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憎奪戦争編
令嬢はまだまだ未熟者
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マリニウム地方では騒動の起こる前兆状態にある中で、珍しく平和なひと時を過ごしているアルバート家…更に別の日々を過ごす2人がいる
【ベイ城西方向数10km地点】
「ふひゅー……やった!やりましたよリキュール!遂にワタシ1人で魔物を討伐しましたよ♪」
魔族のベイが支配するエリアに立ち入らない様に、かなり西側の森林帯を馬車でゆっくり南下してイシス王国を目指しているリキュールとケチュア
「ふーん、良かったね。おめっとさん…」
「ちょっとー!ワタシにしては大進歩なのですよ!生まれて初めて誰の手も借りずに、魔物を1体倒しましたのよ!もう少し褒めてくれても良いんじゃないですかッ!?」
「そうは言うけどさ…群れから離れて単独行動してて、弱っていた野生のウルフを1匹じゃん?言ってみればさ…冒険者入門の為の入り口にようやく立てた。って程度なんだよ!?」
マリニウム地方のスズカの街の横にあたる今は亡き領土を統べていた公爵のひとり娘が、ようやくウルフ1体をひとりで倒せた。その程度に過ぎないのだが…それでも彼女にしては大進歩だったのだ
「わ、分かっていますわ…イシス王国に面倒事を持ち込もうとしている何も持たない元公女が、冒険者の真似ごとが出来た程度だ。って事は…でも、でも!褒めてくれたって良いでしょ!」
「はいはい、お疲れ様。頑張ったね、エラい、偉いよ。おーヨシヨシ……これで良い?」
「むきーっ!全然気持ちがこもっていませんわー!!こんなにアチコチ怪我しても頑張ったんですのよー!」
「はいはい…怪我を直してあげるからソコに座りなよ。魔法の治療が終わるまで、この紅茶と干し肉食べてて良いからさ」
「うー…お願いします…」
やや不貞腐(ふてくさ)れているが、怪我を治してもらわないと今後厳しくなるのは理解しているので、リキュールの前に座り手渡された紅茶と干し肉に手を付け始めた
「はい。終わったよ!……くんくん…ケチュア…少し臭うよ…」
「ちょっとぉ!?匂いを嗅がないでもらえます?シャワーも浴びれずに移動して戦ってるのですから、匂ってきても仕方ないじゃないのっ!」
「じっとしてなよ。タオル借りるよ…タオルに召喚した水を含ませて……ほら、拭いてあげるから鎧を脱ぎなよ」
口の悪いリキュールだが、ケチュアに対して非常に面倒見が良く彼女に接していた
(アルバート家に居た頃は…確かに恵まれていた環境だったけど…ここまでは開放的にはなれなかったんだよなぁ…)
「あっ!リキュール。アソコに小さな川が流れてますわ!その途中に池のように水が溜まっていますよ?久しぶりに水浴び出来ますわぁ!」
「あっ!?ちょっと待ってケチュア!良く調べずに迂闊に入ると危険だよ!」
「ドボンっ!」
何度も戦い全身汗まみれになっていたケチュア。リキュールに言われなくても発汗による体臭が気になっていた彼女は、後先考えずに池に飛び込んだ!
「何よリキュール。危険って何が危険だと言うのですか?川の水溜まりなのですから、水辺の凶暴な魔物も居ないでしょう?」
「はぁ…やれやれ。本当にケチュアは何も知らないお嬢様だね……魔物は居なくても、生き物の血を狙う吸血ヒルの生息地だったらどうするのさ?取り敢えず1度出なよ。見てあげるからさ」
「えっ…吸血ヒル?」
と言われても、今回が初めての旅で冒険でもあるケチュアは【吸血ヒル】という単語にさえスグには反応出来なかった
「ああっ!?いやー!いやいやいやいや!リキュール~見てください!お願いよぉ!」
「やれやれ…ケチュアはどんだけ、お子様なのさ。ほら、両手上げて脚開きなよ。どれどれ…」
ケチュアは素直に手脚を開き、リキュールに全身のチェックをしてもらっている
「あっ!やっぱり…張り付かれてるよ」
「いっやー!何とか、何とかしてください!」
「ほいほい、動かないでよ…えいっ!」
リキュールは血を吸うためにケチュアの肌に直接張り付いている吸血ヒルに触れ、軽く電撃を流し1匹ずつ殺して剥がした
……………………………………………
「うぅ……せっかく水浴びして身体を綺麗に出来ると思いましたのに…それに、タオルや石鹸まで有りますのに…残念ですわ。残念ですわぁ!」
「いやいやいや。せっかくだから水浴びしようよ。私だって汗を流したいしさ」
「えっ!?でも、どうやって?」
リキュールは池の水に手首まで入れて【雷光柱(ジャムルエッジ)】の呪文を唱えた
水中を走る電撃。発光する水溜まり。小さな貯め池なので、中にいる小さな生命体には十分致死量の電撃だった
「あっ!小魚が浮いてきましたわ」
「これで吸血ヒルに張り付かれたり、別の凶暴な魚に襲われる心配は無くなったよ。さぁ、水浴びと洒落こもうじゃないか!」
