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最終部 レアドロップしない男と、レアドロップしまくっていた男 4-1 ふぬけたドワーフを、殴ります
旧友はどこへ?
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「あれは、フォート族か?」
「いえ。違います。よく似てますが、あちらは生身のようです」
サピィぃによると、「シーデーも同じことを言うだろう」とのこと。
「あら、ランバート?」
店じまいなのだろう。グレースは看板を片付けていた。
「なんだ今のは?」
「ハンターギルドの、もっと上の存在だって」
そんな組織があったのか。
「何度も悪い、グレース。おばさんと話せるか?」
「なにか、わかったの?」
「だいたいは。クリムが、お前たち家族と血がつながっていないこととか」
「どういうこと!?」
グレースの顔に、血の気が引く。
「それを聞きたいんですよね?」
激しくグレースは動揺したが、グレースの夫が肩を抑えた。
「わかったわ」
おかげで、グレースは冷静になる。
おばさんと話をした。
「クリムは、あたしが身ごもっているときに拾ってきた子だよ。二人も子どもができて大変だよって、あたしは言ったんだけどね。あの人は、今更ガキがもう一人増えてもいいだろって」
ほうっておけなかったのだろう、とおばさんは語る。
「あの人の性格じゃなかったら、クリムもグレースも育てられなかった。しょうもない事故で亡くなるまで、あの人はあんたらの父親でいてくれた。クリムも、グレースを本当の妹のようにかわいがってくれたよ」
グレースが、涙ぐむ。
「クリムの本当の父親って、誰かわかるか?」
俺が聞くと、おばさんは首を振った。
「手がかりになる情報も、持ってなかったね。自分の故郷とは、すっかり縁を切っちまったみたいでさ」
「連絡もなしか?」
「ああ。きっと、あたしらに迷惑をかけられないと思ったんだろうね」
そうか。あいつらしい。
「クリムのオヤジさんの形見は、銃しかないか?」
「いや。もうちょっとあったと思うよ。待ってな」
ベッドから腰を上げて、おばさんが小箱を持ってくる。
テーブルの上で、俺たちは箱を開けた。
奇妙な形のネックレスが、中に入っている。
「これは?」
小さいネックレスを、俺は手にした。
「わからないよ。ただあの子の持っていたものは、これだけだったそうだよ」
ロケットのようだが、中身を開ける手段がなかったという。
「取手はありますが、特殊な細工が施されています」
これは、ただのネックレスではないかもと、サピィは分析したようだ。
「おばさん、これを借りていく。クリムを見つけたら、返すつもりだ」
「頼むよ。クリムは悪い子じゃない」
「それは、俺が一番知っているさ」
俺は、おばさんを休ませる。
「本当の兄じゃなくても、クリムはあたしの兄よ。ランバート、クリムを助けてあげて」
「わかった」
クリムのネックレスを手がかりとして、コナツの鍛冶屋へ帰ってきた。
「マギマンサーの処置をすれば、もしかしたら」
「やってくれるか?」
「ええ。ランバート、もう一度、手を貸してください」
俺は、サピィの手を取る。
サピィがマギマンサーの力を発動させた瞬間、幼少期のクリムが姿を表した。
クリムは、鉄パイプでできたロボットのような細身の男性と一緒にいる。どこか山脈を歩いているようだ。
「どこだ、ここは?」
「このポイントは……【龍の背骨】です!」
まさか。龍の背骨は、【災厄の塔】の素材として使われているはずだ。
「あれはまだ、ほんの一部に過ぎません。【龍の背骨】とは、もっと壮大な山脈群なのです。塔に使われている石や鉄なんて、龍にしてはまだ小さい方ですよ」
塔を一つ建てるだけの素材が、まだ小さい龍程度だとは。
とにかく、龍の背骨に行けば、クリムがいるかもしれない。それがわかっただけでも。
「それよりわたしは、クリム氏の隣に立っている男性が気になります」
「何者だ?」
