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化け物たちとの遭遇編
消去の魔女とロード王
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【クラウン城】
アリス達がギルドに報告を終え、1度アルバート工房に帰ることにして帰路に入った頃。クラウン城では【消去の魔女】による獣神ファルバァス討伐のパーティが開かれていた
「なんだか申し訳ないわね。私の為にこんなパーティを開いてもらって…」
「気にする事は無い。それに、復旧作業に入って1週間が過ぎた。そろそろ皆に労(ねぎら)いをする頃合だったからな」
徳川有栖はロード王に感謝を述べていた。その横でミントスに詰め寄られている優輝
「私の事は遊びだったのか?本命に振られたとき用の保険だったのか!?」
ミントスは泣きそうになりながら声を張り上げている。が…
「何を言ってんです?行動を共にしてましたけど、ミントスさんから…もちろん優輝からも愛の告白なんか、した事無かったじゃない」
ミクイが言うように、どちらも告白などした事は無かった。不遇な人生から他人に優しくされた事の無かったミントスが、初めて優しい声を掛けてくれた優輝に密かに好意を寄せていたに過ぎなかった
「付き合ってくれ!とか言ったことも、言われたことも無いハズだろ?」
「でも、でもぉ!」
優輝にすがりつくミントスに、ミクイがアドバイスをする
「そんなに好きなら、優輝のポンコツ具合に愛想尽かして彼女(徳川有栖)に捨てられるまで待てば良いのでは?」
「ソレって結局、愛人という奴なんじゃ…」
割と近い位置に居たアリスは、彼らのやり取りが聞こえていたようで、女々しくすがるミントスに意見した
「あのさぁダークエルフ。私は思い付きや、なんとなくで結婚相手を決めるほど頭の悪い女じゃないよ。見た目はこんなだけど、一応40年間試行錯誤して生きてきたからね」
勇者としては、まだまだ評価の低い優輝だが…それとは違う部分で有栖なりに、彼を高く評価しているようだ
「ぐぬぬ…生きてきた年数なら私の方が…」
「ダラダラと長生きしてたってさぁ…自分にとって大切なモノと出会っておいて行動出来なかったら意味がないのでは?」
「うぅぅぅぅ…お前なんか嫌いだぁ!!」
有栖に完膚無きまでに言い負けたミントスは、半泣き状態でその場から逃げ出してしまった。ソコに王の弟レイドが近寄る
「徳川有栖。結婚したのなら宮廷魔術師にならんか?前王がお前に酷い仕打ちをした事は、俺の耳にも入っている。兄は優し過ぎて少し不安だが今度は俺がそんな風には…」
徳川有栖はイシス王国に2度も攻め込んだベイ・ガウザーの側近で【消去の魔女】と恐れられている存在だ。しかし、彼女自信が人間側に特に敵対感情を持ち合わせて居ないことは、今回の武闘会、2度の獣神討伐のMVP的な活躍をした事で証明されている
それならば伝統あるクラウン城の、お抱え魔術師長に就任してもらうのに相応しいのだが…
「私からも頼みたい。貴女が宮廷に就任してくれれば、この国は…」
ロード王は【消去の魔女】の前で片膝をつき紳士に頼もうとしたのだが…
「はぁ!?ナニを言っているの?こう言っては申し訳ないけど…頭の中お花畑なの?」
「ちょっ!?有栖!流石にソレは言い過ぎだよっ!相手は王様なんだよっ!?」
彼女のロード王への言葉に驚いた優輝は、慌てて有栖を止めようとするが…有栖の目には憎しみの炎が灯っている
「優輝。アンタは知らないだろうけどさ…25年前、地球からいきなりこの世界に召喚されて、前王から受けた仕打ちは有り得ないモノだったんだよ…」
その説明をする有栖の顔が、苦痛と怒りを同時に表現している
「でも!悪かったのは前王であって、その時のロード王が何かした訳では無いんだろ?」
優輝のその言葉にロード王は言葉を失う
「そうだよ優輝。ロードは何もしなかった…私は前王に兵器として酷使されていた
そんな私に助け舟の1度も出さなかった…最悪なのは単身で魔族の拠点に陽動目的で突撃させられた。九死に一生を得て生き延びたけど、私は傷を癒す為の休みも貰えずに再び戦場に送り込まれた…」
「だからソレはロード王の責任じゃ…」
「ロードは!そんな扱いをされている私を目の前で見ていて、たった1度の救いも与えてくれなかった!
