ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

文字の大きさ
59 / 170
化け物たちとの遭遇編

迫る魔の手

しおりを挟む
【クラウン城東部平原地帯】
「アリスお姉様ー…うぅ…嬉しいですわぁ!」

エリエスが涙を流しながらアリスに抱きついていた

「おぉ、ヨシヨシ(笑)」

同年代に自分を上回る者が居た事の喜びと、非常識な存在である自分の全てを魅せても、変わらないでくれる者が居る事に涙を流して喜んでいた

「姉さん、やるね!…それはそうとヒイロ。ミスリルソード見事に折れちゃったね(笑)」

アリスが放った【天破豪陣斬(テンハゴウジンザン)】を受けたミスリルソードは、真っ二つに砕かれていた。その砕かれっぷりを見つめるヒイロにアテナが近寄る

「すまんかったのぅ、弁償はさせてもらうでな。いくら払えば良いかの?」

「いえ、良いですよ。確かに売れば結構な値段が付きますが…その代わりにアリスが、かけがえのない親友を得たのだから安い代償だと思っておきます」

「そうか、すまんのぉ…良い男じゃなヒイロ。可愛い3人がお前に惚(ほ)れているのも頷(うなず)けるわい(笑)」

レア鉱石のミスリルで作ったソードは、一般の冒険者が「いつかは手に入れたい!」と憧れる程の1品なのだが、それをアリスとエリエスの友好関係と引き換えで良しとしたヒイロだった


「ガラガラガラ……」
2人の少女の抱擁を眺めて和んでいた彼らの近くを、豪華な馬車の車輪の音が近付いてきた

「ふはっはっはっは!余がクラウンの次期当主【キングス王子】であーるっ!」
 

清々しく騒がしい声量のキングス王子が、お供を連れて馬車の中から現れた

「どうしたのじゃ?王子がわざわざこんな所まで来るとはの」

「これはアテナ様。ご機嫌麗しゅうであります!もう少し東に行った集落から魔獣の発見報告を受けたので、余自らが調査に出向く次第でありまーす!」

相変わらずクセの強い話し方だが、キングス王子は至って真面目である

「それは放っておけないよぉ!ヒイロお兄ちゃん、アタシ達も王子様に付いて行こうよぉ!」

「そうだな…王子様に何かあってもイカンしな。カルーア、サーシャ、コハラコ良いか?」

アリスの提案に同意するヒイロ達だが【武闘女神】と呼ばれたアテナは、王子の護衛の申し出に断りを入れた。当然理由を聞かれたアテナはそれに答える

「キングス王子よ、そなたの父ロードは知っている事なのじゃが、この娘【エリエス】は実はワシらの孫ではないのじゃ」

「なんと!?では誰の子供なのですか?」

アテナはエリエスが、遙か昔に地球からやって来たという古代人たちが住んでいたという古代文明遺跡から発掘された【超人類計画】の試作品である事を説明した

「王都に勤めるエリエスの両親役をしてくれたあの2人も、実は全くの他人でのぅ。ただあの人(ヘパイトス)の教え子だったと言うだけじゃ。彼らにエリエスの両親の役目が終わったと伝えねばならんしな」
 

「うむ了解した。護衛もおるしハイエルフのカルーア嬢も居るのだ、問題は無い。早く行くが良かろう」

かくしてキングス王子達は、ヒイロと三姉妹、コハラコを一向に加え魔獣が現れたという集落に向かった



【森林地帯】
数時間後、人間の目を避けながら食料を探さなければならないグルドル達は、その非効率のせいで僅かな木の実を得たに過ぎなかった

「ふたりとも大丈夫?お腹空いてない?」

「グキュウウゥ…」エイナスとシェルハは、ロロルカの問いに空腹の腹の音で返事をしてしまった

「だよなぁ…言わない様にしていたが、俺もかなりツラくなってきたぜ。逃げられない動物とかいねーのかよ…」

チカラ勝負なら、それなりに自信のあるグルドルだが、小型の速度タイプの動物にしか出会っていなかった

「本当に困ったわ。さっきから湧き水も見当たらなくて喉も乾いてきちゃったし……あら?アレは?」

途方に暮れながら前を眺めたロロルカの視界に、供養碑が目に入った
(日本で言うところの旅人への安全祈願とかのお地蔵さんの様な役割だろうか?)

「ねぇグルドル、アレを頂いても仕方ないと、思わない?」

「そうだな…気は引けるが、仕方ないよな」

「そうよね!私が取ってくるわ」

供養碑に備えられている食べ物は、まだ新しく十分に食べられそうな果実や野菜が何点か備えられていた。4人の2食分にはなるだろうか?

「申し訳ありません。私達も困ってるんです。お許しくださいね」

供養碑へのお供え物を詫びの言葉を言いながら、そっと手を伸ばすロロルカ………その時だった!!

「バシュン!」
「きゃあああっ!?」

「どうしたっ!?」

皿の上に置かれた供物を持ち上げた時、供養碑に刻まれた文字が光ったかと思うと中央に置かれている小箱の蓋が開き、中から無数の触手が伸びてきてロロルカの全身を拘束した

「何だと!?…罠だっ!」

ソレが自分達4人を嵌(は)める為の罠だと気付いたグルドルだが…

「今だ!全員構えろ!……撃てー!」

林道の高い木の上に姿を隠していた人間10数人が、弓を構えて彼ら4人に攻撃を始めた

「がはっ!?」

トラップに動きを拘束されていたロロルカは、成す術もなく弓矢3本に身体を刺されてしまった!

「ロロルカさん!」
「ロロルカお姉さん!」

エイナスとシェルハは、目の前で起きた悲劇を受け入れられずにその場で硬直してしまう

「馬鹿っ!何やってんだ、逃げるぞ!」

グルドルは8歳のシェルハを抱き抱えて走り出す

「シェルハ、コレで身を隠すんだ!」

グルドルは盾と言うには心許(こころもと)ないが何も無いよりはマシなので、シェルハに持っていた籠を持たせた。シェルハは頭の上に籠を構える

「エイナスも急げっ!」

「でも!ロロルカさんが!」

「もう助からん!走れ!走るんだっ!!」

「生きて……」

自分を置いて弓矢の雨あられの中、走り行く3人を虚ろな目で見送るロロルカ

「うえぇん!ロロルカお姉さんがぁ…うぅ…」

グルドルの背中で泣きじゃくるシェルハ

「ちくしょう!ちくしょうっ!」

エイナスも目に涙をためながら、必死に人間の攻撃から逃げていた。人気の無い濃い密林地帯に駆け込んで行く3人
人間の罠でロロルカを失った3人は、見知らぬ世界で今後どうなってしまうのか?



続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...