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第二章 盗賊団のしまつ
第8話 囚われの獣人を助けた
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そろりそろり、忍び寄る。
一人の女性が、奥の牢獄に鎖で繋がれている。かなり厳重に。
獣人族か。
コボルドじゃない。ワーウルフか。
タンクトップとデニムのホットパンツ姿で、四肢を拘束されていた。
さっきの音は、イビキだったみたい。
少女が、目を覚ます。
その女性は僕の顔を見るなり、牙をむき出しにしてきた。僕を食べ物だと思っているらしい。
「お腹、すいてるよね?」
相手は、やせ細っている。かなりの飢餓状態だ。
なにか食べさせようにも、いきなり固形では胃がビックリして吐いてしまう。
「ほら。はちみつのゼリーだ。ポーション機能付きだよ。これで落ち着いて」
エリちゃんからもらった、半球状のゼリーを手に置く。
「危なくないよ。僕を信じて」
女性の口へ、ゼリーを近づける。
差し出された物体が何かわからないながらも、少女は匂いをかぐ。
動物的カンから、食用だとはわかったはずだけど。
大丈夫。本物のケモノなら、どっちが食べ物かわかるはずだ。
安心したのか、女性は僕の手にあるゼリーだけをくわえた。
ムニュムニュ噛んで飲み込んだ瞬間、少女に血の気が戻ってくる。
「よかった。身体は元気になったみたいだね」
しかし、女性は僕の手をペロペロと舐めて放してくれない。このポーション、ちょっと効果が強くない?
「あ、ちょっとちょっと」
なんと、少女が鎖を引きちぎった。牢獄さえ、自力でぶっ壊す。
「元気が戻りすぎでしょうが!」
ハッハッと息を荒くして、少女は僕に馬乗りになる。
「大丈夫、アユム……アユム!?」
馬乗りで押さえつけられた状態を、エリちゃんに目撃されてしまった。
「ちょっと、アユムどうしたの!?」
「エリちゃん、ちょっと元気になる食べ物を与えたら、こんなことに」
「あー……あれ、媚薬入りだったから」
「なんでそんなの入れたの!?」
獣人少女の責めは終わらない。
「んー」
「え、ちょっと!?」
この子、僕にキスしようとしてるのか?
「さすがにちょっと、直接吸収とかは勘弁を!」
「んーむう!?」
エリちゃんの手が伸びて、少女は何かを口に入れた。そのまま、きゅうーっと気を失う。
「ポーション入りの、睡眠薬よ。ゾウだって夢の中に行けるわ」
「……助かったよ」
外の騒ぎを聞きつけ、人が集まってきたようだ。さて、最後の仕上げといきますか。
「この子を頼む」
とにかく、少女を運ぶことにした。
「何事だ!」
ギルドの関係者ならびに、この屋敷の主であろう小太りの男性が並ぶ。
貴族の後ろでは、中年男性が豪華なヨロイを着て立っている。彼が、キルドのマスターらしい。証拠に、腕章がついている。
では、貴族の隣にいる燕尾服のゴツイ男は、護衛か。
「どうしたもこうしたもないでしょう!? あなたのお屋敷が襲われたんですよ!」
獣人少女をおんぶしながら、僕は館の持ち主に詰め寄る。
「ボクたちはただの掃除屋なのに、追いかけ回されたんです! よく見ると、まあドクロ党じゃないですか! ああ恐ろしい!」
大げさに演技して、僕は身の潔白を証明した。
「な、なんと! それは、気の毒に……」
ドクロ党の名を聞いて、貴族は少しばかりうろたえる。
「なのに、どうしてでしょう? あなたの部屋だけ、まったく襲われていない。ご家族は襲われそうになったのに!」
僕の話を聞きながら、冒険者ギルドマスターらしき男性の目が険しくなる。
「本当だろうな?」
「僕は掃除屋ですよ。この目ではっきりと見ました」
部下に「調べろ」と指示を出し、ギルマスは貴族に詰め寄った。
「詳しい事情は、ギルドでお話願えますかな?」