「錬金術師ファウストゥス。オミナスの作成責任者です」
クリムを連れているのは、人間の魔王だという。
「いえ。違います。よく似てますが、あちらは生身のようです」
サピィぃによると、「シーデーも同じことを言うだろう」とのこと。
「あら、ランバート?」
店じまいなのだろう。グレースは看板を片付けていた。
「なんだ今のは?」
「ハンターギルドの、もっと上の存在だって」
そんな組織があったのか。
「何度も悪い、グレース。おばさんと話せるか?」
「なにか、わかったの?」
「だいたいは。クリムが、お前たち家族と血がつながっていないこととか」
「どういうこと!?」
グレースの顔に、血の気が引く。
「それを聞きたいんですよね?」
激しくグレースは動揺したが、グレースの夫が肩を抑えた。
「わかったわ」
おかげで、グレースは冷静になる。
おばさんと話をした。
「クリムは、あたしが身ごもっているときに拾ってきた子だよ。二人も子どもができて大変だよって、あたしは言ったんだけどね。あの人は、今更ガキがもう一人増えてもいいだろって」
ほうっておけなかったのだろう、とおばさんは語る。
「あの人の性格じゃなかったら、クリムもグレースも育てられなかった。しょうもない事故で亡くなるまで、あの人はあんたらの父親でいてくれた。クリムも、グレースを本当の妹のようにかわいがってくれたよ」
グレースが、涙ぐむ。
「クリムの本当の父親って、誰かわかるか?」
俺が聞くと、おばさんは首を振った。
「手がかりになる情報も、持ってなかったね。自分の故郷とは、すっかり縁を切っちまったみたいでさ」
「連絡もなしか?」
「ああ。きっと、あたしらに迷惑をかけられないと思ったんだろうね」
そうか。あいつらしい。
「クリムのオヤジさんの形見は、銃しかないか?」
「いや。もうちょっとあったと思うよ。待ってな」
ベッドから腰を上げて、おばさんが小箱を持ってくる。
テーブルの上で、俺たちは箱を開けた。
奇妙な形のネックレスが、中に入っている。
「これは?」
小さいネックレスを、俺は手にした。
「わからないよ。ただあの子の持っていたものは、これだけだったそうだよ」
ロケットのようだが、中身を開ける手段がなかったという。
「取手はありますが、特殊な細工が施されています」
これは、ただのネックレスではないかもと、サピィは分析したようだ。
「おばさん、これを借りていく。クリムを見つけたら、返すつもりだ」
「頼むよ。クリムは悪い子じゃない」
「それは、俺が一番知っているさ」
俺は、おばさんを休ませる。
「本当の兄じゃなくても、クリムはあたしの兄よ。ランバート、クリムを助けてあげて」
「わかった」
クリムのネックレスを手がかりとして、コナツの鍛冶屋へ帰ってきた。
「マギマンサーの処置をすれば、もしかしたら」
「やってくれるか?」
「ええ。ランバート、もう一度、手を貸してください」
俺は、サピィの手を取る。
サピィがマギマンサーの力を発動させた瞬間、幼少期のクリムが姿を表した。
クリムは、鉄パイプでできたロボットのような細身の男性と一緒にいる。どこか山脈を歩いているようだ。
「どこだ、ここは?」
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まさか。龍の背骨は、【災厄の塔】の素材として使われているはずだ。
「あれはまだ、ほんの一部に過ぎません。【龍の背骨】とは、もっと壮大な山脈群なのです。塔に使われている石や鉄なんて、龍にしてはまだ小さい方ですよ」
塔を一つ建てるだけの素材が、まだ小さい龍程度だとは。
とにかく、龍の背骨に行けば、クリムがいるかもしれない。それがわかっただけでも。
「それよりわたしは、クリム氏の隣に立っている男性が気になります」
「何者だ?」
「錬金術師ファウストゥス。オミナスの作成責任者です」
クリムを連れているのは、人間の魔王だという。
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