千物語

松田 かおる

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予知夢とデジャブ

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「予知夢」とか「デジャブ」って、聞いたことがあるよね?
「夢に見たことが現実に起こったり」とか、「以前体験したことを夢で見る」といったアレのこと。
多分、みんなの中でも結構な人が体験しているんじゃないかな?

でも、僕の場合は他の人のそれとは少し違っていてね。
「夢に見たことが『本当に』なってしまう」んだ。

「予知夢」を見た次の日の朝に目が覚めると、「夢で体験した未来の日」になっている。
「デジャブ」を見た次の日は、「夢に出てきた日」に戻る。
そんなことが起こるようになってしまったんだ。

最初は「夢で見たらそれで終わり」だったのが、いつの頃からなのかは忘れちゃったけど「目が覚めた後も夢に出てきた日にジャンプする」ようになってしまったんだ。
初めて体験した時、何かの間違いかと思ってスマートフォンのカレンダーを見たんだけれど、確かに「夢に出てきた日」になっていたんだよね。

最初は混乱したけど、こういうことが続くと自分自身にも慣れが出てきてさ、そんな生活にも順応していったんだ。
なので今の自分は、「夢を見た日にジャンプする『タイム・トラベラー』」みたいになってしまった…というわけ。

でも、最近ちょっと気になることがあるんだよね。
なんていうか、「夢に出てくる日の振れ幅」が大きくなってきてるみたいでさ。
最初は一日とか二日とかだったんだけど、最近は一か月とか半年とか、どんどん日付の幅が広がってきてるんだよね。

もうこういう生活に慣れているせいか特に違和感はないんだけど、ただこのまま行くと「自分の生まれる前」とか「自分の死ぬ瞬間」とかにジャンプしちゃいそうでね…

でもまぁ、そういう体験なんでまずできないから、ある意味楽しみになってきた感じもするんだよね。

次に行くのは過去か、未来か。
それを考えながら眠りについて夢を見る、そういうのも悪くないかもしれないしね。

じゃあ、僕はそろそろ寝ることにするよ。
どんな夢を見るか、楽しみだなぁ…



「あれ、先生。この患者さん、脳波が少し乱れてません?」
看護師がベッド横のモニターを見ながらそう言うと、
「あぁ、もしかしたら夢でも見ているんじゃないかな?『植物状態になっていても夢は見る』という研究報告もあるみたいだし」
と、隣に立つ医者が答えた。
「どんな夢を見てるんでしょう?」
「さぁ、どんな夢だろう?目が覚めたら聞いてみたいところだねぇ」
医者と看護師はそんな話をしながら、病室から出て行った。
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