第1騎士団団長の立場でありながら!彼は前王に意見する事も無く、人外の扱いをされている私を、見て見ぬふりをしたんだぁっ!!そんな事をしておいて、年数が経ったから仲直りしたいんだですか?…ふざけないでよねぇ!!」
話しながら当時の事を鮮明に思い出してしまった有栖の目は、親の仇を見る様な眼差しでロード王を直視している
こんなセリフを彼女が空気も裂けよ!と言わんばかりに声を張り上げている姿を見た者など、今まで誰も居なかっただろう
「あの時…何も出来なかった自分を許して欲しい…などとは言わぬ!ただ、心から謝罪する。本当に済まなかった!」
ロードは有栖に対し深々と頭を下げた。周りには当時の事を知らぬ者ばかりで、辺りは静寂に包まれた
「………はあぁ…ゴメンで済んだら警察は要らないんだよ!」
「はっ!?警察!?」
レイドもキングスも彼女の言った言葉は初めて聞く物だった
「有栖…ソレはこの世界の人には意味が分からないって…」
「優輝……差し当ってはさ、アンタのメンタル強化が必要ね。私を嫁にめとり、私の旦那である事に恥じない自分になる!
ってお互いの親の前で宣言したよね!【消去の魔女】の旦那様なんだから、有言実行してもらうからね」
興奮している有栖に対して、迂闊に近寄れる者、意見出来る者は居ない!と思われたが…ズカズカ近寄るミクイ
「有栖さん。貴方の気持ち、分かりました。それで、貴方はこれからどうするつもり?一応、私とそのミントスは優輝の護衛ですから、優輝が貴方と結婚しようが私たちは彼の護衛を続ける!」
その若さでアサシンのマスタークラスまで辿り着いたミクイだからこそ、恐ろしい覇気をダダ漏れさせている有栖に質問する事が出来た
「そうね…とりあえずアレクス達に報告に行く。それから、優輝をベイに鍛えてもらうわ」
「そうか、フュールさん達に報告して、その後ベイ・ガウザーに……ってえぇっ!?臥龍族のドレイクと激戦をした彼の元で…修行!?」
ベイ・ガウザーはイシス防衛戦で、ドレイク以外には単騎で無双していた魔族の将だ
「ポンコツの優輝の人生もここまでみたいね(笑)」
「こんな内容なのに笑えるなんて…アサシンのミクイさんだったかしら?貴方も大概の人生を送って来たのね(笑)」
常軌を逸した苛烈な人生を送った有栖とミクイ。2人だけが、こんな状況でも笑いあっていた
「とほほ…覚悟を決めるか(汗)それで、ミントスはどうするんだ?」
「えっ!?…あの…私のサポートが無かったら死んじゃうでしょうが!もちろん、ついて行くわよ!!」
半ばヤケクソ気味にミントスは、優輝とミクイと有栖と共に【魔剣の将アレクス】が統治する城に向かう事にした
アレクス城には、ヒイロとテルアの娘で、時期魔王となるメイビーが大事に育てられている。【異世界勇者】優輝の運命は!?
続く
アリス達がギルドに報告を終え、1度アルバート工房に帰ることにして帰路に入った頃。クラウン城では【消去の魔女】による獣神ファルバァス討伐のパーティが開かれていた
「なんだか申し訳ないわね。私の為にこんなパーティを開いてもらって…」
「気にする事は無い。それに、復旧作業に入って1週間が過ぎた。そろそろ皆に労(ねぎら)いをする頃合だったからな」
徳川有栖はロード王に感謝を述べていた。その横でミントスに詰め寄られている優輝
「私の事は遊びだったのか?本命に振られたとき用の保険だったのか!?」
ミントスは泣きそうになりながら声を張り上げている。が…
「何を言ってんです?行動を共にしてましたけど、ミントスさんから…もちろん優輝からも愛の告白なんか、した事無かったじゃない」
ミクイが言うように、どちらも告白などした事は無かった。不遇な人生から他人に優しくされた事の無かったミントスが、初めて優しい声を掛けてくれた優輝に密かに好意を寄せていたに過ぎなかった
「付き合ってくれ!とか言ったことも、言われたことも無いハズだろ?」
「でも、でもぉ!」
優輝にすがりつくミントスに、ミクイがアドバイスをする
「そんなに好きなら、優輝のポンコツ具合に愛想尽かして彼女(徳川有栖)に捨てられるまで待てば良いのでは?」
「ソレって結局、愛人という奴なんじゃ…」
割と近い位置に居たアリスは、彼らのやり取りが聞こえていたようで、女々しくすがるミントスに意見した
「あのさぁダークエルフ。私は思い付きや、なんとなくで結婚相手を決めるほど頭の悪い女じゃないよ。見た目はこんなだけど、一応40年間試行錯誤して生きてきたからね」
勇者としては、まだまだ評価の低い優輝だが…それとは違う部分で有栖なりに、彼を高く評価しているようだ
「ぐぬぬ…生きてきた年数なら私の方が…」
「ダラダラと長生きしてたってさぁ…自分にとって大切なモノと出会っておいて行動出来なかったら意味がないのでは?」
「うぅぅぅぅ…お前なんか嫌いだぁ!!」
