家庭菜園物語

コンビニ

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2章

2-12 彩り

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 「友達とか……勝手に勘違いして、また間違えてしまった……」

 しょんぼりと肩を落とすエリゼちゃん。
 励ましてやりたいのに、こちらまで胸が痛くなる。

「モモも、ちょっとズレたとこがあるからさ」

 フォローしたつもりなのに、その言葉にモモがまでショボーンとしてしまった。

「……私、ズレてますか」
「ち、違う! 悪い意味じゃなくて!」

 あっちもこっちもしょんぼりしてしまい、収拾がつかなくなってきた。

「にゃーん」

 姉さんがのっそりと間に入る。
 時には喧嘩をし、ぶつかり合い、一緒に勉強をし、同じ釜の飯を食べる——それで十分、友達でよいのではないか? と。

「それなら、友達ということで。改めてお願いします」
「モモ! エリゼって呼び捨てでいいぞ!」
「なんだか偉そうなのは変わりませんね」

 悪友、というのが正しいのかもしれない。いや、悪ってほどでもないか。
 友情の形は人それぞれだ。

「今後のことは後々考えるとして、まずは仕事を始めてみようか」

 ——エリゼちゃんは、思った以上に素直にモモに教わりながら、家畜や畑の世話を手伝い始めた。
 なんだかんだで仲は良さそうで、ひとまず安心する。

 人手が一人増えるだけで、俺の負担もぐっと軽くなる。
 その分、サイゼ様に売る料理にでも力を入れるか?
 人が増えれば出費も増える。売り物も、できるだけ加工して単価を上げなきゃな。

「一件落着だな」
「そうですね。さくらさんにはお世話になりました。それで……どのくらい滞在されますか?」
「要件が終わったら直ぐに帰れってことか?」
「そんな言い方してないでしょう! ただ滞在期間を聞いただけじゃないですか」

 過去に「ニート」とかなんとか散々騒いだ経緯があるせいか、さくらさんがガルルと威嚇してくる。
 面倒な性格してるなぁ。

「にゃーん」

 姉さんが「働いたお礼にブラッシングさせてやる」と言ったら、さくらさんはニコニコ顔でブラシをしていた。モモ以外には滅多に許さないのに……羨ましいぞ。

「にゃーん」
「ええ、わかっています。モモの勉強やトレーニングの成果も見たかったので、午後はそのつもりでした」

 午後にはエリゼちゃんも一緒に、少し勉強を見てもらえるようだ。

「そういえば、学校の完成ってそろそろじゃないんですか?」
「少し長引いている。来年の春には開校予定だな」
「開校に合わせてモモも通わせた方がいいですか?」
「本人が強く望むなら別だが……再来年の春でいいと思うぞ。初年度は面倒な子供も多いからな」
「わかりました。モモにも少し話してみます」

 面倒な子供って、王族や金持ちの子息だろうか。
 ……モモと過ごせる時間も、あと少しかもしれないな。


 ★★★


 一週間後。

 結局、さくらさんは駄々をこねることもなく、きっちり準備を整えて去っていった。
 十リットルほどのビールと、燻製の肉や魚、漬物に料理の数々を収納魔法で保管して。

 エリゼちゃんの件で俺の頼みを聞いてくれたこと、モモの様子を見てくれたこと……無理して時間を作ってくれたのかもしれない。
 あの人、ほんとツンデレだ。

 さくらさんを見送った午後、エリゼちゃんが急に口を開いた。

「彩りが足りない!」
「エリゼさん、突然何を言い出すんですか?」
「お姉ちゃんって呼んでよ! 私の方が年上よ!」
「……で、その彩りとは?」

 この二人は仲がいいのか悪いのか。

「私の家には……やっぱり、なんでもない」

 自分の家を思い出したのか、またショボーンとする。最後まで言ってくれないと気になるんだけど。

「前に言ってましたよね? 庭園があったとか」
「なるほどな、花か」
「モモ、勝手に言わないでよ!」

 なんだ、女の子らしい要望じゃないか。
 モモにとっても、食べ物以外を大事にする感覚を学ぶのはいいかもしれない。

「いいじゃないか。花壇くらいなら設置できるし、彩りは大事だよ」
「おじさん、いいの?」
「ああ。俺も花は嫌いじゃないし」

 まだ「おじさん」呼ばわりされるのは悲しいけど、この世界基準なら……二十代でも否定はできないのかもな。

「エリゼさん、言っておきますけど花壇を設置するのもお金がかかるんですからね」
「わ、わかってるわよ!」
「俺も賛成だし、お金のことは今はいいよ」
「お父さん! お金がかかることを理解するのは大事です!」
「は、はい」

 モモの言うことは正しい。
 エリゼちゃんに「何事もお金がかかっている」と理解させたいのだろう。

 コンコンと、花壇を作るのに十万円かかる重みを説明するモモ。
 どっちがお姉ちゃんなのかわからない。

「エリゼさん、わかりましたか?」
「はい!」
「説明も終わったことだし、じゃあエリゼちゃんには“お花大臣”を任せようかな」
「私が大臣!」
「お父さん……あんまり変なこと言わないでください」
「ごめんごめん、“花の責任者”ってことだよ」
「わかった!」
「エリゼさん、“わかった”じゃなくて“わかりました”ですよ」

 モモの教育は相変わらず厳しい。
 基本的に俺や姉さん、大福には敬語を使うルール。……まぁ正しいけど。

「まぁまぁ。それじゃあ彩りのある花、食べられる花、役立つ花——いろいろ植えていこうか」
「食べられる花があるんですか?」
「あるよ。お茶にしたり、料理やお風呂に使ったりね」
「楽しみ!」

 無邪気に喜ぶエリゼちゃんの頭を撫でる。年相応で、可愛いな。小さい頃のモモを思い出す。

 モモが嫉妬したのか、ぷくっと頬を膨らませてエリゼちゃんの横に並んでくるので、同じように頭を撫でると、すぐ満足そうに笑った。

 なんだかんだで、まだまだ子供だ。

 ——メニュー画面から花壇を購入すると、種の項目が新しくアンロックされる。
 その中に、【守りの木】という名前が浮かび上がった。

 


 

 
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