そう言うとリキュールは服を脱ぎだし…全裸になるとケチュアの手首を掴み、池へと誘うのだが…
「待ってくださいリキュールさん!ここは外なのですよ!お外で全裸になるなんて、恥ずかし過ぎてワタシ死んじゃいそうですわ!」
「ナニ言ってんのさ。裸を見られたくらいじゃ死にやしないよ。さぁ、さぁ!タオルに石鹸まで持ってるんでしょ?綺麗にしないともったいないよ?」
「あうう…数日前までは、ナイン家の令嬢だったのに…誰に見られるか分からない外で、真っ裸になるだなんて…野蛮な男に襲われたら、リキュールさん。助けてくださいよ」
「分かってるって!ケチュアには散々お世話になってるんだからね!」
屈託のないリキュールの笑顔を魅せられたケチュアは、もうジタバタするのはやめて彼女と共に水浴びを始めた
……………………………………………
「ふぅ、さっぱりしたねケチュア!」
「えぇ…そうですわね…」
「ん?どうかしたかい?」
「あ、いえね。お外で全裸で水浴びなんて恥知らずな事!…っと思っていたのですが…いざ入ってみましたら、開放的な気持ち良さに…なんだかワタシ、ハマってしまいそうなんです♪」
うつむきながら恥ずかしそうにカミングアウトするケチュアがリキュールには、本当に可愛らしく見えたのだ
「アッハッハッハッハッ!それは良かったよ。私もケチュアの綺麗な素肌を堪能できて満足だよ(笑)」
「んもう!やっぱりジロジロ見てたんじゃないですかっ!責任取ってもらいますわよ!」
「クスクスクス(笑)あぁ良いよ!亡き両親の仇が討てたなら、私がケチュアと結婚してあげようか?もちろんケチュアが良ければ、だけどね?(笑)」
「け、け、け…結婚ですか!?ワタシと貴女は女性同士なのですよ?そんなの…イケませんわ!!」
「そうなのかい?…わたしは愛があれば同性でも構わないと思うけどね♪」
確かに同性のカップルも珍しくはないが、絶えない戦乱の中で人口は減りつつあるので、道徳的にはあまり歓迎されてはいない
それよりも、ケチュアの反応のひとつひとつが可愛らしく見えてたまらないので、リキュールは生まれて初めて心から楽しいと思える日々を過ごしていた
続く
【ベイ城西方向数10km地点】
「ふひゅー……やった!やりましたよリキュール!遂にワタシ1人で魔物を討伐しましたよ♪」
魔族のベイが支配するエリアに立ち入らない様に、かなり西側の森林帯を馬車でゆっくり南下してイシス王国を目指しているリキュールとケチュア
「ふーん、良かったね。おめっとさん…」
「ちょっとー!ワタシにしては大進歩なのですよ!生まれて初めて誰の手も借りずに、魔物を1体倒しましたのよ!もう少し褒めてくれても良いんじゃないですかッ!?」
「そうは言うけどさ…群れから離れて単独行動してて、弱っていた野生のウルフを1匹じゃん?言ってみればさ…冒険者入門の為の入り口にようやく立てた。って程度なんだよ!?」
マリニウム地方のスズカの街の横にあたる今は亡き領土を統べていた公爵のひとり娘が、ようやくウルフ1体をひとりで倒せた。その程度に過ぎないのだが…それでも彼女にしては大進歩だったのだ
「わ、分かっていますわ…イシス王国に面倒事を持ち込もうとしている何も持たない元公女が、冒険者の真似ごとが出来た程度だ。って事は…でも、でも!褒めてくれたって良いでしょ!」
「はいはい、お疲れ様。頑張ったね、エラい、偉いよ。おーヨシヨシ……これで良い?」
「むきーっ!全然気持ちがこもっていませんわー!!こんなにアチコチ怪我しても頑張ったんですのよー!」
「はいはい…怪我を直してあげるからソコに座りなよ。魔法の治療が終わるまで、この紅茶と干し肉食べてて良いからさ」
「うー…お願いします…」
やや不貞腐(ふてくさ)れているが、怪我を治してもらわないと今後厳しくなるのは理解しているので、リキュールの前に座り手渡された紅茶と干し肉に手を付け始めた
「はい。終わったよ!……くんくん…ケチュア…少し臭うよ…」
「ちょっとぉ!?匂いを嗅がないでもらえます?シャワーも浴びれずに移動して戦ってるのですから、匂ってきても仕方ないじゃないのっ!」
「じっとしてなよ。タオル借りるよ…タオルに召喚した水を含ませて……ほら、拭いてあげるから鎧を脱ぎなよ」
口の悪いリキュールだが、ケチュアに対して非常に面倒見が良く彼女に接していた
(アルバート家に居た頃は…確かに恵まれていた環境だったけど…ここまでは開放的にはなれなかったんだよなぁ…)
「あっ!リキュール。アソコに小さな川が流れてますわ!その途中に池のように水が溜まっていますよ?久しぶりに水浴び出来ますわぁ!」
「あっ!?ちょっと待ってケチュア!良く調べずに迂闊に入ると危険だよ!」
「ドボンっ!」
何度も戦い全身汗まみれになっていたケチュア。リキュールに言われなくても発汗による体臭が気になっていた彼女は、後先考えずに池に飛び込んだ!
