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第七章 世界樹 VS 黒の世界樹

第46話 闇のウッドゴーレム ヨル

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 村に、一台の馬車が止まったと思えば、ボクそっくりのウッドゴーレムが現れたではないか。

 見た感じはボクだけど、細部が微妙に違う。

 まずは体質だ。ボクは木製だけど、彼の身体はサンゴゴーレムだ。ところどころ黒いのは、岩を使っているからだね。厳密には、ロックゴーレムなのだろう。そこに、サンゴがへばりついている。

「真っ黒いコーキ様だって?」
「イメチェンかしら?」
「微妙にあちことが違うね!」
「はて、どちらさまで?」

 黒いゴーレムを取り囲んで、みんな驚いていた。すぐにボクの偽物だって気づいた人はいるみたいだが、ボクをよく知らない人は見分けがつかないだろう。

「あの、コーキさん。たびたび、お邪魔します」

 ハィラさんが、馬車から降りてきた。御者役をつとめている。

「コーキ殿というのは、どこにいる?」

 馬車を飛び降りて、ゴーレムがボクのことを探した。

「ボクですが」

 みんなを代表して、ボクが黒いゴーレムの前に立つ。

「あなたは、誰ですか?」

「我は、ヨルムンガンド。そなたらから、『闇の世界樹』と呼ばれているものだ」

 アウェイだというのに、彼は怯えるどころか堂々としていた。ハィラさんとは大違いである。

 周りの反応に、ウッドゴーレムも困惑している。

「この姿が、もっとも警戒されないと思ったが」

 ボクがあげた苗を使って、ヨルムンガンドは自分なりにウッドゴーレムを作ってみたという。

「警戒するよ! ワタシたちの仲間そっくりに擬態されたら、心理的に追い詰めようとしているのかも、って思われちゃうよ!」

「ふむ。人間とは、かくも難しいものよ」

 ヨルムンガンドの言い分に、パロンも困惑した。

「パロン、あの人って、ヤバいの?」

「いや。キミのコピー品だから、大して強くはないだろうね。敵意も感じない。ガチで、話し合いだけをしに来たみたい」

 とはいえ、人間の心までは入っていない。対話ができるかどうか自体も、怪しいそうだ。

「あの、闇の世界樹ヨルムンガンド様、呼びにくいので、なんとお呼びすれば?」

 ハィラさんが、助け舟を出してくれた。さすが闇側の巫女さんだ。神様の扱いに慣れている。

「うむ。ヨルムンガンドだから、『ヨル』とでも呼んでもらおうか」

「ヨルさんね。改めて、コーキです。よろしく」

「おお、よろしくたのむ」

「では、ご用件を」

「ふむ。まずは礼を言おう。大変、馳走になった。感謝いたす」

 ヨル様が、ボクたちに頭を下げてくるなんて。

「こちらこそ。お粗末さまでした」

「いやいや。神への供物を、粗末というべきではないな。実際、美味であった。ありがたくいただいたぞ。そうだ。我々からもお近づきのしるしをよこしておる。海鮮だ」

 一台の馬車が、村にやって来る。御者は、なんとクトーニアンの魔王様だった。
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