キミを絶対、世界のみんなに自慢する。〜ポンコツな家政婦とナマイキ少女の下克上〜

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【第2話】やってしまった

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 家政婦キノーの拳が、目前の悪漢の腹部に放たれる。

「ッッッ~!!?」

 低い打撃音と共に、男は身体を折り畳み悶絶した。

 華奢な体躯や、地味な見た目。鈍臭そうな所作。
 そんな彼女の見た目と裏腹な、鎧を撃ち抜くほどの怪力。

「ひぃッ! お前何なんだよッ!!?」

 男たちはようやく状況を飲み込んだ。
 状況一変。これは危機的だ、と。

 残った三人は一斉にクロスボウを構えた。
 距離、約五メートル。
 動揺しながらも、男たちは正確に狙いを定める。

「くたばれッ!!!」

 秒速六十メートルの矢が三本、キノーに放たれた。

 しかし。

「……ッ!!」

 思わず絶句。
 近距離で放たれた矢が、一本も命中しなかったのだ。

 頭部、胸部、腹部。
 其々に放たれたはずの矢が、家政婦の両指間に収まっていた。

 即座。

 彼女は矢を一本ずつ右手に持ち直し、ダーツの如く投げ返す。

 ひょゥっふッ。
 鋭く、短い風切り音。

「うあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!?」

 一人。

「いてぇぇぇ!! 何なんだよぉぉぉマジで!!!」

 また一人。

「ひぃぃぃっ!?」

 矢が的確に三人の右膝を貫いていく。

「たっ……たすけて……」

 動揺と痛み。
 彼らはその場に座り込んだ。

「……」

 キノーは無言のまま、阿鼻叫喚の男たちの元へ歩を進める。
 そして眼前へ迫ると、宣言通りに一人ずつ腹部へと拳を叩きつけて行った。

 メキっ。

「あぉぉぉおぉぉッ……ッ」

 胴が、鎧の上から円形に窪(くぼ)む。
 吐血。痙攣の後、気絶。

「やっ!? やめっ! てッ……
 バケモノッ!! あッ!! ああぁぁァァ……」

 二人目も同様に一撃。
 そして最後、三人目の元へ。

「ひ……あぁ……ッ!」

 尻餅を付いたまま、残された最後の男は後ずさる。

「あの……あ、すいッ……スイヤセンしたッ……!!! マジで!!! あの……ッ村を襲った事は謝ります!! ホントに! スイヤセンッ!!! だからッ! あの……ッ!!!」

 涙ながらに訴え掛ける男だったが、キノーの視線は彼の股間へと向けられていた。

「あら~。お漏らししちゃったんですねー」
「あの……スイヤセン……許して……」
「あなたでしたよね?」
「へ……??」
「私が期待通りの顔じゃなくて、残念でしたねっ」
「あっ! いや……それは」

 問答無用と言わんばかりに、男の顔面に拳がめり込んだ。
 鼻骨と前歯数本を破壊されながら後転。そのまま地面へ頭部を強打。

 だが、彼は運が良かった。
 下は柔らかな土壌だったのだ。
 男の頭蓋骨は、ひびが入る程度で済んだ。


 ひと段落し、家政婦は少女の元へ戻った。
 
「お嬢様……終わりましたっ」
「キノー……」

 目線を合わせて屈むと、少女はキノーにしがみ付いた。
 そして、咳を切ったように泣き声を上げた。

「どうして……どうしてこんなっ! こんな事になっちゃうの……!」

 彼女の体温を感じながら、家政婦は自分の身体が震えている事に気が付いた。

(やってしまった……感情的になってたとはいえ、人を殴るなんて……)

 ちゃんと手加減できていただろうか……そんな心配が脳をかすめる。

 キノーは少女をそっと抱き返しながら、一ヶ月ほど前……自分がこの地にやって来てからの日々に思いを馳せた。
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