「何よリキュール。危険って何が危険だと言うのですか?川の水溜まりなのですから、水辺の凶暴な魔物も居ないでしょう?」
「はぁ…やれやれ。本当にケチュアは何も知らないお嬢様だね……魔物は居なくても、生き物の血を狙う吸血ヒルの生息地だったらどうするのさ?取り敢えず1度出なよ。見てあげるからさ」
「えっ…吸血ヒル?」
と言われても、今回が初めての旅で冒険でもあるケチュアは【吸血ヒル】という単語にさえスグには反応出来なかった
「ああっ!?いやー!いやいやいやいや!リキュール~見てください!お願いよぉ!」
「やれやれ…ケチュアはどんだけ、お子様なのさ。ほら、両手上げて脚開きなよ。どれどれ…」
ケチュアは素直に手脚を開き、リキュールに全身のチェックをしてもらっている
「あっ!やっぱり…張り付かれてるよ」
「いっやー!何とか、何とかしてください!」
「ほいほい、動かないでよ…えいっ!」
リキュールは血を吸うためにケチュアの肌に直接張り付いている吸血ヒルに触れ、軽く電撃を流し1匹ずつ殺して剥がした
……………………………………………
「うぅ……せっかく水浴びして身体を綺麗に出来ると思いましたのに…それに、タオルや石鹸まで有りますのに…残念ですわ。残念ですわぁ!」
「いやいやいや。せっかくだから水浴びしようよ。私だって汗を流したいしさ」
「えっ!?でも、どうやって?」
リキュールは池の水に手首まで入れて【雷光柱(ジャムルエッジ)】の呪文を唱えた
水中を走る電撃。発光する水溜まり。小さな貯め池なので、中にいる小さな生命体には十分致死量の電撃だった
「あっ!小魚が浮いてきましたわ」
「これで吸血ヒルに張り付かれたり、別の凶暴な魚に襲われる心配は無くなったよ。さぁ、水浴びと洒落こもうじゃないか!」
そう言うとリキュールは服を脱ぎだし…全裸になるとケチュアの手首を掴み、池へと誘うのだが…
「待ってくださいリキュールさん!ここは外なのですよ!お外で全裸になるなんて、恥ずかし過ぎてワタシ死んじゃいそうですわ!」
「ナニ言ってんのさ。裸を見られたくらいじゃ死にやしないよ。さぁ、さぁ!タオルに石鹸まで持ってるんでしょ?綺麗にしないともったいないよ?」
「あうう…数日前までは、ナイン家の令嬢だったのに…誰に見られるか分からない外で、真っ裸になるだなんて…野蛮な男に襲われたら、リキュールさん。助けてくださいよ」
「分かってるって!ケチュアには散々お世話になってるんだからね!」
屈託のないリキュールの笑顔を魅せられたケチュアは、もうジタバタするのはやめて彼女と共に水浴びを始めた
……………………………………………
「ふぅ、さっぱりしたねケチュア!」
「えぇ…そうですわね…」
「ん?どうかしたかい?」
「あ、いえね。お外で全裸で水浴びなんて恥知らずな事!…っと思っていたのですが…いざ入ってみましたら、開放的な気持ち良さに…なんだかワタシ、ハマってしまいそうなんです♪」
うつむきながら恥ずかしそうにカミングアウトするケチュアがリキュールには、本当に可愛らしく見えたのだ
「アッハッハッハッハッ!それは良かったよ。私もケチュアの綺麗な素肌を堪能できて満足だよ(笑)」
「んもう!やっぱりジロジロ見てたんじゃないですかっ!責任取ってもらいますわよ!」
「クスクスクス(笑)あぁ良いよ!亡き両親の仇が討てたなら、私がケチュアと結婚してあげようか?もちろんケチュアが良ければ、だけどね?(笑)」
「け、け、け…結婚ですか!?ワタシと貴女は女性同士なのですよ?そんなの…イケませんわ!!」
「そうなのかい?…わたしは愛があれば同性でも構わないと思うけどね♪」
確かに同性のカップルも珍しくはないが、絶えない戦乱の中で人口は減りつつあるので、道徳的にはあまり歓迎されてはいない
それよりも、ケチュアの反応のひとつひとつが可愛らしく見えてたまらないので、リキュールは生まれて初めて心から楽しいと思える日々を過ごしていた
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