「Ｒ-18」異世界で花の乙女になった少女 ～侯爵夫人への階段を昇る～

物語の始まり

神官は見た

　花の間で、聖女様の降臨に神官と巫女から歓声が上がり喜びの空気で満たされたのは少し前のことだ。

　今回の召喚には聖女様とクラーク公爵家、キャスル侯爵家の託宣の花嫁が共に召喚される神託が降ろされていた。

聖女の降臨は確認できたが、クラーク公爵家、キャスル侯爵家の花嫁の降臨が確認できない事態に焦りの色が出ていた。

「もしかして……」１人の神官が会っては為らない事が起こったような発言を始める。

託宣の花嫁とは、神からの直接の指名を持って、一族、個に使わされる花嫁。
託宣の花嫁を受け取る事はとてつもない栄誉。

託宣の花嫁に、神官が持つ聖俗性の魔力を当てると一族の紋章が手の甲に浮かび上がる。

しかし、花の間から花嫁が出てしまうと、フリーの花の乙女になってしまう。
２度と紋章の確認は出来ない。

昔の書籍に、託宣の花嫁を神殿のミスで受け取る事が出来なかった高位貴族と政略の為、多くの花の乙女を欲した王室の仲が拗れ内乱に発展した歴史が残されている。
神官長の処刑が落とし処になったようだ。

花の間に、乙女の姿は残されてなかった。

その場にいた神官、巫女に（処刑）の文字がうかぶ。

「クシュン……」

柱の影に、銀髪の幼女と水色の髪の幼女が抱き合い、丸まって居るのが発見できた事に安堵の色が広がった。

寒さの為か抱き合ったまま固まってしまった幼女同士の身体を離すのは意外と大変な作業だったが、神官長が幼女を怪す姿にホッコリしてしまった。

花嫁の紋章を無事に確認できた後、クラーク公爵家とキャスル侯爵に無事に引き渡しできた時、両家の方々が幼女を大切に、抱き上げてる姿に胸が暖かくなったのは私だけでは、な無いはずだ。



　翌朝、神殿内部の見廻りをしている時、事件は起こった。

「キャ━━━━━　！！」幼女の悲鳴か神殿の宿泊フロアーに響きわたる。

「全員、警戒態勢！！」隊長の号令の元、現場方向に急行する。

「パタパタ、パタパタ」幼児の走る音。
「バンバンバンバンバンバン」扉を激しく叩く音。
「バッ━━━━━ン、バッ━━━━━ン」
何かが破壊された音。

「敵、来襲！！敵、来襲！！」ひたすら急いだ。

キャスル侯爵家の、御次男と花嫁が宿泊していた部屋の扉の部分が無惨に破壊されている。
全員が唖然としていると、瓦礫の埃の中から人影があらわれた。

キャスル侯爵家の御次男の方に担がれるように抱かれた銀髪の花嫁。
御次男は、水色の猫の子を摘まんで……　違う、何故かクラーク公爵家の花嫁を猫の子のように摘まんで表れた。


その日、事件に対して箝口令が引かれた。

後日、クラーク公爵家から花嫁の無事な召喚のお礼とし多額の小布施が神殿に納められた。