ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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化け物たちとの遭遇編

漢(おとこ)の態度

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【古代遺跡前】
【消去の魔女】の帰還が確認できた事で、生死不明だった獣神ファルバァスの討伐を確信できた彼等は目的地を目指した。1時間ほど西に進んだ先で、三姉妹たちは肉眼で目標の遺跡を捉えた

「おい!遺跡の前に何かいるぞ」

「アタシの鼻は全然解らなかったよぉ?」
「わたしの探知魔法も働かなかったよ」

「という事は~アレは~生命体ではないのかも知れませんね~古代人の人型兵器とかいうやつですかね~?」

遺跡の入り口には身長3メートル程の人型をした物が2体、遺跡の入り口を守る様に立っている。僅かだが動いているので石像などではないようだ

「ねぇカルーア。アレってもしかして…」
「間違いないよ!イシス王国で戦った、ケヌマとか言う奴が操っていた魔装兵器だよ」

ソレを見たアリスに緊張が走った。イシス王国でベイ・ガウザーとの戦いの途中、オデュッセウス伯爵の手下になっていたケヌマが使っていた物だ

「まさか…アレの中にも母さんの様に、エネルギー源にされているエルフが入れられてるんじゃないだろうね?」
 

以前戦った時、魔装兵器を動かす為ケヌマはカルーアの母親の魔力を動力源にしていた。ここにいる2体も誰かを犠牲にしているのでは?と考えるカルーアの眼に怒りの感情が灯る

「さて、どうやって奴を倒す?中に誰か居るのなら助けたいんだろ?」

「カルーアの【七精守護霊(ハーロウィーン)】だとぉ、中の人も危険だよねぇ?」

「うん、あの時はまだ、わたしの魔法の威力が低かったから倒せなかったけど…だからこそ中に居た母さんを殺さずに済んだ」

そういうカルーアは唇を噛んでいた

「なるほどな。今の威力なら破壊出来るだろうがその分、中に居る奴も無事では済まない訳か…参ったな…」

入り口を守る魔装兵器が、イシスで見た奴と同じタイプだと攻めにくい。カルーアはアレを倒すのにまた犠牲を出したくはなかった。答えが出ないまま草むらから隠れて、魔装兵器の動きを見守るアリス達



【王都クラウン】
「ポンコツ勇者のクセに、名高き【消去の魔女】を嫁にしたか!やるな優輝!」

「もうミクイ、からかうなよ(汗)」

優輝の結婚でさえも、ミクイにとっては彼をからかう良いネタだった。復旧作業をしていた人たちも手を止め、優輝達を中心に集まっていた

「そんな事よりもよ!!なんで結婚したのよ!どうして私じゃないのよっ!?」

大勢が優輝をからかって笑いが絶えない状況の中、不満を爆発させたミントス

「あのさぁ、どうしてダークエルフが私と優輝の結婚に不満爆発なのよ?関係ないでしょ、タダのパーティ仲間でしかない貴女にはさ!」

徳川有栖にしてみれば、この世界で最初に仕えたクラウンの人達に結婚報告しているのだから、祝福の言葉を貰いたいところなのだ

「関係あるわよ!私は優輝の1番の仲間なのよ!」

「仲間が結婚と何の関係が有るって言うのよ!貴女も煮え切らないのね」

もちろん有栖は、ミントスの優輝への気持ちにスグに気が付いたのだが…自分の気持ちさえハッキリ言えない彼女に、敢えて意地悪な言葉を選んだ

「それに、大体よ!アンタらはファルバァス討伐の為に転移したんでしょ?あの日からまだ7日程度なのよ。どこに結婚なんかする予定とか、段取りする時間があったのよ?おかしいじゃない!!」

もはやミントスは、半ばこじつけの様に2人の結婚を何とか否定しようと必死になっていた

「簡単よ!ファルバァスは転移したその日に討伐したもの。残りの6日間でお互いの家族に挨拶をし、許可ももらって式も挙げてきたわ」

「そんな短時間でチャッチャカ出来てたまるかぁ!!」

既にミントスは半泣き状態である。何とか不可能と言わせたかった。が…

「いや、ソレが出来るんだよ。俺の家族と有栖の両親は同じ街に住んでるし、俺の父親は有栖と同じクラスの友達だったらしいんだ
沖田師範代が式場の予約やら、段取りを叔母さんと一緒にしてくれたからさ、あまり時間は掛からなかったよ」

