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化け物たちとの遭遇編
アリスの葛藤
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【渓谷地帯東端】
ヒイロ達はキウと合流してから集落に寄り、魔獣族の4人に【ブルージュ村】が受け入れてくれる事を説明した
「人間がひとりも居ない村ですか?」
「私達もやっていけるかな?」
エイナスとシェルハは人間に追われない生活が約束される事には喜んだが、まだまだ幼い2人なので、新天地での生活に期待と不安が入れ乱れていた
「キウさん、ミアナさん、俺(ヒイロ)と三姉妹にコハラコ、魔獣族4人で…合計11人か、流石にこの馬車ひとつでは厳しいですね」
キウ達が乗ってきた馬車は比較的大型なのだが…手綱を握る操馬席に2人、中に4人(子供ばかりなら、なんとか6人)で満席になるので余裕で定員オーバーだ
「そうですね。私が村の入り口まで乗り物を出しますね【魔法絨毯(アラビニアシート)】!」
ミアナは魔法で5メートル四方の魔法の絨毯を生み出した。ソレに、ミアナと獣人族の4人とアリスが乗った
「何だいソレは?わたしも初めて見るよ…」
「お師匠様の星に伝わる【魔法のカーペット】なる乗り物らしいです。使えるようになりなさい。と、ご教授されたのです」
「へ~…【消去の魔女】さんは本当に色々な魔法を開発してるんだね。これは便利そうだ…」
三姉妹の中でエルフ族のカルーアが魔法担当だ。そんな彼女には、この数人が乗って移動可能な乗り物に興味津々なようだ
「有栖さんは本当に何でも出来るんだねぇ。凄いなぁ…」
「そう言えば、アリスさんは魔獣族の方々と言葉が通じているみたいですね。素晴らしいです」
アリスは魔獣族の彼らを気遣い些細な事でも話して、彼らの緊張をほぐそうと気を使っている
「んーんぅ、異世界転移特典っていうので地球の神様から貰ったチート。って言うものなのぉ。アリスが自分で学んだ訳じゃないんだぁ…あはは(汗)」
「そうでしたか…気分を悪くされたらすみませんです」
「んーん、良いよぉ。気にしてないからぁ」
「でもアリスさん。冒険者で言えばAランクに匹敵する強さをお持ちですよね」
「そうなのぉ!少し前に姉妹3人揃ってAランク試験に受かったんだぁ!」
今度の話題はミアナの狙い通りに、アリスの気分を良くする事に成功した。のだが…礼儀正しいミアナは嫌味ではないのだが…つい本音を言ってしまう癖がある
「あれ?そうなんですか?…カルーアさんとサーシャさんからは、Sランクの実力を感じますよ?」
「えっ!?」
「あっ!」
アリスのその反応を見て、失言してしまった事を理解したミアナ
「アタシだけがAランクなんだ…」
ミアナはアリスが【天破豪塵斬(テンハゴウジンザン)】を使えるのを知らない。ソレを加味すれば、また評価は変わったかも知れないが…
ヒイロに引き取られてから色々な事があったが、常に協力し合って乗り越えてきた三姉妹。その中で自分だけがAランクと言われ気落ちするアリス。すると、そのやり取りを見ていたシェルハが…
「ミアナさんの言葉は分からないけど、アリスさんは凄く優しい人ですから、自信を持って欲しいなぁ!」
8歳のシェルハに笑顔で元気づけられたアリスは、少しだけ気持ちが持ち直した。そんな会話を続けているうちに、彼等は村の入り口まで移動した
【ブルージュ村入り口】
間もなく草原地帯が終わり、その先に森林地帯が見える。その切り替わる手前に詰め所が確認できた
「キウ様、ミアナ殿、お帰りなさいませ!」
「あらら、随分と人数が増えておりますわね」
出迎えたのは…全身毛むくじゃらで2メートルのトラ男と、170cmくらいのスレンダーなヒョウ女の2人だ
2人は比較的軽装で皮の鎧に身を包んでいる。防御力より速度重視タイプのようだ
「すみません。皆さん降りてくださーい!」
ミアナは魔法絨毯を格納した。便利な乗り物ではあったが、彼女の顔に僅かに疲労が見える。便利な分、消費魔力も大きいようだ
「もうひとつ馬車が要るわね。ジェレラル、馬車を用意してあげて」
「おう、分かった。待ってろ」
トラ男のジェレラルは、納屋からもうひとつの馬車を出してきた。魔法絨毯の代わりにする様だ
「ファーミル、順番だと今回はお前の番だよな?引率を頼むぜ」
「はいよ!ジェレラルは1人になるけど、番人の仕事をよろしく頼むよ」
村の入り口で魔法絨毯の代わりに馬車を用意してもらい、引率者にファーミルを加え一行は森林地帯へと入って行く
