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第四章 因縁の地下遺跡へ
第35話 ギソの正体
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「どういった仕組みなのです? ここが、九層だなんて」
エレオノル姫が、この迷宮の仕組みについて、ギソに問いかける。
「遺跡の一部と、迷宮の一部を入れ替えているのさ。お前たちがいるのは、間違いなく九層だよ」
「では、九層に入るためのアイテムがあるとは、ウソなのですか?」
「ウソじゃない。九層に続くカギは、俺の身体だ」
たしかにフルドレンなら、迷宮と遺跡の一部を移動させることも可能かもしれない。
「おのれ、ボボル・ギソ!」
ザスキアさんが、問答無用で切りかかる。
ボクは魔力の気配を感じ取って、飛びかかった。ザスキアさんを、取り押さえる。
「待って、ザスキアさん!」
「離せ、ヒューゴ!」
キルシュも「よしなよ!」と、ザスキアさんを止めた。
「ヤツの足元をよく見ろっての、ザスキア!」
ギソの足元を、ザスキア指差す。
「幻影?」
真っ黒い空間が広がっているのを確認して、ザスキアさんが後退した。
ギソの真下には、大きな穴が空いている。下は、第一〇階層でさえない。どこに落ちていくのかも、わからなかった。
「ほお、よく見破ったな」
ギソが、ニヤリと笑う。この姿も、幻影だ。
「あなたの目的は、なんですか?」
エレオノル姫が、幻影のギソに問いかける。
「俺はただ、生きていたかっただけだ」
ギソは、【聖なる神父】セニュト・バシュと、トロルとの間に生まれた子どもだった。
「あなたの正体は、フルドレン。トロル族の末裔だったんですね?」
「ああ。俺たち一族は、王都で研究をさせてもらっていたんじゃない。王家に監禁されていたんだ。魔力を利用され、ずっとひどい目に遭わされ続けてきたのだ」
「つまり、あなたたちは実験材料だったと?」
「そのとおりさ」
何年も研究材料にされ、彼の顔はもうボロボロになっていた。それでも、魔力は衰えるどころか、膨れ上がっていた。憎悪によって。
王家の負の遺産。怪物。いつも、そんなレッテルがつきまとう。
「だから、復讐してやったのさ。跡継ぎを葬り去るためにな!」
ギソの目的は、最初からエルンスト王子とエレオノル姫。この兄妹だったのだ。
王都のおぞましさを知って、姫が青ざめる。
「あなた方が受けた屈辱は、いかような手段を持ってしても償います。だから、王家を脅かすことは」
「俺の目的は、王都の殲滅だ。お前たちのような血筋を消し去り、滅びるがいい。セニュト・バシュと同じように」
「セニュト・バシュも、あなた方一族が滅ぼしたのですか?」
「もう、後戻りはできぬ。俺たちは、すべてを憎む。エレオノル姫、あなたは王家がこのまま俺の手によって崩壊していくのを、黙ってみているがいい」
大量の魔物たちが、このフロアに押し寄せてきた。ホムンクルスたちである。それも、かなりハイレベルの。
「こいつら、一体一体がレッサー・デーモンクラスよ!」
「そうだ。今完成したホムンクルスなら、地上に出ても魔力が干渉しない。ようやく、俺の念願が叶うのだ。このホムンクルスの兵隊を作るのに、どれだけの時間を費やしたか」
騎士たちが、ホムンクルスたちに苦戦を強いられている。たった一人のハイエルフ魔術師ホムンクルスに、多くの兵士たちが押されていた。
このホムンクルスたち全員が、多分今まであの遺跡で死んでいった冒険者なのだろう。それを実験道具にして。
中でも、恐ろしく強いのは……。
「兄さん、やめてください!」
さっきまで死体だった、エルンスト王子である。
王子の顔には異形のマスクが縫い付けられていて、ギソの意のままに動くゾンビとなっていた。
「俺の最高傑作、【デーモンプリンス】だ。やはり、王家の力を持った身体は、強いな。並の鍛えられ方ではない」
「ゴチャゴチャうるさいわね。ギータを王家に放てば、よかったじゃない」
「あれは、あの地でなければ生きられない。王家を壊す兵士としては、釣り合わぬのだ。それに、復讐のためにただの魔物を放つだけでは芸がない。そんなディザスターのような行いで、俺の気は晴れぬ。やはり人間型、それも自分が大事に育てた息子に殺されるのが、あのクソ王にはふさわしかろう」
ギソはゲハハと、まるで老人のような声で高笑いをする。
もし、ロイド兄さんが逃げ切れていなかったら、今頃彼も、このホムンクルスに。
そう考えると、ギソを許せない。
「貴様も死んで、ホムンクルスにしてやろう。チビの魔法戦……な!?」
ギソが指示を送る前に、ボクはホムンクルス兵士を数体、一瞬で斬り捨てた。
「秘剣・【ツバメ返し】」
ボクは、剣を収める。
「ヒューゴ、あんたさっきも、爆風を利用しないでツバメ返しを放てていたわよね? どうしたの?」
「別に。単純に素早さのステータスを上げただけ」
加えて、【身体強化】で、全身を爆速させたのだ。
「負担が、とんでもなくなってない?」
「辛いよ、確かに」
全身の骨にはヒビが入って、痛い。全力の身体強化をする度に、ボクは治癒魔法を自分にかけている。それでも、痛みが引かなかった。
痛み以上に、ボクはギソが許せない。ギソのしていることは、死者への冒涜だ。
