187 / 230
最終部 レアドロップしない男と、レアドロップしまくっていた男 4-1 ふぬけたドワーフを、殴ります
気の抜けたドワーフ
しおりを挟む
翌朝になっても、コナツに元気がない。
女将さんが作った夕飯どころか、朝食も残している。酒も飲んでいない。
俺たちが集めてきたレアアイテムにも、関心を示さなくなっていた。
「ランバート。コナツったら装備品も修理だけ請け負って、新作を作ろうとはしないわ」
銃の修理を頼んだフェリシアが、肩を落とす。
「おめえらが、やってみろ。いい機会だ。一流の素材に触れておけ」
修理さえ、コナツは弟子に任せっきりだ。
請け負った弟子の方も「うす」と返事はするが、気乗りしていない様子である。やはり、大将があんな感じでは、活気も薄れるのだろう。
弟子の成長には、いいかもしれない。ただ、コナツには元気になってもらわないと。
コナツはすっかり、気の抜けたエールのような状態になってしまった。
「どうしたです? コナツ氏。お腹痛いですか? それとも、誰かとケンカしたですか?」
事情を知らないダフネちゃんが、俺に質問してくる。
「さっきテレビに出ていた男なんだが、俺とコナツにとって親友だったんだ」
「やはり、ショックだったのでしょうね」
気遣ってくれたのか、サピィが俺の手を取る。
コナツに覇気がないのは、クリム・エアハートが指名手配となったからだ。
相変わらず報道では、クリムの潜伏情報を求めている。
俺とコナツの親友が、テロの首謀者だなんて。
「話す場所を変えよう」
俺たちは、ポータルを使ってペールディネへ。クリムの妹である、グレースの様子も見に行かないと。
「だから、あたしは知らないって言っているでしょう! 母に聞いても同じよ!」
エプロン姿のグレースが、騎士団に向かって塩を撒いている。
たまらず、騎士たちは退散していく。
「まったくもう!」
塩の入ったボールを、グレースがヒザで蹴った。
「大変だな、グレース」
「ランバート! 聞いてよ! 朝からこんな感じなのよ! もう商売上がったりなんだけど」
「わかったわかった。とにかく大所帯で押しかけてやるから、なんか作ってくれ」
「ええ! もうストレス発散には料理しかないわ!」
料理が来るまでの間に、ダフネちゃんに事情を説明する。
「フムフムです。興味深いです。敵の立てた戦略だとしたら、これ以上ないのです」
「やっぱり、χの思うツボだったってわけか」
「はいです。どうも、クリム氏はχが滅んだ後も精力的に活動していたようなのです。きっと、そのスキを狙われたです」
少ない情報の中から、ダフネちゃんが分析した。
俺たちは昼食と、特大のバケツプリンをいただく。
相変わらず、ここのハンバーグとトマトスパは最高だ。
「うんま! かーちゃん、こんなの作ってくれないんだぞ! チビ共に教えてやろ!」
コナツの娘であるトウコが、一番喜んだ。いつもせんべいとか、おやつといえば油菓子ばかりらしい。
「ありがとう。でも大変じゃない? お父さんがショボくれるって」
「そっちの方がヤバいだろ。兄貴のデマが、広がっているだから」
「そうね。でも、あたしはいいのよ。もう結婚して、エアハートの家を離れた身だから。夫も、支えになってくれているわ」
辛いはずなのに、グレースは気丈に振る舞っている。
「妻の様子を見に来てくださって、ありがとう」
グレースの夫が、サービスのコーヒーを淹れてくれた。アイスクリームが載っている。甘いアイスが、コーヒーの苦味にちょうどいい。
「これ、兄さんの好物だったのよね」
「ごめん。思い出させてしまったか?」
「いいの。みんなには、兄を忘れないで欲しいから」
グレース夫妻は、互いを信頼し合う。
「クリムを貶めたのがχだとして、そんなの一体誰が」
「以前拾った、χの首領のデータ解析は、まだなんですよね?」
χの首領は、サピィが倒した。
「ああ。コナツでも突破できないくらい、暗号化されている」
「ヒルデ王女にも、協力を要請しましょう」
「そうか。デッカーだな?」
