レアドロップしない男、魔法付与装備を生成できる女スライム魔王に溺愛されて、【レアアイテムを破壊する男】として覚醒!

椎名 富比路

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最終部 レアドロップしない男と、レアドロップしまくっていた男 4-1 ふぬけたドワーフを、殴ります

マギマンサー再び

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 ヒルデ王女のいる、サドラーへ移動した。

「お久しぶりです、ランバートさんにサピィさん、それにみなさんも」
「すまんが、デッカーを手配してもらえないか? 詳しい事情は、後で説明をする」


 俺はあいさつもそこそこに、ヒルデ王女に依頼をする。

 サイバー関連の情報を吸い上げるデッカーに、χカイの残した情報がないか調査してもらうのだ。

「ランバートさんのお友だちにテロ容疑がかかって、潔白を証明なさる? でしたら、ぜひご協力させてください」

 すぐに、サドラーじゅうのデッカーが集められる。

 クリムの無実を証明するために、デッカーは大いに役立った。

 コナツが丁寧に、パーツを分解してくれたおかげである。へたに触ると、中のパーツごと爆発してしまう、危険な部品が大量に敷き詰められていたらしい。

「我も手伝いましょう」

 シーデーが、セキュリティ打倒に手を貸す。そういえば、シーデーもデッカーだったか。とはいえ、シーデーだけではどうにもならない。やはり大勢のデッカーがいて、ようやく障壁を壊せるそうだ。


 何もできないと思ったのか、トウコはみんなにお茶や食事を振る舞う。

 どうにか、ファイアーウォールを突破することはできた。

 χのメンバー、さらに資金提供者のリストがずらりと並ぶ。

「すごいわね。各国の首脳クラスまで、χに加担していたなんて」

 フェリシアはさっそく、義理の兄が王を勤めるペールディネにデータを送った。

「内部から国を破壊して、自分たちの思い通りに動かすつもりだったんだろうな」

 これで、χを徹底的に弱らせることはできる。

 秘密結社というのは、資金源を立たれると弱いものだ。いくら志が高くても、先立つ物がなければ実行力さえ失う。

 しかし、それ以外の有力な情報がない。決定打が。クリムが向かいそうな場所、なぜクリムに容疑がかかったのか、敵の本拠地さえ。

「お力になれず、申し訳ありません」

 結論から言うと、もう手がかりはつかめなかった。

「いや、十分だ。ありがとう」
「これから先は、マギ・マンサーでもいらっしゃらないと」
「マギ・マンサーだと?」
「はい」

 なんでも、特殊な術式が施されているエリアが最終地点にあり、デッカーでは入り込めないのだとか。

「ここは、姫様の出番ですな」

 シーデーが、サピィと席を代わった。

「わかりました」

 サピィが、意識を集中させる。

「ランバート、ついてきてもらえますか?」
「わかった。同じ魔術師同士なら、協力できるだろう」

 高次元の魔術障壁に入るのだ。中で戦闘になるかもしれん。

「違います。わたしが、クリム・エアハート氏をよく知らないからです」

 そうか。俺ならわずかな手がかりでも、クリムを追跡できる。

 サピィと手をつなぎ、最後の障壁の中へ潜る。

「なんですか、ここは?」

 目の前に広がる光景を前に、サピィが困惑した。

「ここは、昔のアイレーナじゃないか」

 どうして、χの首領の脳に、こんな記憶が?

 アイレーナによく似た土地に、一人の少年が立っている。

 幼い頃のクリムだ。

 雨が降ってきた。

 というのに、俺とサピィは濡れない。

 ここは、本当に誰かの記憶の中なのだろう。クリムか、あるいは別の誰かの。

 クリムはシャッターの降りた店の前でしゃがみ、雨宿りをしている。

 少年の顔を改めてみたが、間違いない。あの少年は、クリムだ。まだ三歳くらいか。物心はついているだろうが、自分であれこれ判断できる様子はない。

「どうした、ボウズ?」

 幼き頃のクリムに、中年のハンターが声をかけた。

「あの人は……」
「ランバート、あの方は?」
「クリムの親父さんだ」

 顔立ちは若いが、間違いない。中年ハンターが腰に下げているリボルバー銃は、今はクリムが持っているから。

 まさか、二人は実の親子じゃない?

「いえを、おいだされた」

 ハンターの問に、少年はそっけなく答えた。ふてくされているのか。

「なんでまた?」
「おまえは、しっぱいさくだ、って」
「それは、大変だったな」

 中年ハンターは少年と同じように座り込む。「名前は?」と少年に聞いた。

 クリムは首を振る。

「そうか。うちに来るか?」
「めいわくでしょ?」

 言った側から、少年は腹を鳴らした。

「身体は正直だな」

 ハンターは笑う。

「ガキが一人増えたくらい、問題ねえよ。友だちによお、お前と同じくらいの息子がいるんだ。遊び相手になってやってくれねえか?」

 立ち上がって、ハンターが少年に手を差し伸べた。

 少年は、中年ハンターの手を取る。

 突然、俺とサピィの身体が、空高く浮かび上がった。

「ランバート!」
 
 サピィが、俺の手を掴む。

 ハンターと少年が見えなくなったところで、記憶が途切れた。

 どうやら今のは、ドローンの映像だったようである。

 最後に上昇しながら、少年とハンターから遠ざかっていったから。
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