「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

物語の始まり

優しさに包まれて

　『トクッン…トクッン…トクッン…トクッン』優しい音が聞こえて来る。
『トクッン…トクッン…トクッン』夢なら覚めないで。
まだ夢に浸っていたいけど、気になる。
『音の正体…』そっと目を開けて見る。


　艶々の小麦色の肌が見える。
モゾモゾと動いてみる。
　
小麦色の肌の人物と目が合ってしまった。

「ギャ━━━━━ッ！！」


　昨日、召喚された花嫁はクリフォード兄貴の召喚された理由、元の世界に帰れない等の説明を聞き終わると泣きながら寝てしまった。
幼い身体には召喚など相等な負担になっていたんだろう。
夕食の時間になっても起きないので、俺は花嫁を抱き込むように神殿の客室の寝台で、共に眠った。
幼い身体は柔らかく、抱き心地が最高だ。

朝方、花嫁がムズムズと動きだした事に気付いていたが面白いから様子を見ていたのが悪かったみたいだ。
柔らかい身体がムズムズと上に上がって来る。
ゆっくりと瞼が上がる。
その瞬間、新緑の瞳と目が合うと幼女の悲鳴が響き、花嫁は脱兎の如く俺の腕の中から抜けだすと「家じゃない、家じゃない、帰ってないんだ！！」と寝台の上で泣き出した。

　なんだか胸が締め付けられる気がしたのは気のせいでは無い、当たり前の事だ。
幼子を誘拐した事に変わりない。
泣いている花嫁を抱きしめて、俺は誓った。
『必ず幸せにすると』



　『これは、お仕置きなんですか？』サイラスの、お膝に股がり向かい合わせで抱きしめられています。
目覚めた時に、飴のようなサイラスの銀の瞳と私の瞳が合ってしまいました。
その瞬間、私の頭の中ではファンファーレが響き、興奮の余り悲鳴を上げてしまったのです。

私の頭の中は花畑になっているでしょう。
なぜなら召喚は夢では、夢ではなかったんだから！！
帰ってなかった。怖かった、目が覚めたら元の世界の自分の部屋で何時もの生活が始まると思っていたから嬉しくて泣いてしまった。

『トクッン…トクッン…トクッン』サイラスに抱きしめられていると優しい音が聞こえてくる。
『トクッン…トクッン…トクッン』顔を上げてみるとサイラスの優しい手が額から、後頭部を撫でてくれる。
『暖かい』
幼い時…　悲しい時…　嬉しい時…　得られなかったぬくもり。欲しかった、ぬくもり。


トントン…　トントン…　ノックの音が聞こえているけど無視するよ！！だって、もっと撫でて欲しかったから。

トントン…トントン…無視、無視だよ。

その時の私は考えてなかった。

無視した結果を……　


ドーン！！ドーン！！ドーン！！ドーン！！　
扉らに体当たりしている音がする。
「止めろ！止めるんだ！！」サイラスは、私を抱き上げ戦闘体制に入ろうとした時、一際、激しい音がした。
ドｯ━━━━━ン！！　ドｯ━━━━━ン！！
「チャラ男軍人！！てめえ━━━━━！何してんだ！！！！」
瞬間、扉が破壊され、白い埃の中から出てきた人物に……

『私、目が悪くなったのかな』なんて思ってしまいました。