ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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化け物たちとの遭遇編

暗殺者の逆鱗

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【ベイ城 中庭】
城内では、優輝を使い有栖殺害を企てて逃亡した魔界の暗殺者フランクリンの捜索に躍起になっていた

「アナンナ。仕掛けておいた発信魔法で奴の位置を捉えられるか?」

「お待ちください貴方様、今すぐに………えっ!?どうして?見つかりません!」

地下牢に入れる際にフランクリンの体内に埋め込んでいた発信魔法が機能しておらず、彼の位置が分からなくなっていた

「小ズル賢い事が得意なヤツめ…有栖よ。お前の探知魔法で不審な動き、または城外に脱出を図っている者を探知出来んのか?」

「今やってる……けど…怪しい者は探知出来ない…どういう事なの!?」

【消去の魔女】徳川有栖に1度、目を付けられて逃げおおせる事は不可能と思われていたが…魔界から来た暗殺者のフランクリンを捉えられない。するとタイコンデロガが意見する

「直接聞いた訳ではないが、奴の部隊員から、奴は肉体を無機質化する能力があるらしい」

「無機質化!?それって生体反応を消せられるって事よね?…それなら私の探知魔法に引っかからないのも頷(うなず)けるわ」

「そんな奥の手を隠し持っていたか…仕方ない人海戦術でしらみ潰しに…」

流石の高性能を誇る有栖の探知魔法でも無機物(岩や建造物など)は対象外だ。焦る有栖だがその時、何かを察知したようだ

「待って!この女性は……ミクイちゃん!何かの後をつける様な動きをしている。もしかして、フランクリンを追っているの?」

「ミクイのアサシンスキルは凄まじいんだ!ミクイならフランクリンを捉えていてもおかしくないよ」

今まで同じパーティを組んでいたミントスは、ミクイの常識外れのスキルを何度も見ていた。彼女なら無機質化したフランクリンをも捉えているのかも知れない
早速ベイは有栖達を引き連れてフランクリンを見つけようとした。が…

「あっ!……ぐぼっ!かはっ!」

突然、倒れていた優輝が苦しみ出した。嫁の有栖は思わず駆け寄り様子を見た

「嘘っ!?毒じゃない!さっきは何ともなかったのに、どういう事なの?取り敢えず中和しないと!」

優輝の容態の急変に焦った有栖は、ロクにしっかり調べずに回復魔法を掛けてしまう

「待ってください有栖様!ソレは毒ではなく呪いかも知れません!」

慌ててホーネットが有栖を止めようとしたが…間に合わなかった!優輝の身体が紫色に変色していく

「ナニこれ?いったい何なの?」

「魔法を触媒に状態異常を掛ける呪いかと思います。以前フランクリンと同じ任務についた時、彼が捕虜への尋問にその効果のある魔道具を使用しているのを見ました!」

「そんなのがあるの!?…くそっ、迂闊だった!魔法力に反応して起動するタイプか!焦ってしまったわ」
  

流石の有栖も旦那の優輝の一大事を目の当たりにしては、思わず冷静さを欠いてしまったようだ

「有栖とアナンナはここに残り優輝の面倒を見ろ。タイコンデロガとホーネットは俺に続け!」

「待ってベイ!それじゃ…」

「構わん!!今の俺は何人がかりでも止められはせん!!」

既にタイコンデロガとホーネットを信用してはいるが、操作系や憑依系の術などを喰らった場合、ベイが1対3の状況に置かされてしまう事を危惧した有栖だが…フランクリンの行いに怒り心頭のベイには関係ないようだ



【離れの倉庫内】
「良し。水と食料を確保した…奴ら俺を城外に逃がさないように、門や塀の周辺に集まってるな…ここで回復しながら機会を待って、奴らの集中力が切れてから脱出だ…」

敢えてフランクリンはスグには逃げ出さず、城から割と近い食料倉庫に身を隠し、ほとぼりが冷めるまで長期戦をする気だ

「…にしても、あの甘ちゃん野郎のお陰で助かったぜ。だが、奥の手を使いまくった分は回復する時間が要るけどな…ここなら誰にも見つからねーだろ…」

誰も居ない食料庫でしばらく身を隠すことを決めたフランクリンだったが…

「カツーン…カツーン!」

そう思った直後、この倉庫に入って来る足音が聞こえてきた。再び慎重に姿と気配を完全消去するフランクリン
(嘘だろ!?…いや!このスキルを発動している時に、俺を見付けられる奴なんて居やしねー。出て行くまでやり過ごせば良いんだ…)


「ぼひゅっ!………パーン!」
小さ目の打ち上げ花火のような音が響いた

「敵を発見した時に使う信号弾を撃ったよ。間もなくベイや有栖達が此処にやって来るよ…観念するんだね悪党!」
 

悠長に歩いて近付いて来たのはアサシンマスターのミクイだ。彼女はフランクリンを完全に捉えていたようだ

「お前は…あの甘ちゃん野郎の愛人!…まさか!お前には俺を見付けられるのか!?…いや、有り得ねー!あんなポンコツ野郎の仲間に、そんなハイスペックな奴が居るはずが…」

【消去の魔女 徳川有栖】は別格としても、甘ちゃんの優輝の仲間まで高性能な奴が居るとは信じられないフランクリン

「確かに優輝はポンコツ勇者さ。1人前になるには何年付き合わされるやら分かったもんじゃないよ。でもね…アイツは私の希望なんだ!こんな暗闇みたいな時代にミクイの心を明るく照らしてくれる太陽なんだ。だから…ミクイは、アイツに刃(ヤイバ)を向ける者は絶対に許さないっ!」
 

そう言い終わる頃ミクイは暗殺者の顔をフランクリンに向け、慈悲の無い笑みを浮かべた

「ま、待ってくれ!お前ほどの能力なら、もっと良い雇い主を紹介してやれる!金も地位もずっと上の……ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「残念だけど…ミクイはそういうモノには全く興味無いんだよ。優輝に害なす敵はミクイが全て排除するんだ…」

「…まさか…地上に俺以上のアサシンが居る…なんて…ぐはっ…」

ミクイは暗殺用ナイフにベットリ付いた朱色の液体を、懐から出した布で丁寧に拭き取った

床には首筋から朱色の液体を大量に流しながら倒れている、かつてフランクリンだった物体が転がっていた



【2時間後のメインホール】
「ベイ様とアナンナ様おめでとうございます!」
「有栖様、優輝様バンザーイ!」
「優輝、緊張してんじゃねー!」
「アナンナ…綺麗だぞ!」
「いやぁ、めでたいなぁ!!」

フランクリンの事件も終わり憂いを排除したベイ城では【ベイとアナンナ】【有栖と優輝】のダブル結婚式が行われようとしていた

4人を取り囲むこの城で働く大勢の者たちが、彼らを祝福する為に集まっている
魔界の者達が来てからの騒動は午前中に終わり、その日の午後からのベイ城は、城内の者が全員集まり彼らの結婚を祝う賑やかな雰囲気に包まれていた



続く
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