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1-1 謎ジョブ「玉座」に再就職!?

第9話 オレンジと唐揚げ

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 肩車をチサちゃんが要求してきたので、ボクは従う。

 チサちゃんの小さな手には、オレンジを摘むようのハサミが握られていた。

 身を傷つけないように、チサちゃんは慎重にツルを切る。

「はい」
 肩車の上から、チサちゃんはボクにオレンジをくれた。

 ありがたい。
 朝食だけでは、少しお腹が物足りないと思っていたところだ。

「いいの? ボクの生まれは愛媛だからね。おミカンにはちょっとうるさいよ?」


「エ・ヒ・メ?」


 どうやら、チサちゃんのデータベースにエヒメという言葉はないらしい。

 ちょっとガッカリだな。
 今度機会があれば連れて行ってやろう。

「多分、人間が食べても美味しい。実際売れている。どうぞ」
「遠慮なく、いただきます」

 ボクはオレンジにかぶりついた。

 甘い。その直後にスッキリした酸味がくる。
 まごうことなきオレンジだ。

 こんなにも完成度の高いオレンジがあったなんて。
 愛媛産とも引けを取らない。

 ボクは目をつむって、味をじっくりと確かめた。
「すごくおいしい!」

「ありがと」

「ひょっとして、この作業を見越してた?」

 程よい空腹状態で、ボクに摘みたてのオレンジを味見してもらおうと。
 だとしたら、気配りのできる素晴らしい上司だ。

「ありがとう、チサちゃん。おいしかった」

「気に入ってもらえて、よかった」
 チサちゃんも満足そうだ。

「あのー、こちらの方は?」
 農民が、チサちゃんに質問をしてきた。

「ダイキ。わたしの玉座」
 チサちゃんは、何の説明もなく農家の人にそう説明する。

「お、ほおおおおお!」

 桑を落としたぞ、おじいちゃん。そんなにショックだったの?

「あの、すいません」
 いつもの卑屈癖が出る。
「自分はここにいちゃいけないんだ」と、ボクはいつも考えてしまうのだ。

「玉座様のお出ましだ!」

 農民の皆さんが、なぜかボクにひざまずいた。
 チサちゃんに敬意を表するなら分かるんだけど。

「これでようやく、魔王サマのマナが安定するぞ!」

 またマナの話だ。

 村人からの待遇はすさまじく、お昼までご馳走になってしまった。

 昼食は、シメたてのニワトリを使った唐揚げである。

 チサちゃんの目が輝いていた。
 だから唐揚げに目がなかったのか。
 好物なんだな。

 なんだか悪いなと思いつつ、村の恵みを堪能する。

 もちろん、チサちゃんを膝上に乗せて。

「すいません、質問なんですが」
 手をあげて、ボクは農民たちに問いかけた。

「マナって自然発生しているのですよね? 世界を作り出す力なら、自然と取り込めるのでは?」

「そうはいかないのです」
 農家の一人が、首を振る。
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