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第3章 出られない森

第8話 新たな精霊

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 二人の動きが止まったことを幸いと息を吐き出した私はそのまま何があったのかを話した。


「――ということで精霊王は私を害そうとしたわけでもなく、逆に守ってくれようとしていたんです。逆にノルヴィス様は私を心配していたところに泣き後を見て勘違いしてしまったわけですね。ね? これで分かりましたか二人とも」


 話している途中も視線だけは火花を散らし続けている二人だったが、もう気にしないで強引に話を締めくくった。

 話し終えたから勘違いはお互い解消されているはずなのに未だににらみ合う二人を見ているとため息が出てしまう。
 どうやら勘違い以前に、二人はとことん馬が合わないたちのようだ。

(顔を合わせさせるのはとりあえず避けた方がいいわけね……)

 こんな状況では呪いを解く以前の問題だし。

「とにかく今、ルヴィス様と縁を切るつもりはないです。ですのであなたからの提案をお受けすることはできません」

 精霊王には悪いがどうしてもノルヴィス様を見捨てることなどできない。

 そう告げればノルヴィス様は目を輝かせて勝ち誇った顔をした。

「……そうか。残念だがそなたの意志を尊重そんちょうしよう。だがいつでも帰ってきていいのだからな。我とそなたは同じ血を持つ親族なのだから。そうだ、呼び方もおじい様と呼んでくれてよいぞ?」

 そう告げる精霊王は私の頭をなでながらもノルヴィス様に向けて親族の余裕の笑みを見せた。

 そして私の背後に視線を向けはんっと息をこぼした。
 見なくても分かる。
 ノルヴィス様に向けての挑発だ。

 そして再び目線の火花を散らしだす。
 私を挟んでケンカをしないでほしい。切実に。



「そうだフラリア」

「はい?」

 しばらくしてもう帰ろうかという時におじいさまは思い出したように私を呼んだ。
 振り返ると目線を合わせて私の頭に手をおかれ、じんわりとした光に包まれる。

 光は私の中から出ておじいさまの手の中に集まると、小さな小さな精霊へと変わる。

「そなたの中にある力を少しばかり変質させて新たな精霊を生み出した。この子がその力を制御してくれるだろう」

「え?」

「人間界ではその身に毒があるといろいろと面倒だろう? 他者と関わるというのならなおさら触れ合うこともあるだろう。だからこの子にはそなたから出る力の防波堤ぼうはていの役割をしてもらう。……つまりこの子がいればそなたの意志に反して他人を傷つけてしまう心配はなくなるのさ」

 そう言うおじいさまはとても優しい目をしていた。

「うまく扱いなさい」

 そう言って名残なごりを惜しむように頭をもうひと撫ですると、そのままふっと消えてしまった。



 驚いて周りを見ると、そこはもう初めに別れた森の中だった。
 護衛の騎士たちの姿もある。

 どうやら元の森へと戻って来たようだった。

 あまりにも一瞬だったので夢を見ていたのかと思ったけれど、私の手にはいつの間にか小さな精霊が乗っていて先ほどまでのことが現実であったことを教えてくれる。


 別れ際に言われた言葉を思い返す。

 おじいさまは私を思って力を変えてくれた。
 何から何まで世話になりっぱなしだ。

「ありがとう、おじいさま」



 胸がいっぱいになり小さな精霊を優しく抱きしめた。


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