千物語

松田 かおる

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連帯ホショウ人

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「相談したいことがある」
ある日突然、そんなメールが送られてきた。

送り主の名前には記憶がなかった。
…と思っていたが、随分としてから大学のクラスメイトだったことを思い出した。
それを思い出すと、当時のことが記憶に蘇ってきた。
そういえば、こいつが当時付き合っていた彼女を横取りしたっけか。
その後すぐに飽きて、捨ててしまったが。
しかし、そんな目に遭わせたヤツが何で今更…
俺に復讐…というのも考えにくい話だし。
大体十何年も昔の話だ、蒸し返すのがおかしい。
だがこのまま放っておくのも気分が良くないので、一度ヤツの「相談」を聞いてみることにした。



「『連帯ホショウ人』になってほしいんだ」
挨拶もそこそこに、ヤツは切り出した。
「断る」
俺は即座に断った。
そりゃそうだ。
十何年ぶりに会うようなヤツの「ホショウ人」になってやる義理なんてどこにもない。
「君に金銭的な負担は一切発生しない、これだけは絶対に約束する。だから頼む、この通りだ」
ヤツは引き下がらない。
よほどの事情があるのだろうか…
「金銭的な負担は一切発生しない」と言うんだったら、昔のこともあるし「『名義貸し』みたいに考えればいいか」くらいに思い始めた。
「念押しだが、本当に金銭的な負担は発生しないんだな?」
一応俺が確認すると、
「ああ、それだけは絶対にない」
ヤツは自信たっぷりに答えた。
結局その自信に安心したことと昔のことと合わせて、俺はヤツの「ホショウ人」になることにした。



それから半年くらい経ったある日のこと。
俺の家に見知らぬ男が現れた。
いかにも胡散くさそうなその男は俺に、
「ヤツが借金を滞納していて、連絡がつかない」
「なので、『連帯ホショウ人』であるお前に肩代わりをしてもらいに来た」
と言った。

それを聞いて、
「ちょっと待て。俺に金銭的な負担は発生しないはずだろ?」
俺がそう抗議すると、
「金銭的な負担は発生しない」
男はあっさりと答えた。
「だったら…」
反論しようとしたところ、男は
「その代わり、お前の『人生』で肩代わりしてもらう」
そう続けた。

「…は?」
何を言っているか解らないでいると、
「契約書を見てみろ」
そう男が言った。

契約書を見直すと、「ホショウ人」の部分に「保『生』人」と記載してあった。
「生きる」の字?
まさか…

「ヤツが踏み倒した金額分の人生を、お前に肩代わりしてもらうということだ。さあ行くぞ」
男は俺の考えを読み取ったように言い、俺を部屋から引きずり出した。
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