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3-3 LOと早食い対決 ~温泉宮廷ビバノン~
第二チェックポイントへ、物資運び
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車を作動させた直後、音声アナウンスが。
『第二チェックポイントへ向かう皆さんに、お知らせします。ただいま、物流が滞っていると連絡が入りました。第一ポイントにある物資を、第二地点へ届けてください。目標を達成された方々から、スタンプを提供します』
なんでも、人手不足で物資が行き届かないらしい。
『なお、物資を届けたことでミッションクリアとなり、スタンプが付きます』
送る物資は、スーパーの裏にある倉庫センターで受け取るそうだ。
車を回して倉庫へ向かう。
倉庫は木箱が大量に用意されていて、魔王たちが手分けして物資を車両に積んでいた。倉庫の隣りにある受付で、手続きをするようだ。
「じゃあチサちゃん、受付に行こうか」
受付に行くと、あらかた物資は他の魔王たちが持っていったらしい。残っているのは、重量のあるモノばかりだった。運ぶだけだから、みんな軽いものを持っていきたいよね。
「アタシ、この肉の塊を持っていくわ!」
冷凍された肉ブロックを、マミちゃんは小さい身体で軽々と持ち上げる。
「乗せるところ、ある?」
「サイドカーに乗せるわ! 冷房の魔法があるから、炎天下でも大丈夫なんだから!」
バイクはタンデム、つまり二人乗りするそうだ。
「ぼくは、カツオブシでも持っていくかな」
まだ加工されていない山盛りのカツオブシを、ネウロータくんはオープンカーに乗せる。
「わたくしは小麦粉と、コーヒーのセットをいただきますわ」
ククちゃんは、コーヒー豆を選んだ。
運ぶのを手伝いこそしないものの、香りを嗅いで豆を厳選する。
さっそくミニバンの搭載性が生きた形になった。
「まさか、ここでミニバンの扱いやすさに助けられるとは」
ヨアンさんも、一安心の模様である。
「自分で飲んじゃダメよ!」
「そんなガメツくはありませんわ!」
マミちゃんが茶化すと、ククちゃんがキレた。
「ボクは、どうしよっか」
「ダイキ、あそこに人が」
チサちゃんが、スーパーの隅を指差す。
見ると、うずくまっている男性がいた。男性はやせ細った老人である。
果物らしき大きな球体を、小さなリアカーに乗せていた。が、荷台が潰れている。どれだけ重いのか。
「そこの人、手助けをしてくださらぬか」
「はい。この果物を運べばいいんですね?」
聞いてみると、男性はうなずく。
「左様じゃ。本当はワシが持っていく予定だったんじゃが、リアカーが壊れてしまって」
「ボクの車なら、丈夫なので持っていけるでしょう」
「かたじけない!」
天の恵みとばかりに、男性はボクとチサちゃんに手を合わせた。そんな大げさな。
「結構重いですね」
果実を持ち上げてみると、米袋くらいの重さがあった。
中身がぎっしりと詰まっているのだろう。
「これ一個で、一〇〇人分のシェイクを作れる」
第二通過地点にあるファストフード店で、シェイクの材料として卸す予定だったらしい。
「すごいですね」
持っているだけで、いい匂いがした。これは期待できそう。
「よっこいしょ」
ボクは、巨大果実をハッチに積み込む。
「シェイク楽しみ」
チサちゃんがニコニコしていると、男性はうれしそうに微笑んだ。
「向こうに着いたら、あんたらにはシェイクを無料で提供しよう。そう連絡しておくよ」
「ありがとうございます」
この熱い中、シェイクの冷たさは格別だろう。
「お願いしますぞ」
「はい」と返し、ハッチを閉めた。
チサちゃんを助手席に乗せて、運転席に乗り込む。
「じゃあ行くよ、チサちゃん」
「出発」
いよいよボクたちは、新たな目的地へ向けて旅立つ。
「今日は、ツーリングしましょ!」
マミちゃんがそう提案したので、今日はみんなでのんびり運転を楽しむことに。
「運転できたんだね、マミちゃん」
サイドカー付きバイクのグリップを握るのは、ヘルメットとゴーグルをつけたマミちゃんだ。
「ええ、通信教育で習ったわ!」
それって、危なくないか? 仕組みがクルマそのものじゃないし、いいのかも。
一応、見た目に反して成人はしているし。
山道になり、みんなの運転が慎重になっていく。
カーブを曲がるたびに、チサちゃんの頭が揺れた。
「酔わない?」
「平気」
しかし、クネクネを続ける短調な道が続くため、チサちゃんは少々退屈気味のご様子だ。
「ボクたちも、気分転換しようか」
幸い、本日は晴天なり。
ボクは、オンコに教わったとおり、コンソール中央にあるボタンをポチッと押した。
天井が、だんだん車の背部に折りたたまれていく。
「うわあ、すごいすごい!」
のけぞりながら、チサちゃんが「すごい」を連発する。
ハチシャクがコンバーチブル、いわゆる屋根なしのオープンカーになった。
風が、ダイレクトに伝わってくる。
自然の中を走っているから、開放感がすさまじい。
「気持ちいい! まだ夏なのに、エアコンがいらないくらい涼しい」
ボクが感想を述べると、チサちゃんもうんうんとうなずいた。シートを倒し、空を見上げる。
木々が生い茂る山道を、ハチシャクで駆け抜けていく。
「いい景色、チサちゃん?」
「とっても」
幻想的な世界を走っていると、ボクは実感した。
「次のカーブで山を抜けるぞ、ダイキ」
ネウロータくんが言うと、大きな道に戻ってくる。
ここからは、また直線だ。
