ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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化け物たちとの遭遇編

覚悟を決める乙女たち

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【一軒家の裏手】
「サーシャ、何か感じるかい?」

一軒家の周辺を調べるカルーアとサーシャ
見知らぬ空き家で1夜を過ごすので、念入りに安全の確認をしている

「霊魂の残り香?みたいな匂いはしますけど…あっ!?あそこに墓地がありますの!」

サーシャが指さした場所に、一軒家と林の間に隠れる様に10数個の墓石が集まる場所があった。2人はそこへ移動した

「墓碑には…それぞれに名前が刻まれていたようだね。月日が経ちすぎているからかな?正確に読むのは難しいみたいだね」

標高の高いエルドラ山脈の頂上にある墓碑は、何年も強い雨風にあたられて刻んだハズの名前が掠れていて、正確に読み取るのは難しかった

「お姉様、これだけキッチリと読めますの」

「そうだね……刻み直した跡があるね。誰かが掠れた文字を書き直したのかな?どれ…
【愛するミゼラブル ココに眠る】か…」
 

「誰かの奥さんの名前かも?ですの。その人と結婚してた旦那さんが刻んだのかも知れませんの……迷うこと無くおやすみなさいですの」

サーシャは天使族の霊力を指に集め、ココに眠るハズの魂に言葉を送った。その横でカルーアもその墓碑に手を合わせた

「もし願えるなら、わたしとヒイロの行く末をお見届けください」

愛し合って亡くなったであろう者たちに、カルーアとサーシャは手を合わせた



【山頂の岩場】
「アリスお姉様。陽が沈みかけてます。辺りが見えにくくなってきましたので、足元にはご注意くださいね」

一軒家から数百メートル奥へ進むと、森林の植物は姿を消して岩だらけの場所に変わっていた

「うん。大丈夫だよぉ……ここは崖になってるみたいぃ。もしかしたら、この断崖にぃ、探しに来たハイミスリルが派生してるかもねぇ!」

「アリスお姉様。暗くなった断崖絶壁に採取に行くのは危険ですわ。サーシャちゃんの晩御飯も出来ているでしょうし、ここの場所は覚えておいてまた明日みんなで来ましょう」

身軽さを誇る獣人族のアリスは、足場の悪さなどあまり警戒しないので、彼女を慕っているエリエスは心配させられてしまう

「そうだねぇ。じゃあ、かえりましょ……誰ぇ!?」

「えっ!?」

引き返そうとしたアリスが何かの存在を感じたらしく、突然周囲の警戒を始めた
エリエスは超人類としてズバ抜けた身体能力をしているので、視力や聴力などは凄まじいモノがあるだが、嗅覚だけは獣人族のアリスのソレには及ばないようだ

「敵はどこに!?」

全く感知できないエリエスは、アリスの視線の先に集中した。が、それが隙を産んでしまう

「バゴオッ!」2人の足元から様々な骨が吹き出し、何かの形を形成していく

「コレは魔物の骨!?死してなお襲ってくるというのですか!?」

エリエスはスケルトンモンスター達と戦う為に、エクスカリバーを構えたのだが…

「エリエスちゃん!後ろだよぉ!」

「嘘っ!?」

スケルトンモンスターを囮にしたのか?岩場の陰に潜んでいたゴーストが、隙を突いてエリエスを強襲する

「うぼあぁぁー」
ゴーストはエリエスに対して、断末魔の様な奇声を浴びせかける

「くっ!…舐めるなっ……なっ!?身体が…動かない!?」

ゴーストの奇声を浴びたエリエスは、理由が分からないが身体の自由を奪われた様だ

「エリエスちゃん、危ないぃ!wryyyyyyyyyy!」

その場で動けなくなったエリエスに、スケルトンモンスターが襲いかかろうとしているのを見たアリスは、イッキに獣人(ヴォィド)化して身体能力を上げ、スケルトンモンスターに斬りかかった

「どうして動かないの?」

「エリエス!貴方の血液が凝固させられているわ。彼女の奇声は呪怨の能力を持ち合わせているみたいね。メイジ・ゴーストという奴ね」

「ただのゴーストと油断してしまったわ。アリスお姉様ひとりでゴーストとスケルトンモンスターの相手をするのは危険過ぎます…早く助けに行かないと…」

「待ってて。呪怨の術式を解読するから。そうすれば打ち破れるから、少し待ってください」

「早めに頼みます、ロマーニャ!」

「フシュシュシュ…」

アリスを取り囲むスケルトンモンスター。それらを指揮するゴースト

(敵の意識が全部アタシに向いてる…アタシが何とか出来れば、エリエスちゃんを助けられる。もし出来なかったら…)

「ううん!出来なかったら。なんて考えてる場合じゃなあぃ!何が何でもやってやるんだからぁ!」

アリスは10数体のスケルトンモンスターと、それらを指揮するゴーストとひとりで戦う覚悟を決めた!



【ベイ城の休憩室】
ベイに求婚されて見つめ返すアナンナ。突然の話に頭の整理に時間を要した

「あの…とても光栄なお話なのですが…お聞きしても宜しいでしょうか?」

「あぁもちろんだ。何でも聞いてくれ」

アナンナは周囲を見渡すように目線を泳がせながら、何を質問すべきかを考えた

「……えーと、何故私だったのでしょうか?…私のドコに好意を抱いて頂けたのでしょうか?この城の主である立派なベイ様とは違い、私は天涯孤独の身の生まれもよく分からない女なのですよ?」

「身分や生まれなどで相手を好きになるほど、俺は愚かではない!何と言うか…お前のひたむきで真っ直ぐなその眼に興味を抱いた…
あと…お前の顔や声、物静かだが強い意志を持っているところに惚れた」

ベイも生まれて初めての告白をしているので、いつもの雄々しい姿からかけ離れた挙動になっていた

「そうなのですね…ありがとうございます!」

「その、なんだ…あまりにも突然だったからな。返事は急がなくても良いのだぞ?」

ベイは「男女の惚れた腫れた」の話になど縁のない生活をしていたので、全くこんな空気には慣れていないのだが彼なりにアナンナに気を使っていた

「………………身に余る光栄です。ベイ様からの寵愛を受けられるなんて…嬉しさのあまり気を失いそうでございます♪」
 

そんな真剣なベイの顔を見つめ、アナンナもまた覚悟を決め彼の告白を受け入れるのだった



続く
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