前世の記憶を思い出した皇子だけど皇帝なんて興味ねえんで魔法陣学究めます

当意即妙

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動き出す時

馬車の中で仲直り

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カタコトとゆっくり進む馬車の中で、俺が思っていることはただひとつ。

き、気まずい……!

やあどうもこんにちは。俺はエルネスティ変人研究者。今、ヴァイナモ好きな人と2人きりで馬車に揺られているんだ。

え?なんでそうなったか、って?

あの後ヴァイナモと話し合いの場を設けるために、ダーヴィドがヴァイナモの元へ行ってくれたんだよね。そんでちょっと経った後に戻って来たかと思えば、いきなり「海に行きますよ!」と言い出して、よくわからないまま着替えさせられて、馬車にヴァイナモと2人で詰め込まれたんだよね。あの時の騎士たちの息のピッタリさよ。流石帝国我が国が誇る近衛騎士団の皆さんだね(遠い目)

で、馬車が出発したは良いけど、俺たちはさっきめちゃくちゃ気まずい出来事があった訳だ。そんな中普通に会話が始まるはずもなく。双方相手の様子を伺って沈黙していると言う冷戦状態が続いている訳よ。

……せっかくダーヴィドたちが気を使ってくれたんだから、ちゃんと話し合って仲直りしないと、とはわかってるんだけどね。やっぱり前世の話をするのは怖い。怖気付いてしまう。

どうしようかと頭の中でぐるぐると考えていると、ヴァイナモがいきなりガバッと頭を下げた。えっ!?どうした急に!?

「……エルネスティ様に不快な思いをさせてしまい、すみませんでした」

「えっ、あっ!こっ、こちらこそすみません。あの時は気が動転していまして、反射的に手を振り払ってしまいました」

ヴァイナモが誠心誠意謝ってきたので、俺も両手を合わせて謝った。あんな感じ悪いことなんて、するつもりなかった。でも前世が暴かれるのが怖くて、一種の防衛反応で拒絶してしまったんだ。

「……その、エルネスティ様は俺がお嫌いになったと言う訳では……?」

「えっ!?なんでですか!そんなこと、ある訳ないじゃないですか!……逆に私がヴァイナモに嫌われたかと思って、不安だったぐらいです」

「っ!俺だって!エルネスティ様を嫌いになることなんてありません!」

胸の前で指を弄りながら語尾を窄めてボソボソと呟くと、ヴァイナモが弾かれたように顔を上げて俺の手を握って来た。待って!唐突なヴァイナモの温もりで俺のキャパがオーバーしちゃう!顔近い!こんな時でも顔が良いなこの野郎好きだ!心臓が飛び出るわ!

……それより、嫌いになるなんてない、か。……ふふっ。めちゃんこ嬉しい。嬉しすぎて勘違いしてしまいそうだ。

俺は俺の手を包むヴァイナモの手を見ながら、頬が緩みそうになるのを必死で堪えた。ニヨニヨしたら駄目だ。変態になっちゃう。でも嬉しすぎて自然とニヨニヨしちゃう。

ああ駄目だ!煩悩で脳内が支配されそう!何か他のことを考えて、気を紛らわせないと!

「……その、何故あんなに夢の内容を知りたがったのですか?」

俺はずっと気になってたことを聞くことにした。いつものヴァイナモなら必要以上にこちらを詮索して来ないからね。だからびっくりして拒絶しちゃったってのもある。

「……実は……」

ヴァイナモは理由を説明してくれた。なんでも俺は魔力操作をされた鳥や水に接触して、魔力の波長が狂ったから丸2日も眠り続けたらしい。俺が見た悪夢もそれが原因かもしれないから、原因究明のためにも俺に夢の内容を聞いたらしい。

えっ!?物の魔力を操作するって、そんなこと出来るの!?凄っ!俺TUEEEE異世界転生テンプレの俺でも、自分の魔力を垂れ流すことぐらいしか出来ないのに!

てか魔力操作とか、そう言う大切なことは早めに伝えて欲しいかな!?自衛出来ないでしょ!

俺がそう指摘すると、ヴァイナモは分が悪そうに目を逸らした。

「……まだ犯人もその目的もわからないので、余計な心配をかけさせたくなかったのです」

……そっか。俺のために隠そうとしてたんだ。俺を不安にさせないために。……ふふっ。他の人相手なら知らなかったら自衛出来ないだろ、それは見当違いな気遣いだ、って怒る所だけど、ヴァイナモ相手なら怒る気にならないな。逆に嬉しいぐらい。方法はアレとして、俺を護ろうとしてくれてたんでしょ?俺は自分で自分の身ぐらいは護れるけど、ヴァイナモに護られるのはまた別の話だ。

それにしても、ヴァイナモは本当に心配性だな。俺はそんなことで不安にならないのに。

「心配無用ですよ。注意しておけば、大体のことは魔法でなんとかなりますし」

とりあえずあまり気負わず周囲に注意しとけば良いでしょ。鑑定魔法使えば歪な魔力を持つものを見つけることも出来るし。

俺がそう言うと、ヴァイナモは目を丸くした後、手で目を覆って空を仰いだ。そして自嘲気味に溜息をつく。どうした?

「……オリヴァ先輩に『殿下なら魔法でなんとかなる、とか言って楽観視するだろ』と指摘されまして。全くその通りでしたね。見当違いなことをしてしまい、申し訳ございません」

「そんなことはないですよ。私のことを心配してのことでしょう?とても嬉しいです。ありがとうございます」

「……俺って意外とエルネスティ様のことをわかってないようですね。ちょっとショックです」

ヴァイナモはズーンと気を落とした。そんな気にすることじゃないんだけどな。ヴァイナモに心配されるならどんなことでも嬉しい……って訳ではないか。流石にヤンデレは勘弁だ。まあヴァイナモなら有り得ないだろうけど。

それに俺だってわからないことだらけだよ。ヴァイナモはこれ以上俺を惚れさせてどうする気だ!?とか。……なんか自分で言っときながら、恥ずかしいな。忘れよう、うん。

「……私だってヴァイナモのことはわからないことだらけです。ですからこれから少しずつわかっていけば良いと思いますよ」

「……はい。エルネスティ様のこと、色々教えてください」

ヴァイナモはへにゃりと笑った。俺はその仕草に胸がギュッと掴まれたような気がした。……うん。俺、ヴァイナモのその笑顔が好き。ずっと見ていたいけど、それだと俺の寿命が半分ぐらいになっちゃいそう。

でも、それもいいかもしれない、なんてね。

……さて、ヴァイナモは素直に話してくれたし、俺も腹を括るか。

「……では手始めに夢の内容を話しましょうか」

ヴァイナモは息を呑んだ。多分、また誤魔化されると思ってたんだろうね。ヴァイナモは優しいから、俺がどんだけ隠し事をしてても、気にせず側にいてくれた。秘密主義の俺に必要以上の干渉をして来なかった。

今回ももう仲直りしたんだから、言う必要はないかもしれない。ヴァイナモが流そうとしてくれてたから、それに甘えてあやふやに出来るかもしれない。

でももう、前世のことを話すって決めたから。それから逃げない。ヴァイナモなら受け入れてくれるって、信じてる信じたいから。

「……とその前に、夢の内容を話すにあたって重要になって来る、荒唐無稽な大前提のことを話しましょうか」

「……大前提、ですか?」

ヴァイナモは前のめりになって耳を傾ける。俺は頷いた後、自分を落ち着かせるために1回ゆっくりと深呼吸をして、努めて微笑みを繕いながら口を開いた。

「……ヴァイナモは『前世の記憶がある』と言われたら、信じますか?」
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