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1-1 謎ジョブ「玉座」に再就職!?

第10話 魔王のマナと、玉座の役割

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「チサ様はああ見えて、膨大な魔素を必要とします。甚大ではない消費量を抑えるには、同じほどのマナをその身に孕む存在が不可欠なのです」

「それが、ボクってコトですか?」
 ボクは自分を指さした。

「おかげさまで。あなたがここにきて以来、チサ様の魔力は安定しています」

「ボクって、そんなに強い部類に入るんですか?」
 こう見えて、ボクはケンカに弱い方だ。
 柔道だって、護身程度でしか習っていない。
 人を傷つけるのがイヤなのだ。



「マナの量が問題なのではありません。質の問題です」



 言うには、マナは質の方がよっぽど重要らしい。
 属性というか環境というか、そういった性質こそ大切なのだという。

「相性と言えば、分かりやすいでしょうか? あなたとチサ様の相性は抜群にいいのです」

「そうだったんですね」

 どうやら、ボクは貴重な存在らしい。

 でも、これでいいのだろうか。

 ただ魔王の側にいるだけなのは、楽だ。
 けれど、何かできないものか。

 異世界まで来て、タダ飯を喰らうわけにはいかない。


 カゴを重そうに担いでいるおばあさんを見つけた。カゴには、山盛りのオレンジが。

「ねえチサちゃん、あの人を手伝っていいかな」
「ダイキなら、そうすると思った」

「ありがとう。行ってくるね」
 ボクはチサちゃんに断りを入れて、おばあさんの元へ。

「持ちます」
 おばあさんの代わりに、カゴを担ぐ。

「いやいや、お気になさらず」
「これも何かの縁ですので。どこまで」

 おばあさんの案内で、指定の場所までオレンジを運ぶ。
 倉庫にある大きな箱に、カゴの中身を入れる。

「どうもすみません」
「いえいえ。畑仕事も協力させてください」
 カゴをおばあさんに返す。ついでに、桑を持たせてもらう。

「いやいや玉座様に働かせるなんて」

 おばあさんは遠慮していたが、ボクは身体を動かしたい。

「わたしも手伝う。配下が何をしているか、人員が足りているか把握するのは、上の仕事」
 チサちゃんまで、手を貸すと言い出す。

「恐縮です」
 村人たちが、頭を下げる。

 二人で協力して、畑を耕す。肥料や水を土に与え、種をまく。

 その後は、再びチサちゃんを肩車して、腰にカゴをくくりつける。
 チサちゃん先導で、オレンジを摘んだ。
 質のいいものはそのまま販売する。質の悪いモノは、潰してジャムやポーションとして売るそうだ。

 夕方まで身体を動かしたので、久々にクタクタである。

「すいません。魔王さまに働かせて」

 村人の一団が、チサちゃんに頭を下げる。

「勉強になった」
 チサちゃんは満足げだ。

「ボクなんかを受け入れてくれて、ありがとうございます」

「ありがとう。いつでも、オレンジを食べにいらして」 
 おばあさんから大量のオレンジを受け取って、農地の調査は終わった。
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