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1-4 「おさんぽ」という名の迷宮探索

第51話 ダンジョンの構造

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 一歩進む度に、禍々しい気配で全身がビリビリした。

「魔物は危険。魔物は魔王候補を倒すと、自分が魔王に成り代われる。負ければ消滅する。だから必死」

 ボクはチサちゃんと手を繋ぎ、着実に歩を進めていく。

 ダンジョンは石造りである。
 何年も昔から建設されたように、しっかりとしていた。
 薄暗いとはいえ、灯りまで生きている。


「待った」

 突然、オンコが先回りして、パーティを停止させた。適当な石ころを、前方に放り投げる。

 床が口を開け、小石を飲み込む。再び床が閉じた。

「落とし穴のトラップだね。見てて」
 壁を触りだして、レバーを見つける。
 慎重にレバーの外壁を外した。

 レバーの内部には、導線がびっしりと張り巡らされている。

 オンコはナイフで導線を切り、罠を解除した。

 その後も、オンコは脇道を見つけては宝箱を開けていく。

 箱の中身はポーションや装備類などである。
 ドワーフが作った品なので、価格も高く性能もいいらしい。

「見て、【力たすき】だって、パワー系のダイキが装備しなよ」
 梵字のような模様が描かれた布製のヒモを、オンコが宝箱から見つけた。

「え、でもいいの? オンコが取ったのだから、キミのものにするのが」
「これ、腕っ節が上がる特殊装備だから、アタシが持っててもしょうがないんよ。それにパーティでしょ? 装備は共有しよ」

 なら遠慮なく、装備させてもらう。
 革鎧を脱いで、身体にたすきを結ぶ。

 なぜか、チサちゃんが興奮気味だ。わくわくしている。

 途端に、筋肉が引き締まった。なんか強くなった気がする! 

「それにしても、広い迷宮だね」

 勝手に灯る明かりや、石製の壁。
 洞窟を掘っただけでなく、補強まで施しているのだ。

「どれだけの人数で建築したんだろう?」


「一人である」


「え、マジで? これだけ複雑な迷宮を一人で作ったと?」 


「至る所にドロリとしたマナが走っておる。高名な魔術師なら、一晩で広大な迷宮を作り上げたりするのだ」
 手を這わせて壁を調べながら、ゼーゼマンが接着具合を確かめる。

 ボクには分からないが、ゼーゼマンには構造が分かるらしい。

「本気を出したら、ゼーゼマンでも作れるの?」
「イヤだ。めんどくさい」

 迷宮を作るのは、作る理由があるからである。
 世俗にまみれたいゼーゼマンには建てる動機がないのだ。

「待ってくれ。ということは?」
 エィハスが、何かを察する。

「左様、侵入はバレていると思ってよい」

 あまりの事実に、ボクは前へ進めなくなった。
 これから何が起きるのだろう?

「迷宮のマナを消滅なんてされたら、押しつぶされるかも!」

「その心配はない。これだけ精巧な迷宮を維持するには、最深部にずっと隠遁せねばならぬ。もしマナなど断ち切れば、真っ先に我が身が圧死するなり」
 ボクが危機を訴えると、ゼーゼマンが納得のいく解説をしてくれた。

 だから、ダンジョンのボスって一番奥にいるのか。納得した。
 何をするにも配下を使うのだって、ダンジョンの維持が理由なのかも。

 最強魔術師であるゼーゼマンが、ダンジョンを作らないわけだね。

「だが、妨害がないとは言っておらぬ。くるぞ!」
 ゼーゼマンが杖と本で武装した。

 他のメンバーも身構える。

 武装した数体のスケルトンが、ボクたちの前に!
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