デッカー、つまり電子機器に詳しい者たちに頼んでみるか。
女将さんが作った夕飯どころか、朝食も残している。酒も飲んでいない。
俺たちが集めてきたレアアイテムにも、関心を示さなくなっていた。
「ランバート。コナツったら装備品も修理だけ請け負って、新作を作ろうとはしないわ」
銃の修理を頼んだフェリシアが、肩を落とす。
「おめえらが、やってみろ。いい機会だ。一流の素材に触れておけ」
修理さえ、コナツは弟子に任せっきりだ。
請け負った弟子の方も「うす」と返事はするが、気乗りしていない様子である。やはり、大将があんな感じでは、活気も薄れるのだろう。
弟子の成長には、いいかもしれない。ただ、コナツには元気になってもらわないと。
コナツはすっかり、気の抜けたエールのような状態になってしまった。
「どうしたです? コナツ氏。お腹痛いですか? それとも、誰かとケンカしたですか?」
事情を知らないダフネちゃんが、俺に質問してくる。
「さっきテレビに出ていた男なんだが、俺とコナツにとって親友だったんだ」
「やはり、ショックだったのでしょうね」
気遣ってくれたのか、サピィが俺の手を取る。
コナツに覇気がないのは、クリム・エアハートが指名手配となったからだ。
相変わらず報道では、クリムの潜伏情報を求めている。
俺とコナツの親友が、テロの首謀者だなんて。
「話す場所を変えよう」
俺たちは、ポータルを使ってペールディネへ。クリムの妹である、グレースの様子も見に行かないと。
「だから、あたしは知らないって言っているでしょう! 母に聞いても同じよ!」
エプロン姿のグレースが、騎士団に向かって塩を撒いている。
たまらず、騎士たちは退散していく。
「まったくもう!」
塩の入ったボールを、グレースがヒザで蹴った。
「大変だな、グレース」
「ランバート! 聞いてよ! 朝からこんな感じなのよ! もう商売上がったりなんだけど」
「わかったわかった。とにかく大所帯で押しかけてやるから、なんか作ってくれ」
「ええ! もうストレス発散には料理しかないわ!」
料理が来るまでの間に、ダフネちゃんに事情を説明する。
「フムフムです。興味深いです。敵の立てた戦略だとしたら、これ以上ないのです」
「やっぱり、χの思うツボだったってわけか」
「はいです。どうも、クリム氏はχが滅んだ後も精力的に活動していたようなのです。きっと、そのスキを狙われたです」
少ない情報の中から、ダフネちゃんが分析した。
俺たちは昼食と、特大のバケツプリンをいただく。
相変わらず、ここのハンバーグとトマトスパは最高だ。
「うんま! かーちゃん、こんなの作ってくれないんだぞ! チビ共に教えてやろ!」
コナツの娘であるトウコが、一番喜んだ。いつもせんべいとか、おやつといえば油菓子ばかりらしい。
「ありがとう。でも大変じゃない? お父さんがショボくれるって」
「そっちの方がヤバいだろ。兄貴のデマが、広がっているだから」
「そうね。でも、あたしはいいのよ。もう結婚して、エアハートの家を離れた身だから。夫も、支えになってくれているわ」
辛いはずなのに、グレースは気丈に振る舞っている。
「妻の様子を見に来てくださって、ありがとう」
グレースの夫が、サービスのコーヒーを淹れてくれた。アイスクリームが載っている。甘いアイスが、コーヒーの苦味にちょうどいい。
「これ、兄さんの好物だったのよね」
「ごめん。思い出させてしまったか?」
「いいの。みんなには、兄を忘れないで欲しいから」
グレース夫妻は、互いを信頼し合う。
「クリムを貶めたのがχだとして、そんなの一体誰が」
「以前拾った、χの首領のデータ解析は、まだなんですよね?」
χの首領は、サピィが倒した。
「ああ。コナツでも突破できないくらい、暗号化されている」
「ヒルデ王女にも、協力を要請しましょう」
「そうか。デッカーだな?」
デッカー、つまり電子機器に詳しい者たちに頼んでみるか。
0
あなたにおすすめの小説
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる