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3-4 ダイキ VS LO【ハメルカバー】 リアル魔リカー対決!

止まるんじゃねえぞ

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『始まっちまったな、お前ら。オレは司会をやめねえからよ、止まるんじゃねえぞ!』
 ゼーゼマンの舌が冴える。

 ボクの操るハチシャクも、この間とは別のマシンみたいだ。

 固まった一団の、わずかな隙間に入り込む。
 意識するでもなく、スルスルと追い抜いていった。

 ボクの眼前に、空を低空飛行で飛ぶドラゴンのシッポが見えてきた。いつもなら、ボクは日和って先へ行かせる。でも、今日は違うんだ。ドラゴンとだって勝負する。

「なんか来た」
 龍を操る少年魔王が、こちらに気づいた。

『直撃させよ』
 ドラゴンがなにか催促する。攻撃の準備があるようだ。

 車サイズの大きなネズミ花火が、ハチシャクに向けて投げられた。ゲームだと、ぶつかったらスリップしてしまうアイテムだ。

「なんの!」
 ボクはハチシャクの右半分を浮かせた。片輪走行で、花火を避ける。

 行き場を失った花火が、他のプレイヤーに当たった。爆裂し、複数台が餌食に。結構な大惨事となった。

「ダイキ、お返し」
「よし。何にする?」
「サンダーボルトが出た」

 アイテムテーブルで、いいのを引く。

 チサちゃんが、サンダーを発動させた。

 前にいた少年魔王に、デフォルメされた雷が落ちる。少年魔王が、大幅に減速した。

 黒焦げになったドラゴンコンビを見送って、ボクはアクセルを深く踏む。

「他に、何がある?」
「ロケットブースト」

 車体を一定時間ロケットに変形させて、高速移動するアイテムだ。その代わり減速できない。

「じゃあブーストで、一気に他の人達も抜き去ろう」
 アイテム欄から、ロケットを選択する。

 強烈なGがかかり、大加速した。

「おおお、使ったことがないから、勝手がわからない!」

 風景を堪能する余裕すらない。ハンドルに神経を研ぎ澄まし、ひたすら前を向く。外の景色が、線にしか見えなくなっている。

「ダイキ、風になってる」
「うん。ボクは風になるんだ。二人を助けなきゃ」

 とはいえ目の前には、じゅうたん型のコーナーが待ち構えている。ロケット状態では、ブレーキもきかない。

 真っ直ぐなコースで使えばよかったか。
 こんなにスピードがあっては、ジェットコースターのようなカーブを曲がれるはずがない。コースアウトまっしぐらだ。

「怖がってちゃダメだ。いける!」
 ボクはハンドルに全神経を集中させる。

 慣性に任せ、S字だらけのコースも難なく通り抜けた。ステータスを一極集中に振り直したおかげだろう。

 カーブだらけの道が終わると、ロケット状態も解除された。

「ふう!」
 一息ついて、腕の震えを気合で止める。

 二周目に突入した。

『おっと、こいつは大番狂わせだな! 予想を裏切り、オサナイダイキが追い上げているぞ!』
 ゼーゼマンのアナウンスに見送られ、更に加速する。

 いつの間にか、ボクたちの車は他の走者を周回遅れにしていた。
 こんなこと初めてである。
 いつもはボクの方が抜かされるのに。

 マミちゃんやネウロータくんの背中が見えた。
 ゲームでもありえなかった光景である。

「やるじゃない、ダイキ!」
 振り返ったマミちゃんが、サイドカーから称賛してくれた。

「さすがは、ぼくのライバルだな!」
 ネウロータくんも、本気モードでボクらに食らいつく。

 マミちゃんとネウロータくんの上位チームに、肩を並べる。並走状態になった。

 いつものゲームなら、二人に手も足も出ない。接待プレイってわけでもないのに。でも今は、ボクとハメルカバーとの戦いだ。忖度なんてできない。

「ダイキさん、お気をつけて! なにか大型の反応が来ます」
 ケイスさんが、サイドミラーを見ながら警告してきた。

『ギャハハーッ! どけどけぇ!』

 突然、サイドミラーの中に、LOが。

『このレースに参加しているLOは、ハメルカバーだけじゃないんだぜッ!』

 男女入り混じった声で、しゃべっている。
 窓を閉めているのに、声が直接脳内に響いてきた。

「ダイキ、左サイドに敵!」

 ボクは左方向を見る。

 やたら巨大なLOが、土砂のように迫ってきた。アメーバ状で、今まで倒してきたLOが溶け込んでいる。
 その大きさは、ハメルカバーの比ではない。

 猛烈な勢いのせいで、他の魔王が気圧されていた。
 煙たそうな顔をしながら、道を譲っている。
 気持ち悪くて、触りたくないみたい。

 あんな参加者いたっけ?

「複数のLOが寄り集まって、一つの塊になっている」

 だとしたら、その速度は倍増しているわけか。
 命を削ってスピードを上げている。

 マミちゃんもネウロータくんも、避けるので精一杯だ。

『オサナイダイキ、かくごぉおおお⁉』

 このままでは追い抜かれてしまうかも。でも、負けない。

 そう思った直後、アメーバLOの前に一台のバイクが取り付いた。

「ダイキ様、勝負願います」

 さすがセイさん! LOの追撃すら寄せ付けず、さっそうと追い抜く。

『おのれぇセイ・ショガク! LOとしての誇りはないのか⁉ 魔王に返り咲きたいという欲求は⁉』

「チサ様との勝負に比べたら、誇りなど」

 LOからの罵声に、セイさんは毅然と言い返した。

「共謀して魔王を蹴落とそうなどと考えるあなた方とは違うのです。魔王になりたいなら、身体一つで勝負なさい!」
 セイさんは言ってのけ、LOの野心をくじく。
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