驚き」や「悲しい」とはかけ離れた感情を連想させる。
そう、「絶望」だ。
「ちょっ、どうしたんだよ!リナが望む時間ここにいていいって言ってるんだぞ?」
涙を流すリナを見て、俺の気が動転する。
「ずっと…は?」
リナは、何か訴えてくるように問いかける。
「そ、それは…」
「そっか…そうだよね。迷惑よね…」
リナは表情を変えずに俯き、息を荒くする。
ザーザーザーザー
雨は勢いを増し、部屋の沈黙をかき消す。
一体何が、こうまで彼女を社会から遠ざけようとするのか。
「怖いのか?不安なのか?」
「分からない…何も」
リナはグチャグチャの顔で俺を見る。彼女からは普段からは全く想像もできない様な弱々しい声が。
『分からない』たった一言が俺にはとても重く、心に突き刺さるように感じた。
「そ、そうか…」
体が彼女を包み込もうと反応する。
こういう状況なら許されるかもしれない。逆にしてあげなければいけないのかもしれない。彼女を安心させるため、励ますために。
でも………
俺は彼女を包み込んであげられなかった。
俺の手は震え、正解を見失ってしまった。
もっと話を聞くべき、手だけでも握るべき、励ますべきだったかもしれない。
だが、俺に出来ることが何かは分からなかった。
俺はこの夜、彼女の涙を止められなかった。
「気持ちがまとまったら、また相談してくれ」としか言うことができなかった。
彼女の気持ちも自分のするべきことも、何も分からなかった
今日初めて俺達の間に壁ができてしまったのかもしれない。
【余談】
皆さんここまで読んでいただきありがとうございます!!
昨日は星をいただき、興奮してます!(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
星や応援は私のモチベーションにつながるので、ぜひ!!評価お願いします!!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる