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3-3 LOと早食い対決 ~温泉宮廷ビバノン~

浴衣パーティ

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「騙した形になりまして、申し訳ありません。クク様に代わりまして、お詫びいたします」

 ヨアンさんとククちゃんが、三つ指をつく。

「いいですよそんなの。頭を上げてください」
「ですが、皆さんにはご迷惑を」

 ヨアンさんが言うと、マミちゃんが「楽しかったわ!」と八重歯を見せる。
「バイクに乗るなんて経験ができて、楽しいわ! なんたって憧れのカリダカだもの!」

「マミ様は、皆さんと遊びたがっておりました。この機会を与えてくださって、心から感謝致します」
 ケイスさんが、ククちゃんたちに感謝を伝えた。

「礼を言うのは、こちらですわ。ありがとうございました。みなさま」
 涙声になって、ククちゃんはお礼を言ってくれた。 

「ネウロータくんも、この大会をずっと楽しみにしていたの。この日のために献立まで一生懸命考えて、こっそり試食会まで開いて。ねえ?」
「ちょ、トシコさん!」

 ネウロータくんは照れながらトシコさんに突っかかった後、セキ払いをする。

「ま、まあまあだな。ぼくも料理を振る舞うことができたし、よかった、ぞ」

 素直じゃないところは、相変わらずだね。

「一位の人は、みんなと楽しいキャンプができなかった。こんなにおいしいすき焼きも、分かち合えなかった。ドライブスルーもコインスナックも、楽しめなかった」
「そうですよ。こんな面白いイベント、ボクだと思いつきません」
 ボクも、マミちゃんたちの意見に賛成だ。

「ゴハンもおいしい。ありがとう、クク、ヨアン」
 満足げに、チサちゃんは言う。

 みんなして、「ありがとう」と伝えた。

「みなさん。楽しんでくださって、本当にありがとうございますわ。観光タイプのラリーにして、本当によかったと思っておりますのよ」
 涙声で、ククちゃんは謝辞を述べる。

「私も、いい経験をさせていただきました。差し出がましいのですが、我々もあなたがたの友達として、接してもよろしいでしょうか?」
「もちろんですよ! これからもよろしく、ヨアンさん。それにククちゃんも」

 チサちゃんがククちゃんと、ボクはヨアンさんと握手をした。

「ところでさ、ククちゃんはどうして、人間を玉座にしようと思ったの?」

「それは……」

 まだ秘密にしておきたいのだろう。
 ククちゃんは語ろうとしない。

 そこまで話して、余興が始まった。

『それでは歌っていただきましょう。【オーシャ・ニブラエリス】バンド様による、【快適な終末】!』

 女将さんが司会を担当している。

 宴会場でショーをするゲストって、オーシャ・バンドだったのか。

「し、失礼いたします!」
 ボーカルの顔を見た途端、ヨアンさんが立ち上がる。

「どこへ行くの?」
「部屋に戻りますわ! 皆様だけで楽しんでらして!」

 ククちゃんと二人して、ヨアンさんは慌てて宴会場を出ていく。

 ならばと、ボクたちも部屋へ戻った。


 背後で、他の魔王と歌うオーシャの歌声が。


「寝るまで、みんなで遊びましょ!」
 部屋に着くと、マミちゃんがそう提案してきた。

「うふふ。パジャマパーティならぬ、浴衣パーティね」
 トシコさんも、女子会に参加するかのように楽しんでいる。

「楽しそう」
 チサちゃんも乗ってきた。

「先に、飲み物を買いに行きましょ」
 ドリンクを求めて、売店へ。

 通り道に、ククちゃんの部屋があった。

 ククちゃんも浴衣パーティに交わらないか、聞いてみよう。部屋をノックしてみたが、ドアは開かない。

「お嬢様の体調が優れませんので、おやすみいたします。どうか、お気になさらず」

 部屋からヨアンさんの声がする。

「じゃあ、なにか欲しい物ありますか? 飲み物を買いに行くんですけど?」

「お気遣いありがとうございます。こちらはご心配なく」
 ヨアンさんは、そう返事をした。

「女将さんを呼びましょうか?」

「いいえ。お仕事の邪魔になりますわ。寝ていれば大丈夫ですので」
 今度は、ククちゃんの声が。あまり元気がなさそうだけど。

「わかりました。おやすみなさい」

 人数分のラムネ瓶を買って、みんなで部屋に戻った。

 部屋はドア以外は和室の造りで、二人部屋である。しかし、今は六人固まっているので、少々狭い。

 みんな円になって、畳に横たわった。

「で、ククたち二人なんだけど?」
 マミチャンの一言で、浴衣パーティは秘密会議へと姿を変える。

「やはり、まだなにか隠しているご様子です」
「尾行の様子は?」

 ボクが聞いてみると、ケイスさんは首を振った。
「特には。よほど手慣れているのか、諦めたのか」

「諦めたとは、考えにくいですね」
「息を潜めていると」
「でしょうね。引き続き、警戒しましょう」

 見張りも兼ねて、ヨアンさんたちにも参加してもらいたかったんだけど。

「あんまり詮索するのもなぁ。本人たちの問題だし」
 ネウロータくんは、ククちゃんたち二人の問題に消極的だ。

「とはいえ、なにかトラブルに巻き込まれているなら、助けないと」

 ボクが意見すると、ネウロータくんは「うーん」とうなる。

「明らかに、それを迷惑がっているからなぁ。ぼくたちから手を差し伸べると、かえって逃げちゃう気がする」

「私も、同じ意見かしら。二人は、私たちに負担をかけたくないと思ってる」
 トシコさんまで。

「今は、見守るしかないわね」
「ですが」

 見ているしかないというのが、もどかしい。なにかいい方法はないか。

「チサちゃんは、なにかいい方法はない?」

 返事がない。チサちゃんは眠っていた。疲れちゃったみたいだ。

 ボクは布団を敷く。

「あたしたちも寝ましょ!」

 この日は、解散となった。
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