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第二章 猛将と、闇の博士

第8話 バイクで、敵の拠点を襲撃

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「飛行機能があるじゃん。それではダメかい?」

 ニョンゴは「いいけど」といいつつ、疑問を口にする。

「移動も戦闘も、動力がスーツに依存しているんだ。パワーを使いすぎる」

 実際、スーツの負荷がシャレになっていない。

「それもそうだね。パワーがありあまり過ぎていて、気づかなかったよ」

 ニョンゴはどうも、パワープレイに頼りすぎるきらいがある。エネルギーが無尽蔵すぎて、ガス欠を想定していないのだ。効率的に、乗り物を活用した方がいい気がする。

「といっても、魔力効率ってそんなに良くないよ? 素直に化石燃料を使ったほうがいいんだが、この世界でそれは望めないし」

 ヘタにガソリンを掘り出して、生態系ぶっ壊すわけにもいかないからな。こんな世界に、ガソリン自体があるとは思えないし。

「動力に関しては、任せる馬車やらなんやらを取り込んで、オレにも高速移動が可能なマシンを作ってもらいたい」
「オッケー」

 骨格さえあれば、魔物の素材でどうにかできるだろう、とのことである。

「動力に関しては、ちょっと可能性があるんだよね」

 それは楽しみだ。
 
 今度は、装備品を確認する。

 武器屋に通された。

「では、こちらでアイテム一式を」
「わかった」

 オレは、出せるだけの素材を、武器屋に提供する。

 フローレンス姫どころか、経営者のデブいおっさんまでもが目を丸くした。

「なんだコイツは? 戦争でもしたってのか?」
「いいや。一方的な虐殺だな」

 とりあえず、素材を買い取ってもらう。 パワードスーツの強化に必要な素材は、リストから抜いてある。それでも、結構な金額になるらしい。

「すまんが、金がない。現物支給でいいかな?」
「構わん。そのつもりだった」

 この世界のヨロイも、見せてもらう。特に関節部分などがどうなっているか、研究しておきたい。知識があるかどうかは、スーツの出来に左右する。

 魔法処理を施した、レザーアーマーを見つけた。

 ジーンが着ているような、ビキニアーマーまで。

「マジックアーマーか。こんなもんまであるんだな」

 他のヨロイは重くて、両手でも担ぐのがやっとである。その点、マジックアーマーはバスタオルくらいに軽い。それで、鉄と同じ強度だという。もっとも、普通のヨロイより高価だが。

「魔女様の恩恵さ」

 自分も非力なエルフだからと、ニョンゴは女子どもでも扱える装備を作っていたという。 

「エンプーサのカマまで。こんなのもらっていいのか?」
「存分に、活用してくれ」
「ありがたいが、これはウチで加工はムリだ。よその街で面倒を見てもらいな。ライコネンよりデカイ街だと、王都とか。そこには、ドワーフがいるぜ」
「わかった。王都の安全を確保しよう」

 まずは、砦であるライコネン奪還だな。

 モンスターの肉類は、無料にした。

「いいのか? モンスターの肉って高級品だぜ?」
「オレには必要ない。素材のついでとして、買い取ってくれ」
「ありがてえ。こっちで食う量以外は、商業ギルドに分けておくよ。あと、全部はいらん。あんたが食える分は残しておくさ」
「助かる」
「王都や他国にも分けてやりたいんだが、流通ルートはすべて魔物に抑えられていて」

 魔物のせいで、物流面がすべてストップしているらしい。

「わかった。なんとかする」


 いろいろなやり取りをしているうちに、乗り物が完成したとか。

「フーッフフフ。どうだい? 見てくれよ!」
「こいつは、またヤバい機体を」

 ニョンゴが開発したのは、バイクだった。それも、「超必殺技を使わざるを得ない」といいたくなるような、いかついデザインである。

「キミ一人で活動するなら、こっちかなと」

 金属部分はヨロイから、外装はモンスターの甲殻から取り入れたらしい。タイヤは蜘蛛の糸を活用したのか。表面の溝まで、ちゃんと考えてあるデザインだ。

「シートがムカデの胴体とか。気持ち悪いな」
「もちろん、中身はないよ。シート部分にはクモの糸を使って、クッションを作ったよ」

 見た目だけでもバイクになっているが、動くのかよ?

