ようこそ幼い嫁候補たち ③

龍之介21時

文字の大きさ
15 / 135
憎奪戦争編

令嬢はまだまだ未熟者

しおりを挟む
マリニウム地方では騒動の起こる前兆状態にある中で、珍しく平和なひと時を過ごしているアルバート家…更に別の日々を過ごす2人がいる

【ベイ城西方向数10km地点】
「ふひゅー……やった!やりましたよリキュール!遂にワタシ1人で魔物を討伐しましたよ♪」

魔族のベイが支配するエリアに立ち入らない様に、かなり西側の森林帯を馬車でゆっくり南下してイシス王国を目指しているリキュールとケチュア

「ふーん、良かったね。おめっとさん…」

「ちょっとー!ワタシにしては大進歩なのですよ!生まれて初めて誰の手も借りずに、魔物を1体倒しましたのよ!もう少し褒めてくれても良いんじゃないですかッ!?」
 

「そうは言うけどさ…群れから離れて単独行動してて、弱っていた野生のウルフを1匹じゃん?言ってみればさ…冒険者入門の為の入り口にようやく立てた。って程度なんだよ!?」

マリニウム地方のスズカの街の横にあたる今は亡き領土を統べていた公爵のひとり娘が、ようやくウルフ1体をひとりで倒せた。その程度に過ぎないのだが…それでも彼女にしては大進歩だったのだ

「わ、分かっていますわ…イシス王国に面倒事を持ち込もうとしている何も持たない元公女が、冒険者の真似ごとが出来た程度だ。って事は…でも、でも!褒めてくれたって良いでしょ!」

「はいはい、お疲れ様。頑張ったね、エラい、偉いよ。おーヨシヨシ……これで良い?」

「むきーっ!全然気持ちがこもっていませんわー!!こんなにアチコチ怪我しても頑張ったんですのよー!」

「はいはい…怪我を直してあげるからソコに座りなよ。魔法の治療が終わるまで、この紅茶と干し肉食べてて良いからさ」

「うー…お願いします…」

やや不貞腐(ふてくさ)れているが、怪我を治してもらわないと今後厳しくなるのは理解しているので、リキュールの前に座り手渡された紅茶と干し肉に手を付け始めた


「はい。終わったよ!……くんくん…ケチュア…少し臭うよ…」

「ちょっとぉ!?匂いを嗅がないでもらえます?シャワーも浴びれずに移動して戦ってるのですから、匂ってきても仕方ないじゃないのっ!」

「じっとしてなよ。タオル借りるよ…タオルに召喚した水を含ませて……ほら、拭いてあげるから鎧を脱ぎなよ」

口の悪いリキュールだが、ケチュアに対して非常に面倒見が良く彼女に接していた
(アルバート家に居た頃は…確かに恵まれていた環境だったけど…ここまでは開放的にはなれなかったんだよなぁ…)

「あっ!リキュール。アソコに小さな川が流れてますわ!その途中に池のように水が溜まっていますよ?久しぶりに水浴び出来ますわぁ!」

「あっ!?ちょっと待ってケチュア!良く調べずに迂闊に入ると危険だよ!」

「ドボンっ!」
何度も戦い全身汗まみれになっていたケチュア。リキュールに言われなくても発汗による体臭が気になっていた彼女は、後先考えずに池に飛び込んだ!

「何よリキュール。危険って何が危険だと言うのですか?川の水溜まりなのですから、水辺の凶暴な魔物も居ないでしょう?」
 

「はぁ…やれやれ。本当にケチュアは何も知らないお嬢様だね……魔物は居なくても、生き物の血を狙う吸血ヒルの生息地だったらどうするのさ?取り敢えず1度出なよ。見てあげるからさ」

「えっ…吸血ヒル?」

と言われても、今回が初めての旅で冒険でもあるケチュアは【吸血ヒル】という単語にさえスグには反応出来なかった

「ああっ!?いやー!いやいやいやいや!リキュール~見てください!お願いよぉ!」

「やれやれ…ケチュアはどんだけ、お子様なのさ。ほら、両手上げて脚開きなよ。どれどれ…」

ケチュアは素直に手脚を開き、リキュールに全身のチェックをしてもらっている

「あっ!やっぱり…張り付かれてるよ」
「いっやー!何とか、何とかしてください!」

「ほいほい、動かないでよ…えいっ!」

リキュールは血を吸うためにケチュアの肌に直接張り付いている吸血ヒルに触れ、軽く電撃を流し1匹ずつ殺して剥がした

……………………………………………

「うぅ……せっかく水浴びして身体を綺麗に出来ると思いましたのに…それに、タオルや石鹸まで有りますのに…残念ですわ。残念ですわぁ!」

「いやいやいや。せっかくだから水浴びしようよ。私だって汗を流したいしさ」

「えっ!?でも、どうやって?」

リキュールは池の水に手首まで入れて【雷光柱(ジャムルエッジ)】の呪文を唱えた
水中を走る電撃。発光する水溜まり。小さな貯め池なので、中にいる小さな生命体には十分致死量の電撃だった

「あっ!小魚が浮いてきましたわ」

「これで吸血ヒルに張り付かれたり、別の凶暴な魚に襲われる心配は無くなったよ。さぁ、水浴びと洒落こもうじゃないか!」
 

そう言うとリキュールは服を脱ぎだし…全裸になるとケチュアの手首を掴み、池へと誘うのだが…

「待ってくださいリキュールさん!ここは外なのですよ!お外で全裸になるなんて、恥ずかし過ぎてワタシ死んじゃいそうですわ!」

「ナニ言ってんのさ。裸を見られたくらいじゃ死にやしないよ。さぁ、さぁ!タオルに石鹸まで持ってるんでしょ?綺麗にしないともったいないよ?」

「あうう…数日前までは、ナイン家の令嬢だったのに…誰に見られるか分からない外で、真っ裸になるだなんて…野蛮な男に襲われたら、リキュールさん。助けてくださいよ」

「分かってるって!ケチュアには散々お世話になってるんだからね!」

屈託のないリキュールの笑顔を魅せられたケチュアは、もうジタバタするのはやめて彼女と共に水浴びを始めた

……………………………………………

「ふぅ、さっぱりしたねケチュア!」

「えぇ…そうですわね…」

「ん?どうかしたかい?」

「あ、いえね。お外で全裸で水浴びなんて恥知らずな事!…っと思っていたのですが…いざ入ってみましたら、開放的な気持ち良さに…なんだかワタシ、ハマってしまいそうなんです♪」

うつむきながら恥ずかしそうにカミングアウトするケチュアがリキュールには、本当に可愛らしく見えたのだ

「アッハッハッハッハッ!それは良かったよ。私もケチュアの綺麗な素肌を堪能できて満足だよ(笑)」

「んもう!やっぱりジロジロ見てたんじゃないですかっ!責任取ってもらいますわよ!」

「クスクスクス(笑)あぁ良いよ!亡き両親の仇が討てたなら、私がケチュアと結婚してあげようか?もちろんケチュアが良ければ、だけどね?(笑)」

「け、け、け…結婚ですか!?ワタシと貴女は女性同士なのですよ?そんなの…イケませんわ!!」

「そうなのかい?…わたしは愛があれば同性でも構わないと思うけどね♪」

確かに同性のカップルも珍しくはないが、絶えない戦乱の中で人口は減りつつあるので、道徳的にはあまり歓迎されてはいない
それよりも、ケチュアの反応のひとつひとつが可愛らしく見えてたまらないので、リキュールは生まれて初めて心から楽しいと思える日々を過ごしていた



続く
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...