ようこそ幼い嫁候補たち ②

龍之介21時

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憎奪戦争編

運命(めぐりあわせ)

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【ハチマン砦の攻防戦】
敵味方が激しく入れ乱れて戦闘を繰り広げている中、西から現れた男女2人組を見て足を止めるレキシントン

「ま、まさか!?あの2人は……」

「どうしたレキシントン…知り合いか?」

地下に拡がる魔界から来た彼らに、地上での知り合いなど本来は居ないハズなので…狼魔人(ランドルフ)も彼女の知る者が誰だかスグに理解した

「さっき言ってた買い出しの帰りに、手助けしてくれた連中か?」

「う、うん。そうだよ…職人の男と小さな女の子だから戦場で会うことになるとは思わなかったよ…参ったな…彼らとは戦いたくなかったんだけどね…」

レキシントンがヒイロとカルーアに気が付いたように2人も先程、自然公園で会った女性がハチマン砦を攻めている者と知り驚く

「なんて事だよ…まさか、わたし達が魔獣族の手助けをしてしまったなんてね…」

「ほんの僅かな時間の触れ合いだったが…彼女から悪意は感じなかったのに…なのに、戦わなきゃならんのか…」


ヘルメスの東の位置にあたる【ハチマン砦】が魔獣族の拠点となれば、カルーアとヒイロ達が住むヘルメスが驚異に晒され、彼らの日常が危険に晒される事になるのは明白だ

「まさか…地上での唯一の知り合いが戦闘相手になっちまうなんてなぁ……だが!俺たちには成し遂げなきゃならねー事がある!分かるよな?レキシントン…」

狼魔人(ランドルフ)はレキシントンが義理人情を大切にする優しい女だと知っているからこそ、敢えて戦闘に向き合わせるような言い方をした

「分かってるよ…嫌だけどさ、手を抜いたりはしない!コレが運命(めぐりあわせ)ってヤツなんだろうね!!」
 

覚悟を決めたレキシントンは大きな水球を精製し、カルーア目掛けて打ち出した!

「風よ!迫る脅威を撃ち砕けっ!」

カルーアの得意な系列は風魔法である。雷系の魔法を使う彼女だが、雷は風属性のひとつなのだ
飛んでくる大きな水球に、風の刃を弾丸の様に固めてぶつけた

「バアァンッ!!」
水球と風弾は激突し水球を破裂させたが、レキシントンが水の飛沫(ひまつ)に魔力を注ぐと…細かくなった水が再びカルーアを襲った

「ドドドドドドドッ!」
「きゃああああぁぁ!!」

細かくなった水弾が何10発と、カルーアの身体に直撃した…駆け出すヒイロ

「カルーア!?」

慌てて寄り添ったヒイロ

「ふひゅう…あ、危なかったよ…着弾する直前に雷撃を纏(まと)って防御する事ができたから、何とか軽傷ですんだよ」

とんでもない大ダメージを喰らわされた様に見えたが、瞬時の発想でダメージは最小に抑えられた。ヒイロは予想を遥かに上回る、カルーアの戦闘技術の向上を目の当たりにし驚いている

「嘘…大して効いてない!?」

「あのエルフ、見た目は若いがそうとう高いレベルの魔法使いのようだな。アイツの魔法防御を突き抜けるには威力が足りなかった様だな…」

戦闘巧者ランドルフは、今の魔法の撃ち合いの結果を瞬時に正しく理解していた

「レキシントン…俺に任せとけ。ヴォィドルフ共!あの2人に攻撃を集中しろ!俺も続く!エルフがいかに強くとも護衛は1人しかいねー!近付いちまえば脆いだろうぜ。かかれっ!!」

どれだけカルーアの魔法が強大でも、狼魔人(ランドルフ)の様な超接近タイプに近付かれたらヒイロ1人では勝ち目は無い!ランドルフはソコを突いて撃破する作戦を、素早く導き出し動き出した。が…

「はーっ!どっこいしょー!!」

まるで演歌の掛け声のような咆哮と共に、大きな岩がヴォィドルフ3匹に襲いかかった

「ヤーレンソーランっ!」

更に掛け声と共に何かを投げつけたカナタン
ソレは爆弾だった!
紙一重で岩を回避したヴォィドルフ達だったが…大きなその岩は爆弾により破壊され…飛び散る無数の岩の破片が彼らを襲った

「グキャン!キャン!」
「アオーン!」

爆弾で吹き飛ばされた、高速で飛んできた岩の破片は回避できず…ヴォィドルフ達に多数ヒットし大ダメージを与えた

「くっ!なんてこった!更なる増援だと!?」
「分が悪くなったね、撤退しようよ」

「ぬぅぅ…この俺が地上のヤツら相手に、2度も撤退だと!?また、戦力増強しなきゃなんねーじゃねーかっ!!…はぁ、仕方ねーな!ずらかるぜ。狼たち!撤退する時間を稼いでくれ!」

旗色が悪くなったランドルフ達は、素早く撤退を選択した。まだ20匹ほど居る強化された狼達をけしかけ、撤退する時間を稼がせた

……………………………………………

「カルーア大丈夫だったか?」

「うん。こんなのはカスリ傷だよ…けどさ、ほら見てよ…せっかく買ってもらった服が…」
 

昨日、街の商店街でヒイロとシャルルに見立ててもらい買った服が、レキシントンの水弾でビリビリに破かれていた

「狼達を退けたら、帰りに服屋に寄って同じ服を買い直してやるよ!」

「そういう事だね、お2人さん!まずは襲ってくる狼たちを追い払おうよ!」

横目で2人を見ていたマリリンが、向かってくる狼たちを撃退しに向かった

「カルーア、お前はソコに居ろ!アレくらいなら俺たちで撃退してくるからな」

「うん、分かったよ。無理はしないでね」
「任せとけ!」

ヒイロもマリリンに続き、カナタンと合流して3人で、狼たち11匹の相手をしていた

「ふぅー、今回はこれで終わりかな?……ん?アレは……マズイね。助けにいかないと!」

先程ランドルフが、2階のテラスからボーガンを撃ってくるジャンナルを倒す為に撃ち込んだ炎を纏(まと)った矢が、砦に引火し大きな炎が立ち込めていた
戦場の周辺にはレキシントンが、使っていたと思われる水系以外の魔法の痕跡が無い
ソレは砦の守備隊側に、火を鎮火できる魔法使いが居ない事をカルーアに教えていた。燃え盛る火を消化する為に急いで砦に向かうカルーア



【ヘルメスからの増援】
「姉さん、砦が燃えているわ!」
「……敵は…狼だけ?魔人たちは追い返したのかしら?それとも砦の内部に居る?ん、何匹かコチラに来るわよ!」

「リキュールちゃん。私たちが狼を倒すから、貴女は安全な場所で援護してちょうだい!」

リキュールがカルーアと同程度の魔法を使えると言ってはいたが…直(じか)にリキュールの戦闘を見たことは無いので、安全策を取り彼女を安全な位置に配置した

「砦が燃えている……あっ!砦の中に誰かの気配が!……中に居るのはカルーア姉さん!?…もしかしたら、中で魔人と交戦している?」
 

(姉さんが死んだりしたらヒイロが悲しむ。そしたら姉さんと同じ見た目のわたしに心を開いてくれなくなるかも?…助けに行かなきゃ)

リキュールは最悪の事態を想定し、カルーアの安否を知るため砦に向かい駆け出した

砦で再会するカルーアとリキュールにこの先訪れる運命(めぐりあわせ)を、今はまだ誰も知るハズがなかった



続く
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