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3-3 LOと早食い対決 ~温泉宮廷ビバノン~
ドライブスルーと、お仕事体験
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第二のポイントにたどり着く。そこは、シースルーという小さな村である。
物資は、近くの民家に届けた。たいそう喜んでくれて、シェイクの無料券を手に入れた。
「ファストフード店ってどこだろう?」
目ぼしい店は、見当たらないのだが。
田畑以外、特になにもない。ポイントには数台しか止まっていなかった。どの魔王たちも、食事をとっているか、お手洗い休憩に来ているだけだ。
しかし、ある一角だけは、繁盛している。
ETCか料金所かなと思ったが、違った。
小さな小屋に、魔王が窓越しに何かを呼びかけている。半周した後、いい匂いのする包をもらって返っていく。
「あれ、ドライブスルーだ!」
ボクは、ドライブスルーが魔界にもあることに感動した。
「なにそれ?」
「車に乗ったまま、ゴハンを注文できるんだ」
「すごい!」
駐車場に止まっている魔王たちも、ドライブスルーで買ったファストフードやドリンクで休憩している。
トシコさんたちは早々と用事を済ませて、真っ先にドライブスルーをオーダーしていた。
「ボクらも並ぼう」
「行く」
ハチシャクの番となり、ボクはインターホン前に向かって語りかけようとする。でも、チサちゃんの方が興味あるかも。
「チサちゃん、やってみたいよね?」
「やるやる!」
ボクはチサちゃんを抱えあげて、ボクの膝に載せた。
「すいませーん、チーズバーガーのセットを。ドリンクはオレンジジュース」
ハキハキした声で、チサちゃんが注文をする。
「サバのライスバーガーで、サラダのセットを。ホットのお茶をください」
ボクもオーダーを終えて、店を半周した。
「あと、シェイクの無料券もあります」
「承知いたしました」
女性店員さんがいて、お会計してくれる。
「スタンプカードをご提供ください」
「あ、はい」
スタンプカードに、店員さんがポンと判をしてくれた。
これで、ミッションはクリアらしい。
「おまたせしました」
「ありがと」
すぐに注文は通り、チサちゃんが包みを受け取る。
袋の中身を見て、ボクは「あれ?」と思った。
頼んだシェイクがないのだ。
「あのー、シェイクはどうなったんでしょうか?」
「これから別室で、『シェイクを作ろう体験』をなさってもらいますので」
なんでも、ボクたちが積んできたフルーツを使って、今からシェイクを作るという。果実の一部を使って。手作りのシェイクをいただけるとか。
「奥の小部屋へどうぞー」
ボクらは車をスルー出口の小屋に駐めた。
二人して、ビニール製の服を着て、ゴム手袋とマスクをする。衛生管理のためだ。
「今日は、お仕事体験に来てくださって、ありがとう。では、一緒に作りましょうね」
接客してくれたお姉さんではなく、感じの良いふくよかなオバサンが相手をしてくれる。
「どうしてボクたちだけ、体験できるんです?」
「農家の方から、プレゼントです。特別なスタンプをいただけますのよ」
特別スタンプがもらえるなら、張り切っちゃおうかな。
「では、このジューサーにフルーツを入れてちょうだい」
オバサンが用意したのは、手動のジューサーである。果物を押し出して汁だけをしぼり出す装置だ。木製の受け皿が、底に用意されている。
「はーい」
元気よく挨拶をして、チサちゃんが果物の切れ端をしぼり器に入れた。持ち手を下げて中身を圧縮する。
ジューサーの下から汁が出てきた。
「おおー」
初めてやるお仕事に、チサちゃんは興奮気味である。
「よくできました。では、次にこのジュースとアイスクリームと混ぜましょうね」
「はーい」
手で回すタイプのアイスクリーム製造器に、アイスとジュースを混ぜた。
ボクとチサちゃんが、力を合わせて回す。
「こねこね」
「すごい、柔らかくなってきた」
だんだんと、シェイクの形になってきた。
「あとは、容器に移して完成よ」
「やったー」
チサちゃんがバンザイしながら喜ぶ。
「では、いただきます。うん! おいしい!」
甘酸っぱい!