「ギソのやったことは、王家だけの問題じゃない!」
コイツの野望は、絶対に叩き潰す。
エレオノル姫が、この迷宮の仕組みについて、ギソに問いかける。
「遺跡の一部と、迷宮の一部を入れ替えているのさ。お前たちがいるのは、間違いなく九層だよ」
「では、九層に入るためのアイテムがあるとは、ウソなのですか?」
「ウソじゃない。九層に続くカギは、俺の身体だ」
たしかにフルドレンなら、迷宮と遺跡の一部を移動させることも可能かもしれない。
「おのれ、ボボル・ギソ!」
ザスキアさんが、問答無用で切りかかる。
ボクは魔力の気配を感じ取って、飛びかかった。ザスキアさんを、取り押さえる。
「待って、ザスキアさん!」
「離せ、ヒューゴ!」
キルシュも「よしなよ!」と、ザスキアさんを止めた。
「ヤツの足元をよく見ろっての、ザスキア!」
ギソの足元を、ザスキア指差す。
「幻影?」
真っ黒い空間が広がっているのを確認して、ザスキアさんが後退した。
ギソの真下には、大きな穴が空いている。下は、第一〇階層でさえない。どこに落ちていくのかも、わからなかった。
「ほお、よく見破ったな」
ギソが、ニヤリと笑う。この姿も、幻影だ。
「あなたの目的は、なんですか?」
エレオノル姫が、幻影のギソに問いかける。
「俺はただ、生きていたかっただけだ」
ギソは、【聖なる神父】セニュト・バシュと、トロルとの間に生まれた子どもだった。
「あなたの正体は、フルドレン。トロル族の末裔だったんですね?」
「ああ。俺たち一族は、王都で研究をさせてもらっていたんじゃない。王家に監禁されていたんだ。魔力を利用され、ずっとひどい目に遭わされ続けてきたのだ」
「つまり、あなたたちは実験材料だったと?」
「そのとおりさ」
何年も研究材料にされ、彼の顔はもうボロボロになっていた。それでも、魔力は衰えるどころか、膨れ上がっていた。憎悪によって。
王家の負の遺産。怪物。いつも、そんなレッテルがつきまとう。
「だから、復讐してやったのさ。跡継ぎを葬り去るためにな!」
ギソの目的は、最初からエルンスト王子とエレオノル姫。この兄妹だったのだ。
王都のおぞましさを知って、姫が青ざめる。
「あなた方が受けた屈辱は、いかような手段を持ってしても償います。だから、王家を脅かすことは」
「俺の目的は、王都の殲滅だ。お前たちのような血筋を消し去り、滅びるがいい。セニュト・バシュと同じように」
「セニュト・バシュも、あなた方一族が滅ぼしたのですか?」
「もう、後戻りはできぬ。俺たちは、すべてを憎む。エレオノル姫、あなたは王家がこのまま俺の手によって崩壊していくのを、黙ってみているがいい」
大量の魔物たちが、このフロアに押し寄せてきた。ホムンクルスたちである。それも、かなりハイレベルの。
「こいつら、一体一体がレッサー・デーモンクラスよ!」
「そうだ。今完成したホムンクルスなら、地上に出ても魔力が干渉しない。ようやく、俺の念願が叶うのだ。このホムンクルスの兵隊を作るのに、どれだけの時間を費やしたか」
騎士たちが、ホムンクルスたちに苦戦を強いられている。たった一人のハイエルフ魔術師ホムンクルスに、多くの兵士たちが押されていた。
このホムンクルスたち全員が、多分今まであの遺跡で死んでいった冒険者なのだろう。それを実験道具にして。
中でも、恐ろしく強いのは……。
「兄さん、やめてください!」
さっきまで死体だった、エルンスト王子である。
王子の顔には異形のマスクが縫い付けられていて、ギソの意のままに動くゾンビとなっていた。
「俺の最高傑作、【デーモンプリンス】だ。やはり、王家の力を持った身体は、強いな。並の鍛えられ方ではない」
「ゴチャゴチャうるさいわね。ギータを王家に放てば、よかったじゃない」
「あれは、あの地でなければ生きられない。王家を壊す兵士としては、釣り合わぬのだ。それに、復讐のためにただの魔物を放つだけでは芸がない。そんなディザスターのような行いで、俺の気は晴れぬ。やはり人間型、それも自分が大事に育てた息子に殺されるのが、あのクソ王にはふさわしかろう」
ギソはゲハハと、まるで老人のような声で高笑いをする。
もし、ロイド兄さんが逃げ切れていなかったら、今頃彼も、このホムンクルスに。
そう考えると、ギソを許せない。
「貴様も死んで、ホムンクルスにしてやろう。チビの魔法戦……な!?」
ギソが指示を送る前に、ボクはホムンクルス兵士を数体、一瞬で斬り捨てた。
「秘剣・【ツバメ返し】」
ボクは、剣を収める。
「ヒューゴ、あんたさっきも、爆風を利用しないでツバメ返しを放てていたわよね? どうしたの?」
「別に。単純に素早さのステータスを上げただけ」
加えて、【身体強化】で、全身を爆速させたのだ。
「負担が、とんでもなくなってない?」
「辛いよ、確かに」
全身の骨にはヒビが入って、痛い。全力の身体強化をする度に、ボクは治癒魔法を自分にかけている。それでも、痛みが引かなかった。
痛み以上に、ボクはギソが許せない。ギソのしていることは、死者への冒涜だ。
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コイツの野望は、絶対に叩き潰す。
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