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【第9話】スキル:把握(キャッチ)
しおりを挟むドアの開閉に連動してスリングショットが作動する。
リュンヌお手製、侵入者撃退用トラップである。
威力は何段階にも調整出来るようになっており、今回はあまり怪我しない程度に抑えていた。
「わあぁっ!!!」
キノーは突如顔面に飛んできた物体に驚きながらも、目はしっかりその形を捉えていた。
横幅十五センチ、縦十一センチ。
奥行き七センチの金属製の箱。
繊細な装飾が施されており、側面に鍵穴が見えた。
(宝石箱かな?)
そんな事を思いながら、衝突寸前でキャッチ。
そして……。
がたんッごろんッがたんッごろんッ。
「え……えっ!! うそ!!?」
リュンヌは思わず大声を上げた。
キノーが箱を掴んだまま吹っ飛び、そのまま後方の階段を転げ落ちていったのだ。
鼻血が出るくらいで済むはずだった。
それが、全く想定外の大事に。
リュンヌはあらかじめ用意していた【救急スプレー】を手に取り部屋を出た。
そして階段の手すりに座り、一気に滑り降りた。
顔の前で箱を掴んだまま、床に仰向けに倒れているキノーを見つけた。
「ねえ!! しっかりして!!」
怪我を治そうと、少女はすぐさま【救急スプレー】を構える。
ところが。
「これ。オルゴールだったんですねっ」
そう言いいながらキノーは腕を下ろし、ニヤリと笑みを浮かべた。
彼女の両腕の中で、箱が旋律を奏でている。
数秒間。
二人はそのままの姿勢で、広間に小さく鳴り響く音色に耳を傾けていた。
「……どうして」
リュンヌが沈黙を破ると、キノーはようやく身体を起こした。
「ちゃんと、鍵を取ってきたんですっ」
箱の側面に、鍵が刺さっているのを見せる。
「どうやって……?」
「それは……へへへっ! 秘密ですっ」
少女はまじまじと家政婦を見た。
階段を派手に落下したのに、どこにも負傷が見当たらない。
(ホントだったんだ……)
父親の話を思い出す。
「あなた……何者なの?」
「ただのキノーですっ」
「そーじゃなくて……まー、いーけど」
溜息混じりにそう言うと、リュンヌは家政婦の手からオルゴールを取り上げた。
鍵を引っこ抜く。
旋律は止まり、広間は再び静寂を取り戻した。
「スプレー、使う?」
「大丈夫ですっ。私、結構頑丈なんでっ!」
「……そっ。じゃーシャワー浴びて来て」
「えっ!?」
「そんな泥だらけどいられてもヤだし」
指摘されて、キノーは自分が思っている以上に汚れている事に気がついた。
そして、自分が通った後も泥だらけだ。
「あのっ……! ちゃんと綺麗にしておきますのでっ!」
「いーからさっさとシャワーして来なよ。グズグズしてると“あの人”が帰って来ちゃう」
洗面台とガラスドアで区切られた、解放感のあるバスルーム。
シャワーと共に流れ落ちていく泥を見つめながら、キノーは昨日の事を思い出していた。
◇◇◇◇◇
『実績解除。新たなスキル【把握】がアンロックされました』
フォマローに馬車に招かれた後、キノーの脳内で無機質な声がそう告げた。
そして更に、声は続ける。
『【把握】は、意識を向けた物質の大きさや重さ、速さなどを瞬時に計測できるスキルです』
なるほど。しかしそれが一体、何の役に立つのか?
そんな疑問に答えるかの様に、脳内でスキルのチュートリアルが進んでいった。
『同時に複数の物質情報を捉える事も可能です。
しかし一つに絞れば、より詳細な情報を捉える事ができます』
頭の中に、雨天の荒野の映像が現れる。
『雨粒に混じり、魔法鉱石が一瞬降り注ぎます。【把握】を使用し、鉱石のサイズを計測して下さい』
謎のシチュエーションだったが、キノーは声に従い雨の映像に対してスキルを使用してみた。
直後、不思議な事が起こった。
雨粒が、突如ゆっくりと落ち始めたのだ。
身体もそれに合わせてゆっくりとしか動かせない。
まるで時間そのものが遅くなった様な感覚。
それでも脳だけは通常のスピードで動いた。
(この中から魔法鉱石を……)
減速したところで、無数の雨粒から目標物を一つ探すのは困難に変わりない。
(いや待てよ。“意識を向けた物質”ってことは……)
一旦雨から意識を逸らすと、時間は再び通常の速さで流れた。
雨の映像を見ながら、魔法鉱石の特徴を思い浮かべる。
“淡い光を放つ、角張った石”。
数秒後、視界の中に何かを検知した。
『“魔法鉱石”。縦横一ミリ。奥行き0.五ミリ。重量0.七ミリグラム。硬度二。』
(あった!)
情報の位置へ、すぐさま意識を向ける。
また時間はゆっくりになり、今度は“眼で”魔法鉱石を捉えた。
(なるほどっ、これは便利な能力だ……何かを避けたり、探したりし放題だっ)
何かしら、人の役にたてそうである。
そう思い喜んでいたが、あまりにチュートリアルに夢中になっていた為、横に居たフォマローの話をほとんど聞き逃していた。
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