キミを絶対、世界のみんなに自慢する。〜ポンコツな家政婦とナマイキ少女の下克上〜

ここでCM

文字の大きさ
9 / 17

【第9話】スキル:把握(キャッチ)

しおりを挟む

 ドアの開閉に連動してスリングショットが作動する。
 リュンヌお手製、侵入者撃退用トラップである。
 
 威力は何段階にも調整出来るようになっており、今回はあまり怪我しない程度に抑えていた。

「わあぁっ!!!」

 キノーは突如顔面に飛んできた物体に驚きながらも、目はしっかりその形を捉えていた。

 横幅十五センチ、縦十一センチ。
 奥行き七センチの金属製の箱。
 繊細な装飾が施されており、側面に鍵穴が見えた。

(宝石箱かな?)

 そんな事を思いながら、衝突寸前でキャッチ。
 そして……。


 がたんッごろんッがたんッごろんッ。


「え……えっ!! うそ!!?」

 リュンヌは思わず大声を上げた。

 キノーが箱を掴んだまま吹っ飛び、そのまま後方の階段を転げ落ちていったのだ。

 鼻血が出るくらいで済むはずだった。
 それが、全く想定外の大事に。

 リュンヌはあらかじめ用意していた【救急スプレー】を手に取り部屋を出た。
 そして階段の手すりに座り、一気に滑り降りた。



 顔の前で箱を掴んだまま、床に仰向けに倒れているキノーを見つけた。

「ねえ!! しっかりして!!」

 怪我を治そうと、少女はすぐさま【救急スプレー】を構える。

 ところが。

「これ。オルゴールだったんですねっ」

 そう言いいながらキノーは腕を下ろし、ニヤリと笑みを浮かべた。

 彼女の両腕の中で、箱が旋律を奏でている。
 数秒間。
 二人はそのままの姿勢で、広間に小さく鳴り響く音色に耳を傾けていた。


「……どうして」

 リュンヌが沈黙を破ると、キノーはようやく身体を起こした。

「ちゃんと、鍵を取ってきたんですっ」

 箱の側面に、鍵が刺さっているのを見せる。

「どうやって……?」
「それは……へへへっ! 秘密ですっ」

 少女はまじまじと家政婦を見た。

 階段を派手に落下したのに、どこにも負傷が見当たらない。

(ホントだったんだ……)

 父親の話を思い出す。

「あなた……何者なの?」
「ただのキノーですっ」
「そーじゃなくて……まー、いーけど」

 溜息混じりにそう言うと、リュンヌは家政婦の手からオルゴールを取り上げた。

 鍵を引っこ抜く。
 旋律は止まり、広間は再び静寂を取り戻した。

「スプレー、使う?」
「大丈夫ですっ。私、結構頑丈なんでっ!」
「……そっ。じゃーシャワー浴びて来て」
「えっ!?」
「そんな泥だらけどいられてもヤだし」

 指摘されて、キノーは自分が思っている以上に汚れている事に気がついた。
 そして、自分が通った後も泥だらけだ。

「あのっ……! ちゃんと綺麗にしておきますのでっ!」
「いーからさっさとシャワーして来なよ。グズグズしてると“あの人”が帰って来ちゃう」



 洗面台とガラスドアで区切られた、解放感のあるバスルーム。
 シャワーと共に流れ落ちていく泥を見つめながら、キノーは昨日の事を思い出していた。


◇◇◇◇◇

『実績解除。新たなスキル【把握キャッチ】がアンロックされました』


 フォマローに馬車に招かれた後、キノーの脳内で無機質な声がそう告げた。

 そして更に、声は続ける。

『【把握キャッチ】は、意識を向けた物質の大きさや重さ、速さなどを瞬時に計測できるスキルです』

 なるほど。しかしそれが一体、何の役に立つのか?
 そんな疑問に答えるかの様に、脳内でスキルのチュートリアルが進んでいった。


『同時に複数の物質情報を捉える事も可能です。
 しかし一つに絞れば、より詳細な情報を捉える事ができます』

 頭の中に、雨天の荒野の映像が現れる。

『雨粒に混じり、魔法鉱石が一瞬降り注ぎます。【把握キャッチ】を使用し、鉱石のサイズを計測して下さい』

 謎のシチュエーションだったが、キノーは声に従い雨の映像に対してスキルを使用してみた。

 直後、不思議な事が起こった。

 雨粒が、突如ゆっくりと落ち始めたのだ。
 身体もそれに合わせてゆっくりとしか動かせない。
 まるで時間そのものが遅くなった様な感覚。
 それでも脳だけは通常のスピードで動いた。
 
(この中から魔法鉱石を……)

 減速したところで、無数の雨粒から目標物を一つ探すのは困難に変わりない。

(いや待てよ。“意識を向けた物質”ってことは……)

 一旦雨から意識を逸らすと、時間は再び通常の速さで流れた。
 
 雨の映像を見ながら、魔法鉱石の特徴を思い浮かべる。

 “淡い光を放つ、角張った石”。

 数秒後、視界の中に何かを検知した。

『“魔法鉱石”。縦横一ミリ。奥行き0.五ミリ。重量0.七ミリグラム。硬度二。』

(あった!)

 情報の位置へ、すぐさま意識を向ける。
 また時間はゆっくりになり、今度は“眼で”魔法鉱石を捉えた。

(なるほどっ、これは便利な能力だ……何かを避けたり、探したりし放題だっ)

 何かしら、人の役にたてそうである。
 そう思い喜んでいたが、あまりにチュートリアルに夢中になっていた為、横に居たフォマローの話をほとんど聞き逃していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...