ミントスが否定したかった時間的問題は、よりにもよって優輝の口から否定されてしまった

「ん?ねぇ優輝。同じクラスって何?職業の事なの?どういう……」

「うわあああん!ばか馬鹿!優輝のバカぁ!ポンコツー!!」

優輝の口から出た聞き慣れない単語に、疑問を持ったミクイが質問しようとしたが…もはや考えて話す余裕も失ったミントスが、子供の様に泣き叫び始めた。その時、ミクイが何かに気が付いた

「おっと!お待ちなさい優輝に有栖さん。そんな話よりもさ、結婚するほど好き合ってるなら、今ここでキスして証明してよ。出来るよね、ね優輝?」

「なっ!?みんなが見ている前で出来る訳無いだろ?ミクイさん、何言ってますのよ?(汗)」

突然のミクイの提案に焦る優輝

「えー!?怪しくない?結婚式をした直後なんでしょ?キスくらいしてみなよ…あっ、ソレ!ちゅー!チュー!ちゅー!」

「なっ!?止めろよ(汗)」

「なんだ…出来ないのかよ…なら嘘なんだね!」

からかう様に言うミクイだが、彼女なりにミントスの気持ちを汲み取っていたようだ
彼女以外と結婚したと言うのなら、目の前でソレくらいの証明をして諦めさせてやれよ!と、言いたい様だ

「優輝君、キミも兄から勇者の称号を得ているのなら、漢(おとこ)としてキミに想いを寄せてくれた女性に対して態度で示すくらいはしてやれよ!」

優輝の煮え切らない態度にイライラしていたのは、ロード王の弟のレイドも同じだ。彼は「やるべき事はやる!」主義だからだ。あれやこれや悩みすぎて動きの鈍い兄が嫌いだった様に、この場でキスのひとつも出来ない優輝にイラストしている

「ちゅー!チュー!ちゅー!」
「ちゅー!チュー!ちゅー!」

「なっ!?みんなまで!」

周りを囲んでいた民たちも優輝の態度にイラついたのか?キスを要求する合唱が始まった。ミントスもヤケクソ気味に、ソレに乗っかって叫んでいる

「優輝、アンタねぇ(怒)」

ここまで煽られて行動しない優輝に、イライラしたのは有栖も同じだった

「ぐえっ!」

有栖は優輝の下腹部に膝を入れた!痛みに前かがみになった優輝。ソレを利用し有栖は優輝の顔を両手で抑え、静かに目を閉じソッとキスをした

「おー!!」
「ほほう!」

有栖の堂々したキスに、観戦していた民たちが声を挙げる

「待てよ!…分かったよ!!…有栖」

「やっと、その気になったの?私は構わないから証明しちゃいなさいよ」
 

優輝は1度、有栖を引き剥がし仕切り直しで自分から頭を下げ、有栖の唇に自分の唇を重ねた

「ウオオオオアアアアアアアアアッッッッ!!!

巻き上がった歓声
覚悟を決めた行動に照れる優輝と、改めて人前で奪われたキスに赤くなった有栖

「たはー!こりゃもう諦めるしか無いんじゃない?…ミントスさぁ……あっ!?そうだ!ミントス、優輝の愛人になれば良いじゃん!」

「はぁ!?私がポンコツの愛人ですってぇ!?なる訳ないでしょ!」

ミクイの唐突な提案に驚くミントス。だが彼女のプライドが邪魔をして、正妻以外のポジションになれる訳がない!と否定してしまう

「おい!ポンコツは仕方ないとしてもさ、遂に勇者も外されたんかよ!?」

「HAHAHAHAHA(笑)」

ファルバァスに城を破壊されて依頼、クラウンの城下町の民たちは久しぶりに心の底から笑った

「良し!獣神討伐を達成した徳川有栖の為に、今日はパーティを開こう!!」

ロード王の提案で、2人の帰還と獣神討伐を祝いパーティが行われる事になった

和やかな雰囲気で賑やかになる王都クラウンを他所に、古代遺跡前ではアリス達の厳しい戦いが始まろうとしている



続く
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