「ていうか、オイルを入れるタンクはどこだよ?」

 空っぽどころか、タンクそのものがない。

「ワタシが燃料になろう。どっこいしょ、っと」

 ニョンゴの招き猫ドローンが、オイルタンクのある場所に収まる。

「エンジンが動き出したぞ」
「このドローンから、ワタシの魔力をバイクに送り込んで、動力に変えるのだ」

 まさか、異世界でバイクに乗れるとは。

 フローレンスとジーンが、不思議そうな顔をしている。

「じゃあ、ちょっくら試運転に行ってくる」
「お供します」
「やめておけ。スピードについてこられないかもしれん。それに、あんたらを危険に晒すわけには」
「民を放っておいて逃げたままでは、王女を名乗れません」

 姫の決意は堅い。

「……ニョンゴ、姫さんの分の荷台を用意しておいてくれ。できるだけ、安全なやつ」

 オレの言葉を聞いて、姫の目が明るくなった。

「ありがとうございます」
「だが、今はダメだ。試し乗りをして、調節してからになる」
「構いません」
「行ってくる」

 本当に、二日より短縮できるだろうか。

 アクセルを吹かし、前進する。

「これは、早い!」

 目の前に何もないから、ぶっ飛ばし放題だ。

「えっとね、ここから東に行ったところに三つ、砦のようなものがある。そこが、ライコネンの流通を封じている場所だよ」

 ライコネンを孤立させるため、建てた砦だろう。

「マジか。あの岩砦か?」

 もう、敵の砦が見えてきた。道を塞ぐように建っている。アレが、流通を阻害しているヤツらか。まだ一〇分も走っていないぜ。距離的に、馬車で半日はかかるのに。

「なんだアレは!?」

 魔物たちが、こちらに気づく。オークや鬼族だ。

 武装する手間すら与えず、オレは銃で撃退する。魔法で防御されていたが、すべて撃ち抜いた。

「車にしておけば、よかったね。人を乗せることを、想定していなかった」

 後ろに、シートもないしな。あったとしても、振り落とされるだろう。

「バイクには、バイクのよさがあるさ」

 すぐさま、二箇所目へ。ここも同じ魔物ばかりだった。

 最後のルートは、王都とライコネンを直接つなぐエリアである。

「今度はデカいな!」

 現れたのは、石でできた五メートルくらいのゴーレムだ。それにしても、オレがいた世界のロボットそっくりじゃないか。悪役として出てきそうなデザインである。

「あんなゴーレムを作る技術なんてあったのか!」
「なんでもいい。やっつける!」

 ゴーレムが、こちらに気づいた。のけぞりながら、大きく腕を振り上げる。

「そんなチンタラパンチが、当たるかよ!」

 バイクを寝かせて、地面スレスレを滑らせた。ゴーレムのパンチをギリギリで避ける。

「コイツは、バイクテクの見せ所だな」

 オレは、バイクでゴーレムの背中を駆け抜けた。

 背中を走るオレを振りほどこうと、ゴーレムが身体を振る。

 ピッタリと張り付き、バイクは離れない。タイミングに合わせて、軌道を変える。

「クモの糸のおかげだな。全然振りほどかれない」

 しかし、遊んでばかりもいられない。ゴーレムを止めないと。

「ゴーレムの弱点は目だよ!」
「よっしゃ! 喰らえ!」

 マジックミサイルを、ありったけ食わせた。

 目どころか頭まで吹っ飛び、ゴーレムは沈黙する。

「やったぜ……ん?」

 山の向こうに、人影があった。天パの男性だ。この世界に似つかわしくない、グラサンと焦げ茶色の近代的な背広という出で立ち。それにあれは……。

「あいつもバイクに乗ってやがる」

 こちらに来るか、と思ったが、仮面の男はバイクで姿を消す。

「待て!」

 追いかけてみたが、相手は魔力の痕跡すら消していた。

「見失ったよ。ワタシの魔力探知にも、引っかからないなんて」
「厄介なやつが、現れたな」
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