有栖に完膚無きまでに言い負けたミントスは、半泣き状態でその場から逃げ出してしまった。ソコに王の弟レイドが近寄る
「徳川有栖。結婚したのなら宮廷魔術師にならんか?前王がお前に酷い仕打ちをした事は、俺の耳にも入っている。兄は優し過ぎて少し不安だが今度は俺がそんな風には…」
徳川有栖はイシス王国に2度も攻め込んだベイ・ガウザーの側近で【消去の魔女】と恐れられている存在だ。しかし、彼女自信が人間側に特に敵対感情を持ち合わせて居ないことは、今回の武闘会、2度の獣神討伐のMVP的な活躍をした事で証明されている
それならば伝統あるクラウン城の、お抱え魔術師長に就任してもらうのに相応しいのだが…
「私からも頼みたい。貴女が宮廷に就任してくれれば、この国は…」
ロード王は【消去の魔女】の前で片膝をつき紳士に頼もうとしたのだが…
「はぁ!?ナニを言っているの?こう言っては申し訳ないけど…頭の中お花畑なの?」
「ちょっ!?有栖!流石にソレは言い過ぎだよっ!相手は王様なんだよっ!?」
彼女のロード王への言葉に驚いた優輝は、慌てて有栖を止めようとするが…有栖の目には憎しみの炎が灯っている
「優輝。アンタは知らないだろうけどさ…25年前、地球からいきなりこの世界に召喚されて、前王から受けた仕打ちは有り得ないモノだったんだよ…」
その説明をする有栖の顔が、苦痛と怒りを同時に表現している
「でも!悪かったのは前王であって、その時のロード王が何かした訳では無いんだろ?」
優輝のその言葉にロード王は言葉を失う
「そうだよ優輝。ロードは何もしなかった…私は前王に兵器として酷使されていた
そんな私に助け舟の1度も出さなかった…最悪なのは単身で魔族の拠点に陽動目的で突撃させられた。九死に一生を得て生き延びたけど、私は傷を癒す為の休みも貰えずに再び戦場に送り込まれた…」
「だからソレはロード王の責任じゃ…」
「ロードは!そんな扱いをされている私を目の前で見ていて、たった1度の救いも与えてくれなかった!
第1騎士団団長の立場でありながら!彼は前王に意見する事も無く、人外の扱いをされている私を、見て見ぬふりをしたんだぁっ!!そんな事をしておいて、年数が経ったから仲直りしたいんだですか?…ふざけないでよねぇ!!」
話しながら当時の事を鮮明に思い出してしまった有栖の目は、親の仇を見る様な眼差しでロード王を直視している
こんなセリフを彼女が空気も裂けよ!と言わんばかりに声を張り上げている姿を見た者など、今まで誰も居なかっただろう
「あの時…何も出来なかった自分を許して欲しい…などとは言わぬ!ただ、心から謝罪する。本当に済まなかった!」
ロードは有栖に対し深々と頭を下げた。周りには当時の事を知らぬ者ばかりで、辺りは静寂に包まれた
「………はあぁ…ゴメンで済んだら警察は要らないんだよ!」
「はっ!?警察!?」
レイドもキングスも彼女の言った言葉は初めて聞く物だった
「有栖…ソレはこの世界の人には意味が分からないって…」
「優輝……差し当ってはさ、アンタのメンタル強化が必要ね。私を嫁にめとり、私の旦那である事に恥じない自分になる!
ってお互いの親の前で宣言したよね!【消去の魔女】の旦那様なんだから、有言実行してもらうからね」
興奮している有栖に対して、迂闊に近寄れる者、意見出来る者は居ない!と思われたが…ズカズカ近寄るミクイ
「有栖さん。貴方の気持ち、分かりました。それで、貴方はこれからどうするつもり?一応、私とそのミントスは優輝の護衛ですから、優輝が貴方と結婚しようが私たちは彼の護衛を続ける!」
その若さでアサシンのマスタークラスまで辿り着いたミクイだからこそ、恐ろしい覇気をダダ漏れさせている有栖に質問する事が出来た
「そうね…とりあえずアレクス達に報告に行く。それから、優輝をベイに鍛えてもらうわ」
「そうか、フュールさん達に報告して、その後ベイ・ガウザーに……ってえぇっ!?臥龍族のドレイクと激戦をした彼の元で…修行!?」
ベイ・ガウザーはイシス防衛戦で、ドレイク以外には単騎で無双していた魔族の将だ
「ポンコツの優輝の人生もここまでみたいね(笑)」
「こんな内容なのに笑えるなんて…アサシンのミクイさんだったかしら?貴方も大概の人生を送って来たのね(笑)」
常軌を逸した苛烈な人生を送った有栖とミクイ。2人だけが、こんな状況でも笑いあっていた
「とほほ…覚悟を決めるか(汗)それで、ミントスはどうするんだ?」
「えっ!?…あの…私のサポートが無かったら死んじゃうでしょうが!もちろん、ついて行くわよ!!」
半ばヤケクソ気味にミントスは、優輝とミクイと有栖と共に【魔剣の将アレクス】が統治する城に向かう事にした
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