「次のチェックポイントは、長めに休憩しましょ」
もう二時間も走り続けている。
トシコさんの意見に、みんなが賛成した。
『第二チェックポイントへ向かう皆さんに、お知らせします。ただいま、物流が滞っていると連絡が入りました。第一ポイントにある物資を、第二地点へ届けてください。目標を達成された方々から、スタンプを提供します』
なんでも、人手不足で物資が行き届かないらしい。
『なお、物資を届けたことでミッションクリアとなり、スタンプが付きます』
送る物資は、スーパーの裏にある倉庫センターで受け取るそうだ。
車を回して倉庫へ向かう。
倉庫は木箱が大量に用意されていて、魔王たちが手分けして物資を車両に積んでいた。倉庫の隣りにある受付で、手続きをするようだ。
「じゃあチサちゃん、受付に行こうか」
受付に行くと、あらかた物資は他の魔王たちが持っていったらしい。残っているのは、重量のあるモノばかりだった。運ぶだけだから、みんな軽いものを持っていきたいよね。
「アタシ、この肉の塊を持っていくわ!」
冷凍された肉ブロックを、マミちゃんは小さい身体で軽々と持ち上げる。
「乗せるところ、ある?」
「サイドカーに乗せるわ! 冷房の魔法があるから、炎天下でも大丈夫なんだから!」
バイクはタンデム、つまり二人乗りするそうだ。
「ぼくは、カツオブシでも持っていくかな」
まだ加工されていない山盛りのカツオブシを、ネウロータくんはオープンカーに乗せる。
「わたくしは小麦粉と、コーヒーのセットをいただきますわ」
ククちゃんは、コーヒー豆を選んだ。
運ぶのを手伝いこそしないものの、香りを嗅いで豆を厳選する。
さっそくミニバンの搭載性が生きた形になった。
「まさか、ここでミニバンの扱いやすさに助けられるとは」
ヨアンさんも、一安心の模様である。
「自分で飲んじゃダメよ!」
「そんなガメツくはありませんわ!」
マミちゃんが茶化すと、ククちゃんがキレた。
「ボクは、どうしよっか」
「ダイキ、あそこに人が」
チサちゃんが、スーパーの隅を指差す。
見ると、うずくまっている男性がいた。男性はやせ細った老人である。
果物らしき大きな球体を、小さなリアカーに乗せていた。が、荷台が潰れている。どれだけ重いのか。
「そこの人、手助けをしてくださらぬか」
「はい。この果物を運べばいいんですね?」
聞いてみると、男性はうなずく。
「左様じゃ。本当はワシが持っていく予定だったんじゃが、リアカーが壊れてしまって」
「ボクの車なら、丈夫なので持っていけるでしょう」
「かたじけない!」
天の恵みとばかりに、男性はボクとチサちゃんに手を合わせた。そんな大げさな。
「結構重いですね」
果実を持ち上げてみると、米袋くらいの重さがあった。
中身がぎっしりと詰まっているのだろう。
「これ一個で、一〇〇人分のシェイクを作れる」
第二通過地点にあるファストフード店で、シェイクの材料として卸す予定だったらしい。
「すごいですね」
持っているだけで、いい匂いがした。これは期待できそう。
「よっこいしょ」
ボクは、巨大果実をハッチに積み込む。
「シェイク楽しみ」
チサちゃんがニコニコしていると、男性はうれしそうに微笑んだ。
「向こうに着いたら、あんたらにはシェイクを無料で提供しよう。そう連絡しておくよ」
「ありがとうございます」
この熱い中、シェイクの冷たさは格別だろう。
「お願いしますぞ」
「はい」と返し、ハッチを閉めた。
チサちゃんを助手席に乗せて、運転席に乗り込む。
「じゃあ行くよ、チサちゃん」
「出発」
いよいよボクたちは、新たな目的地へ向けて旅立つ。
「今日は、ツーリングしましょ!」
マミちゃんがそう提案したので、今日はみんなでのんびり運転を楽しむことに。
「運転できたんだね、マミちゃん」
サイドカー付きバイクのグリップを握るのは、ヘルメットとゴーグルをつけたマミちゃんだ。
「ええ、通信教育で習ったわ!」
それって、危なくないか? 仕組みがクルマそのものじゃないし、いいのかも。
一応、見た目に反して成人はしているし。
山道になり、みんなの運転が慎重になっていく。
カーブを曲がるたびに、チサちゃんの頭が揺れた。
「酔わない?」
「平気」
しかし、クネクネを続ける短調な道が続くため、チサちゃんは少々退屈気味のご様子だ。
「ボクたちも、気分転換しようか」
幸い、本日は晴天なり。
ボクは、オンコに教わったとおり、コンソール中央にあるボタンをポチッと押した。
天井が、だんだん車の背部に折りたたまれていく。
「うわあ、すごいすごい!」
のけぞりながら、チサちゃんが「すごい」を連発する。
ハチシャクがコンバーチブル、いわゆる屋根なしのオープンカーになった。
風が、ダイレクトに伝わってくる。
自然の中を走っているから、開放感がすさまじい。
「気持ちいい! まだ夏なのに、エアコンがいらないくらい涼しい」
ボクが感想を述べると、チサちゃんもうんうんとうなずいた。シートを倒し、空を見上げる。
木々が生い茂る山道を、ハチシャクで駆け抜けていく。
「いい景色、チサちゃん?」
「とっても」
幻想的な世界を走っていると、ボクは実感した。
「次のカーブで山を抜けるぞ、ダイキ」
ネウロータくんが言うと、大きな道に戻ってくる。
ここからは、また直線だ。
「次のチェックポイントは、長めに休憩しましょ」
もう二時間も走り続けている。
トシコさんの意見に、みんなが賛成した。
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