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3-4 ダイキ VS LO【ハメルカバー】 リアル魔リカー対決!

顕現、ハメルカバー

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 一度、現場を見せてもらう。

 レース会場への入り口は、王宮から見える霧まみれの山を進んですぐのところにあった。

 霧を抜けた途端、ワープしてきたような錯覚に陥ったけど。
 まあいい、考えないようにしよう。

「古戦場【ワターキシマ】の説明はしとるな? このコースを先に参集したやつが勝ちじゃ」
「慣らし運転もしていくといい」

 LO天使たちが言うので、ボクたちは車を用意する。

「最初の二週は軽く流しましょ! 三周目でレースよ!」
 グリップを握り、マミちゃんがアクセルを吹かす。

「望むところだ!」
 マミちゃんとネウロータくんが、やる気になった。

 二人はレースに関係ない、参加賞の枠だ。
 リタイアさえしなければ、スタンプをもらえる。

「おいLO。しょうぶしろー」

 ボクたちが話し合っていると、幼女魔王コンビが天使コンビに対戦を要求してきた。
 魔王と玉座が乗っているのは、古めかしいスーパーカーだ。

「ええじゃろ。ウォーミングアップじゃ」
 LO天使たちが、空に向けて指を鳴らした。

 現れたのは、南米のカーニバルで見るような巨大フロートである。大量のアンプを、電飾や羽根でデコレーションしていた。

「それが二人の車? フロートって、遅いよね?」

 フロートって、パレードをのっそりゆっくりと進むイメージしかないけど。

「まあ見とれ」

 と、ソーが車輪を担ぐかのように腕に通す。セーラさんも、同じようにした。

「変形!」

 ロボットであるソーの形状がバラバラになって、セーラさんを包み込む。
 まるでドレンのように、ロボットから車両へと変形する。

「なにあれ⁉」
「すごい!」

 あまりにも規格外な状況に、ボクたちは言葉を失う。

「顕現、ハメルカバーッ!」

 フロートとLO同士が融合して、一体の多脚戦車と化した! 
 三葉虫を模した、ステージを思わせるシルエットである。
 セーラさんの背面には、自動演奏の楽器類と大量のアンプが。

「どうじゃ? これが我らが主神、神の戦車【ハメルカバー】やけん!」

 ボンネットに当たる部分から、目玉が開く。明らかにソーの目だった。

「もっとも、これはレプリカだがな」
 火を吹くギターを持ちながら、セーラさんがフロートの上に。

「運転は頼むけん、セーラ」
「心得ている、ソー」

 勝負は、どちらかがコースを三週しきったら勝ちだ。

 LOの合図で、スタートとなる。

 ボク以外の全員が、スタートダッシュを決めた。特に、勝負を挑んできた幼女魔王は、かなりのやり手のようだ。

 ハメルカバーも早い。全然スピードが出そうな車体じゃないのに! ゴ●ブリを思わせるスピードで、他の選手を追いかける。

 セーラさんの役割は、一体なんなんだろう?
 屋根の上でギターを弾いているだけなんだけど?

 時々ギターの先から火が出ている。
 セーラさんのギターが激しく唸るたび、周辺の楽器も演奏が激しさを増した。

 一方、ボクは言われたとおり、本当に流す。ドライブだもんね。

「うわっ、ジェットコースターみたいに一回転するよ」

 ゆっくり進んでいるから、遠心力が気になった。
 しかし、のんびり走っていても地面に落ちたりなんかしない。
 ちゃんと重力が働いているみたいだ。
 平衡感覚が無くなりそう。

 謎の重力を楽しみながら、チサちゃんはウキウキしている。

「景色もきれいだね」

 とても、大昔に戦場だったという様子がない。
 道ももっと細いと思っていたけど、二〇台くらい横並びになっても密にはならないだろう。

「おっ。これは」

 宝箱の絵が書かれたパネルが、目の前に。
 ゲームだと、これを踏むとアイテムが出るのだ。

「通過してみるね」
 宝箱の絵を踏み越える。

「バナナの皮だね」

 車サイズの『バナナの皮』をゲットした。
 しかし、みんなボクたちを追い越してしまっている。
 使いみちはない。

「その辺に置いて」

 チサちゃんが言うので、皮を道端に使用した。
 トラップとして機能するだろうか。

「お先にじゃけん!」
 ハメルカバーが、ボクたちを追い越した。

「うわ、もう抜かしてきた⁉」
 ボクが驚く間もなく、続いて少年魔王が横を通り過ぎる。

「ダイキ、いくらなんでもノンビリすぎじゃない?」
 サイドカーから、マミちゃんが声をかけてきた。

「ネウロータたちも、すぐそこまで来ているわ!」

 あ、ホントだ。トシコさんのオープンカーが見える。

「わたしたちはデート中。構わず先に行ってて」
 チサちゃんは、マイペースだ。

「そう、わかったわ。じゃあお先に!」
 マミちゃんは、レースへと戻っていく。

「楽しんでねー」
 直後、トシコさんもボクらを追い抜いた。

 ボクたちは、まだ半分もコースを走っていない。
「ちょっとスピードを上げるね」

 ボクはアクセルを強く踏む。

 S字コーナーが迫ってきた。練習も兼ねて、突っ込む。


「なにこれ、じゅうたんみたいな道だよ!」
 
 タオルの上を走っているような感覚に陥る。
 おまけに、進行方向は垂直になっていた。
 

「大丈夫。ダイキなら走れる」

 クネクネする道を駆け抜ける。

「おおおっ」
 大したドライブテクニックを持たないボクでも、どうにかうまく切り抜けた。

「ダイキ、魔リカーと大違い」
「ボクも驚いてるよ」

 きっと、黒竜ルチャのセンスが手助けしてくれたんだ。
 ルチャのスキルに、ゲームの項目はなかったもんね。
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