【森林地帯】
森の中とはいえ馬車が通れるだけの道は確保されていた。ふたつの馬車は進行方向に対し縦並びで、キウの統治する村を目指す
「ミアナさん。この森の中って結構な数のモンスターや魔物が居ないかい?」
カルーアの探索魔法が森の中に、無数の魔物たちの存在を確認していた
「それに、かなり強いモンスターも居るよぉ!」
アリスの鼻も森の中に潜む者を捉えていた。「フウゥぅ!」サーシャの横で険しい顔をしているコハラコ
「皆さん大丈夫ですよ。馬車には、それぞれ魔物除けの精霊石が装飾されていますから」
「でも、かなりの数の魔物さんが周囲に集まって来てますの…」
馬車はかなりの数の魔物に取り囲まれていた。彼らの数の10倍以上の魔物達が居るようだ
流石にこの数の差は嫌でも緊張して、戦闘態勢を取ってしまう
「ガサガサっ!!」すると多数の魔物達が、一斉に森の中から姿を現した
「こ、これは…どういう事なんだ?」
ヒイロは予想外の光景に言葉に詰まった。何と大量の魔物が馬車が通る為のあぜ道沿いに並び、全員頭を下げるか地に這いつくばっていた
「彼らも【ブルージュ村】の村民なんです。彼らも他の村民と同じ様にキウ様を慕っています
恐らくキウ様に御挨拶をする為に、ほぼ総出で出迎えたのでしょう」
「キウさんってばぁ…本当に何者なのぉ?魔物に挨拶される人なんて、アタシ初めてだよぉ!」
普段のんびり屋で、あまり動じることは無いアリスも流石にこの光景には驚いていた
「俺も鍛冶師を仕事にしているから冒険者の変わった体験談を聞くことは何度もあったが…魔物に総出で挨拶される人なんて聞いた事ないな」
冒険者の話を多数聞いてきたヒイロも、前代未聞の事のようだ
「彼らは【ブルージュ村】を守る番人でもあるんですよ。村に侵入しようとする余所者を排除する、ガーディアンでもあるんです
とは言え聞き分けの悪い子も居ますので、村の出入りにはキウ様か私、それか番人の2人が居ないと食べられちゃうかも知れないので、皆さんは気を付けられた方が良いですね(笑)」
サラッとミアナは、とんでもない事を口にした
「あんまりにも丁寧な話し方だからスッカリ忘れてたよ。やっぱりキミは【消去の魔女】の教え子なんだね」
徳川有栖といい、このミアナといい、見た目は頼れる常識人に見えるのだが…どこかに常識が激しくズレている所が有るのを、再認識したカルーア達だった
続く
ヒイロ達はキウと合流してから集落に寄り、魔獣族の4人に【ブルージュ村】が受け入れてくれる事を説明した
「人間がひとりも居ない村ですか?」
「私達もやっていけるかな?」
エイナスとシェルハは人間に追われない生活が約束される事には喜んだが、まだまだ幼い2人なので、新天地での生活に期待と不安が入れ乱れていた
「キウさん、ミアナさん、俺(ヒイロ)と三姉妹にコハラコ、魔獣族4人で…合計11人か、流石にこの馬車ひとつでは厳しいですね」
キウ達が乗ってきた馬車は比較的大型なのだが…手綱を握る操馬席に2人、中に4人(子供ばかりなら、なんとか6人)で満席になるので余裕で定員オーバーだ
「そうですね。私が村の入り口まで乗り物を出しますね【魔法絨毯(アラビニアシート)】!」
ミアナは魔法で5メートル四方の魔法の絨毯を生み出した。ソレに、ミアナと獣人族の4人とアリスが乗った
「何だいソレは?わたしも初めて見るよ…」
「お師匠様の星に伝わる【魔法のカーペット】なる乗り物らしいです。使えるようになりなさい。と、ご教授されたのです」
「へ~…【消去の魔女】さんは本当に色々な魔法を開発してるんだね。これは便利そうだ…」
三姉妹の中でエルフ族のカルーアが魔法担当だ。そんな彼女には、この数人が乗って移動可能な乗り物に興味津々なようだ
「有栖さんは本当に何でも出来るんだねぇ。凄いなぁ…」
「そう言えば、アリスさんは魔獣族の方々と言葉が通じているみたいですね。素晴らしいです」
アリスは魔獣族の彼らを気遣い些細な事でも話して、彼らの緊張をほぐそうと気を使っている
「んーんぅ、異世界転移特典っていうので地球の神様から貰ったチート。って言うものなのぉ。アリスが自分で学んだ訳じゃないんだぁ…あはは(汗)」
「そうでしたか…気分を悪くされたらすみませんです」
「んーん、良いよぉ。気にしてないからぁ」
「でもアリスさん。冒険者で言えばAランクに匹敵する強さをお持ちですよね」
「そうなのぉ!少し前に姉妹3人揃ってAランク試験に受かったんだぁ!」
今度の話題はミアナの狙い通りに、アリスの気分を良くする事に成功した。のだが…礼儀正しいミアナは嫌味ではないのだが…つい本音を言ってしまう癖がある
