上 下
135 / 302
2-3 いよいよ海へ。人魚姫との遭遇!?

海賊退治の依頼

しおりを挟む
「ボクは、玉座です。オサナイ・ダイキと言いまして」


 だんだん、ベルガさんの表情が青ざめていった。


「まあ。魔王様に玉座様とは。話しかけてよかったのかしら」


「気にしない。世界が困っているなら、助けるのが魔王の勤め」
 毅然とした態度で、チサちゃんは胸を張る。

「ズースミックに用事があるのでしょう? とにかく話して下さい。力になります」
 ボクたちは、ズースミックの街まで戻ることにした。

「歩けますか? なんなら負ぶさってください」

「ご安心ください。お気遣いなく」

 言うと、ベルガさんの下半身が、パレオをつけた人間の姿になる。

「一時的ですが、人の形をマネできるますの」
「そうだったんですね。では、街まで行きましょうか」



 街へ入ると、みんながベルガさんに注目していた。
 モデル並みの美人さんだからか、男性から視線の的になっている。

「お恥ずかしいですわね」
「港まで、行きましょう。あっちに行けば、女性客ばかりだから静かでしょう」


 港が見えるカフェで、話を聞くことに。オシャレなデートスポットだけあって、単独での利用者は女性が多い。


「さあ、ここなら視線も気にならないでしょう。話してください」
 ボクは、ベルガさんに話を促す。

 けど、ベルガさんは話を切り出さない。

 海鳥の鳴き声と、波の音だけが鳴り響く。

「みなさん、お気遣いなく。魔王サマの御手を患わせるわけには。冒険者ギルドにお任せしますので、どうか」
「こういうの好きなんですよ。チサちゃんは」

 実際、チサちゃんはワクワクした顔でベルガさんが話すのを待っていた。

「報酬とかは気にしなくていい。街を守るのは魔王の義務。それに魔王からすれば、冒険はむしろ趣味と言っていい。わたしは冒険がしたい。それが、魔王にとって何よりの報酬」

「そういうことでしたら」

 チサちゃんの説得により、ようやくベルガさんが語り始める。

「私たち人魚族は、ズースミックと交易していたのです。それが最近になって、航路に海賊の一団が現れまして」

 迂回して人間の街まで行かねばならず、困っているという。

「このままでは、航路が海賊で溢れてしまいます」
「それで、冒険者ギルドまで」
「ズースミックに応援に向かおうとしました。大人数だと街を守る人手がいなくなるので、私一人で」

 ところが、ズースミック目前の道中で、海賊に見つかってしまった。積み荷も報酬の品も、食事すら落としてしまって、命からがら逃げてきたという。

 チサちゃんが立ち上がる。

「仲間を集める」

 きっとチサちゃんなら、一人でも殲滅は可能だ。けれど、相手が海賊なら数が多いかも知れない。人出は多い方がいいだろう。

「せっかくだから、みんなを呼んで話を聞く」
「そうだね。放っておけない」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

男は歪んだ計画のままに可愛がられる

BL / 完結 24h.ポイント:418pt お気に入り:11

リーンカーネーション 小学4年に戻ったおれ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:56

呪われた第四学寮

ホラー / 完結 24h.ポイント:1,831pt お気に入り:0

傾国の王子

BL / 完結 24h.ポイント:674pt お気に入り:12

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:0

ここはあなたの家ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:31,311pt お気に入り:2,007

潰れた瞳で僕を見ろ

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:21

ある工作員の些細な失敗

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:2,186pt お気に入り:0

パスコリの庭

BL / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:27

処理中です...