病弱令嬢、魔王に憑依されてムキムキになる ~思いの分だけ、筋肉が膨れ上がる~

椎名 富比路

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第五章 アンデッド VS 筋肉

第57話 黒幕

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「特大の炎を、お見舞いするよ!」

 アキコが、炎のブレスをさらに強める。
 ゼムの肉体ごと、炎の鳥に焼かせた。

「むおおお!? 無念!」

 ボン、とゼム将軍の身体が、上空で弾ける。

 魔導書を破壊された状態で、聖属性の魔力を注がれていく。肉体が、耐えきれなくなったのだ。 

「ようやく、終わりました」

 ゼム将軍を、ついに倒した。これで、マッスリアーニに敵対する者たちは、いなくなったはずだ。

「フォルテ姫、無事ですか?」

「ええ。このとおり……」

 しかし、フェターレ王子にフォルテだと知られた。魔王レメゲトンの力で復活したことも。

「本来なら、再会を喜びたい。しかし、ボクには王子としての責務がある。レメゲトンが世界に現れた以上、放置するわけには」

「ええ。ダメリーニ王家と、因縁があるのでしょう?」

 少なくとも、取り調べなどは受けなければなるまい。

「では、王都までご同行を……ぬ!?」

 空が、紫色に染まった。


 一体の白骨化したドラゴンゾンビが、空を飛んでいる。

 その頭にいるのは、病的にまで痩せた少女だ。

「あれは、アドリアナ・コヴァー姫!」 

 コヴァーということは、わたしが倒したゼム・コヴァー将軍の肉親か。
 少女アドリアナが、フェターレ王子に向けて手をかざす。
 骨のように白い手から、紫色に輝く光の帯が射出された。

「わあああああ!」

 光の帯に拘束されて、王子は少女に連れ去られてしまう。

『フォトン! あやつは、【ネクロノミコン】じゃ!』

「ネクロノミコン?」

『うむ。地獄の支配者を名乗る、最強の魔王じゃよ』

 ドラゴンゾンビが、フォトンの頭上で止まった。

「フォルテ・マッスリアーニ、および魔王レメゲトン! 貴様の大事な男は預かっておくぜ!」

 深窓の令嬢には似つかわしくない男口調で、アドリアナがわたしに伝えてくる。

「返してほしければ、ネロックの地獄谷まで取りに来るんだね! お互い、本気で殺し合おうじゃねえか!」

「ならば王子は返しなさい。彼は関係ありません」

「いや。彼は特等席で、貴様が切り刻まれるさまを見てもらうのさ!」 

 高笑いをしながら、少女アドリアナは去っていった。

「カチュア、ロプロイを頼みます」

 負傷兵がたくさんいる上に、犠牲者が多数出ていて戦力が乏しい。カチュアには残ってもらわねば。

「一人で行く気か?」

「あなた方が来ても、戦力としては」

 ムダに犠牲が、増えるだけだろう。

「フォルテさま!」

「ミニミ、あなたは、ケガをしたみんなを治療してあげて」

「はい」

 泣きじゃくるミニミの目に、ハンカチを添える。

「拙者は、行くででござる」

 ハーフエルフの女サムライが、名乗り出た。

「おう。オレたちは王子の部下だ。無責任なことはできねえ」

 続いて、ハーフドワーフの男性も。

 この二人は、肉片になってもついてくるつもりだ。ならば、止められない。

「戦ったりはしねえよ」

 今のドワーフは、拳銃しか持っていない。

「足手まといなのは、理解しているでござる」

 サムライもメイン武器が折れて、短刀を所持しているのみ。

「あんたが注意を引き付けている間に、助け出す」

「そうですね。お願いできますか?」

 戦闘になれば、王子を気にかけていられない。

「我々は、プロでござる。大船に乗ったつもりで、構えるでござる」

 女サムライが、胸を叩く。

「アタイの背に乗りな」

 アキコが、ドラゴンに変身した。

「カチュア、地獄谷ってのはどこに?」

「北西だ。ネロックの、はるか先にある。生き物が生息していない、寒い地域だ」

 空から向かえば、一時間ほどで到着するはずだという。

「わかったよ」

 全員を乗せて、アキコが飛び上がる。

『フォトンよ。ヤツと我は、同じ頃に誕生し、覇権を争った。おそらく、同レベルの戦いとなる』

「なにが同レベルですか。わたしの筋肉は、無敵です」

(第五章 完)
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