「あれ?そうなんですか?…カルーアさんとサーシャさんからは、Sランクの実力を感じますよ?」
「えっ!?」
「あっ!」
アリスのその反応を見て、失言してしまった事を理解したミアナ
「アタシだけがAランクなんだ…」
ミアナはアリスが【天破豪塵斬(テンハゴウジンザン)】を使えるのを知らない。ソレを加味すれば、また評価は変わったかも知れないが…
ヒイロに引き取られてから色々な事があったが、常に協力し合って乗り越えてきた三姉妹。その中で自分だけがAランクと言われ気落ちするアリス。すると、そのやり取りを見ていたシェルハが…
「ミアナさんの言葉は分からないけど、アリスさんは凄く優しい人ですから、自信を持って欲しいなぁ!」
8歳のシェルハに笑顔で元気づけられたアリスは、少しだけ気持ちが持ち直した。そんな会話を続けているうちに、彼等は村の入り口まで移動した
【ブルージュ村入り口】
間もなく草原地帯が終わり、その先に森林地帯が見える。その切り替わる手前に詰め所が確認できた
「キウ様、ミアナ殿、お帰りなさいませ!」
「あらら、随分と人数が増えておりますわね」
出迎えたのは…全身毛むくじゃらで2メートルのトラ男と、170cmくらいのスレンダーなヒョウ女の2人だ
2人は比較的軽装で皮の鎧に身を包んでいる。防御力より速度重視タイプのようだ
「すみません。皆さん降りてくださーい!」
ミアナは魔法絨毯を格納した。便利な乗り物ではあったが、彼女の顔に僅かに疲労が見える。便利な分、消費魔力も大きいようだ
「もうひとつ馬車が要るわね。ジェレラル、馬車を用意してあげて」
「おう、分かった。待ってろ」
トラ男のジェレラルは、納屋からもうひとつの馬車を出してきた。魔法絨毯の代わりにする様だ
「ファーミル、順番だと今回はお前の番だよな?引率を頼むぜ」
「はいよ!ジェレラルは1人になるけど、番人の仕事をよろしく頼むよ」
村の入り口で魔法絨毯の代わりに馬車を用意してもらい、引率者にファーミルを加え一行は森林地帯へと入って行く
【森林地帯】
森の中とはいえ馬車が通れるだけの道は確保されていた。ふたつの馬車は進行方向に対し縦並びで、キウの統治する村を目指す
「ミアナさん。この森の中って結構な数のモンスターや魔物が居ないかい?」
カルーアの探索魔法が森の中に、無数の魔物たちの存在を確認していた
「それに、かなり強いモンスターも居るよぉ!」
アリスの鼻も森の中に潜む者を捉えていた。「フウゥぅ!」サーシャの横で険しい顔をしているコハラコ
「皆さん大丈夫ですよ。馬車には、それぞれ魔物除けの精霊石が装飾されていますから」
「でも、かなりの数の魔物さんが周囲に集まって来てますの…」
馬車はかなりの数の魔物に取り囲まれていた。彼らの数の10倍以上の魔物達が居るようだ
流石にこの数の差は嫌でも緊張して、戦闘態勢を取ってしまう
「ガサガサっ!!」すると多数の魔物達が、一斉に森の中から姿を現した
「こ、これは…どういう事なんだ?」
ヒイロは予想外の光景に言葉に詰まった。何と大量の魔物が馬車が通る為のあぜ道沿いに並び、全員頭を下げるか地に這いつくばっていた
「彼らも【ブルージュ村】の村民なんです。彼らも他の村民と同じ様にキウ様を慕っています
恐らくキウ様に御挨拶をする為に、ほぼ総出で出迎えたのでしょう」
「キウさんってばぁ…本当に何者なのぉ?魔物に挨拶される人なんて、アタシ初めてだよぉ!」
普段のんびり屋で、あまり動じることは無いアリスも流石にこの光景には驚いていた
「俺も鍛冶師を仕事にしているから冒険者の変わった体験談を聞くことは何度もあったが…魔物に総出で挨拶される人なんて聞いた事ないな」
冒険者の話を多数聞いてきたヒイロも、前代未聞の事のようだ
「彼らは【ブルージュ村】を守る番人でもあるんですよ。村に侵入しようとする余所者を排除する、ガーディアンでもあるんです
とは言え聞き分けの悪い子も居ますので、村の出入りにはキウ様か私、それか番人の2人が居ないと食べられちゃうかも知れないので、皆さんは気を付けられた方が良いですね(笑)」
サラッとミアナは、とんでもない事を口にした
「あんまりにも丁寧な話し方だからスッカリ忘れてたよ。やっぱりキミは【消去の魔女】の教え子なんだね」
徳川有栖といい、このミアナといい、見た目は頼れる常識人に見えるのだが…どこかに常識が激しくズレている所が有るのを、再認識したカルーア達だった
続く
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