桃のように甘くて、瑞々しい酸味が後から来る。
「甘さがスッキリしてる!」
「これって、ラムネの味だ!」
あの大きな果実は、レモンだったのかもしれない。
ラムネって、正式名称は「レモネード」だし。
「炭酸の味がした」
「多分、中身が発酵してたんだろうね」
炭酸成分を内蔵しているなんて。
異世界の果物って、不思議だらけだな。
「じゃあ、特殊スタンプをあげるわね。お仕事お疲れさまでした」
スタンプ用紙に、オバサンがキンキラの判を押してくれた。
「ありがとうございました」と、二人であいさつをする。
「いいのよ。お礼を言うのはこっちなの」
「どういうことです?」
「実は、この果実を作っているのが、ウチの父なの」
オバサンのお父さんは、壊れた荷台で立ち往生していた人だったのである。
「いつもは父が持ってきてくれるんだけど、荷台がとうとう壊れてしまったらしくて、困っていたの」
チサちゃんが気づいてくれなかったら、この美味しいシェイクも、オバサンとの出会いもなかったんだ。
「父の果実を持ってきてくれて、ありがとう」
オバサンから、感謝の言葉をもらう。
物資は、近くの民家に届けた。たいそう喜んでくれて、シェイクの無料券を手に入れた。
「ファストフード店ってどこだろう?」
目ぼしい店は、見当たらないのだが。
田畑以外、特になにもない。ポイントには数台しか止まっていなかった。どの魔王たちも、食事をとっているか、お手洗い休憩に来ているだけだ。
しかし、ある一角だけは、繁盛している。
ETCか料金所かなと思ったが、違った。
小さな小屋に、魔王が窓越しに何かを呼びかけている。半周した後、いい匂いのする包をもらって返っていく。
「あれ、ドライブスルーだ!」
ボクは、ドライブスルーが魔界にもあることに感動した。
「なにそれ?」
「車に乗ったまま、ゴハンを注文できるんだ」
「すごい!」
駐車場に止まっている魔王たちも、ドライブスルーで買ったファストフードやドリンクで休憩している。
トシコさんたちは早々と用事を済ませて、真っ先にドライブスルーをオーダーしていた。
「ボクらも並ぼう」
「行く」
ハチシャクの番となり、ボクはインターホン前に向かって語りかけようとする。でも、チサちゃんの方が興味あるかも。
「チサちゃん、やってみたいよね?」
「やるやる!」
ボクはチサちゃんを抱えあげて、ボクの膝に載せた。
「すいませーん、チーズバーガーのセットを。ドリンクはオレンジジュース」
ハキハキした声で、チサちゃんが注文をする。
「サバのライスバーガーで、サラダのセットを。ホットのお茶をください」
ボクもオーダーを終えて、店を半周した。
「あと、シェイクの無料券もあります」
「承知いたしました」
女性店員さんがいて、お会計してくれる。
「スタンプカードをご提供ください」
「あ、はい」
スタンプカードに、店員さんがポンと判をしてくれた。
これで、ミッションはクリアらしい。
「おまたせしました」
「ありがと」
すぐに注文は通り、チサちゃんが包みを受け取る。
袋の中身を見て、ボクは「あれ?」と思った。
頼んだシェイクがないのだ。
「あのー、シェイクはどうなったんでしょうか?」
「これから別室で、『シェイクを作ろう体験』をなさってもらいますので」
なんでも、ボクたちが積んできたフルーツを使って、今からシェイクを作るという。果実の一部を使って。手作りのシェイクをいただけるとか。
「奥の小部屋へどうぞー」
ボクらは車をスルー出口の小屋に駐めた。
二人して、ビニール製の服を着て、ゴム手袋とマスクをする。衛生管理のためだ。
「今日は、お仕事体験に来てくださって、ありがとう。では、一緒に作りましょうね」
接客してくれたお姉さんではなく、感じの良いふくよかなオバサンが相手をしてくれる。
「どうしてボクたちだけ、体験できるんです?」
「農家の方から、プレゼントです。特別なスタンプをいただけますのよ」
特別スタンプがもらえるなら、張り切っちゃおうかな。
「では、このジューサーにフルーツを入れてちょうだい」
オバサンが用意したのは、手動のジューサーである。果物を押し出して汁だけをしぼり出す装置だ。木製の受け皿が、底に用意されている。
「はーい」
元気よく挨拶をして、チサちゃんが果物の切れ端をしぼり器に入れた。持ち手を下げて中身を圧縮する。
ジューサーの下から汁が出てきた。
「おおー」
初めてやるお仕事に、チサちゃんは興奮気味である。
「よくできました。では、次にこのジュースとアイスクリームと混ぜましょうね」
「はーい」
手で回すタイプのアイスクリーム製造器に、アイスとジュースを混ぜた。
ボクとチサちゃんが、力を合わせて回す。
「こねこね」
「すごい、柔らかくなってきた」
だんだんと、シェイクの形になってきた。
「あとは、容器に移して完成よ」
「やったー」
チサちゃんがバンザイしながら喜ぶ。
「では、いただきます。うん! おいしい!」
甘酸っぱい!
桃のように甘くて、瑞々しい酸味が後から来る。
「甘さがスッキリしてる!」
「これって、ラムネの味だ!」
あの大きな果実は、レモンだったのかもしれない。
ラムネって、正式名称は「レモネード」だし。
「炭酸の味がした」
「多分、中身が発酵してたんだろうね」
炭酸成分を内蔵しているなんて。
異世界の果物って、不思議だらけだな。
「じゃあ、特殊スタンプをあげるわね。お仕事お疲れさまでした」
スタンプ用紙に、オバサンがキンキラの判を押してくれた。
「ありがとうございました」と、二人であいさつをする。
「いいのよ。お礼を言うのはこっちなの」
「どういうことです?」
「実は、この果実を作っているのが、ウチの父なの」
オバサンのお父さんは、壊れた荷台で立ち往生していた人だったのである。
「いつもは父が持ってきてくれるんだけど、荷台がとうとう壊れてしまったらしくて、困っていたの」
チサちゃんが気づいてくれなかったら、この美味しいシェイクも、オバサンとの出会いもなかったんだ。
「父の果実を持ってきてくれて、ありがとう」
オバサンから、感謝の言葉をもらう。
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