ウソ発見部

椎名 富比路

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第一章 ギバーと、いつわりの宝石

指輪の正体

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「この『Yへ』というメッセージだけど、お爺さま宛てじゃなかった。正確には多分『靖子へ』だと思う」
「根拠は?」
「指の太さ。お爺さまにはめるためなら、もっと大きいサイズにするはず」
「だったら、なんでばあちゃんは黙ったままなんだよ?」
「言い出せなかったんだと思う。言おうとしたら、靖子ちゃんが病気になっちゃった」



 靖子の友人に事情を説明し、指輪を返してもらう。
 コージィさんの説明を受けて、友人は慌てた様子で指輪を速攻で返してくれた。


 靖子の元へ行き、指輪を差し出す。
「だから、いらないってば!」

 妹は頑なだ。

「いいえ、あんたには、この指輪を受け取る大切な理由があるんだよ?」
 米粒ほど小さな指輪を、コージィさんは靖子に見せる。

「あなたには、これを受け取る義務がある」
 あくまでも、コージィさんは指輪を無理矢理に靖子へ突き出す。

「それはおばあちゃんの。だから、わたしにはいらない!」
 妹も強情で、決して受け取ろうとしない。

「そのおばあちゃんが、あなたにって渡したんだよ。おじいちゃんを知らない、あなたのために」

 靖子は、祖父が死んで一年後に生まれた。家族で唯一、祖父の記憶が全くない。

「指輪とおじいちゃんに、なんの関係があるの?」



 靖子が聞くと、コージィさんは、靖子にもよく見えるように、指輪を顔へと近づけた。





「これ、おじいちゃんだよ」



 何を言っているんだ、コージィさん?
 と思っていたら、コージィさんはパンフレットを靖子に見せる。
「ダイヤモンドって、炭素って素材でできているの。炭素は、人間の身体でも作れる。『ダイヤモンド葬』っていうのがあるの、知ってる?」
 コージィさんから尋ねられ、靖子は首をブンブンと振った。
「おばあちゃん、おじいちゃんの墓じまいしたでしょ? あんたのおばあちゃんは、おじいちゃんの遺骨を、ダイヤモンドの指輪にに変えたの。こうしておけば、いつだっておじいちゃんに会えるから」
「んだよ。それならそうと早く言えば良かったのに」
「言えなかったんじゃないかな。行ったとしてもさ、指輪、してもらえないじゃん」
 そうか。金属アレルギーで。


 祖母は、言おうとしたんだと思う。この指輪は靖子の持つべきものだと。

 けれども、靖子の病気が分かり、それが自分のせいかもしれないと思った。
 ならばせめて、自分で管理していよう、靖子の病気がよくなった場合に、また話せばいい。

 今度はちゃんと靖子ちゃんが手に取って置きやすい形で、渡そうと思っていたんだと思う。

 なのに、靖子とは口論になって、指輪は人手に渡ってしまったのだ。

 帰宅すると、母が玄関から出て行くところだった。

「隆健、ちょうどよかったわ。さっき病院から電話があってね、おばあちゃんが目を覚ましたって!」
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