ギルマスが貴族を連行しようとした途端、これまで黙っていた燕尾服の男が、クワッと顔を上げた。
「だから、人間など信用できぬといったのだ。魔族だけでことを済ませば、こんなトラブルには!」
燕尾服が破れ、中から毛むくじゃらのモンスターが現れる。
魔族は、貴族の男性を殴り殺そうとした。情報源を始末するつもりだ。
しかし、ギルマスが盾でかばう。
「クソが!」
ギルドの兵たちが、一斉に矢を射撃した。
だが、体毛に覆われた皮膚が矢を一本たりとも通さない。
「ムダだ。人間ごときにこの私は倒せぬ。やはり人間に化けて社会を裏から操るなんて回りくどいことなど、性に合わん!」
魔族の剛腕が、兵隊たちをふっとばす。やつは片手で、屈強なギルド部隊たちを蹴散らしてしまった。
ギルマスは、動けない。
参戦したくても、今動けば貴族を逃してしまう。
本格的にやばい。ここはまず、背負っている彼女だけでも逃して……あれ? いない。
いつの間にか、おぶっていた少女が跳躍していた。長い手の爪を伸ばし、強固な魔族の首をいとも簡単に跳ね飛ばす。
ゴロンゴロン、と、魔族の首が転がっていく。ギルマスの足先で、止まった。なにか少しでも情報を得ようとしたのか、ギルマスは魔族の首を手に取る。しかし、首は砂となって消えた。首を失った肉体ごと。
「くかー」
また寝た!? 立ったまま前のめりになりながら!
「危ない危ない!」
慌てて、僕は獣人少女を支えた。
しかし、無理な体制でキャッチしたから重さで倒れてしまった。彼女が僕より背が高いのもある。
それにしても、一撃で頑丈な魔族を倒すなんて。
この子は、一体何者なんだ?
その優しそうな寝顔からは、とてもさっきの攻撃を食らわせた張本人だとはわからなかった。
一人の女性が、奥の牢獄に鎖で繋がれている。かなり厳重に。
獣人族か。
コボルドじゃない。ワーウルフか。
タンクトップとデニムのホットパンツ姿で、四肢を拘束されていた。
さっきの音は、イビキだったみたい。
少女が、目を覚ます。
その女性は僕の顔を見るなり、牙をむき出しにしてきた。僕を食べ物だと思っているらしい。
「お腹、すいてるよね?」
相手は、やせ細っている。かなりの飢餓状態だ。
なにか食べさせようにも、いきなり固形では胃がビックリして吐いてしまう。
「ほら。はちみつのゼリーだ。ポーション機能付きだよ。これで落ち着いて」
エリちゃんからもらった、半球状のゼリーを手に置く。
「危なくないよ。僕を信じて」
女性の口へ、ゼリーを近づける。
差し出された物体が何かわからないながらも、少女は匂いをかぐ。
動物的カンから、食用だとはわかったはずだけど。
大丈夫。本物のケモノなら、どっちが食べ物かわかるはずだ。
安心したのか、女性は僕の手にあるゼリーだけをくわえた。
ムニュムニュ噛んで飲み込んだ瞬間、少女に血の気が戻ってくる。
「よかった。身体は元気になったみたいだね」
しかし、女性は僕の手をペロペロと舐めて放してくれない。このポーション、ちょっと効果が強くない?
「あ、ちょっとちょっと」
なんと、少女が鎖を引きちぎった。牢獄さえ、自力でぶっ壊す。
「元気が戻りすぎでしょうが!」
ハッハッと息を荒くして、少女は僕に馬乗りになる。
「大丈夫、アユム……アユム!?」
馬乗りで押さえつけられた状態を、エリちゃんに目撃されてしまった。
「ちょっと、アユムどうしたの!?」
「エリちゃん、ちょっと元気になる食べ物を与えたら、こんなことに」
「あー……あれ、媚薬入りだったから」
「なんでそんなの入れたの!?」
獣人少女の責めは終わらない。
「んー」
「え、ちょっと!?」
この子、僕にキスしようとしてるのか?
「さすがにちょっと、直接吸収とかは勘弁を!」
「んーむう!?」
エリちゃんの手が伸びて、少女は何かを口に入れた。そのまま、きゅうーっと気を失う。
「ポーション入りの、睡眠薬よ。ゾウだって夢の中に行けるわ」
「……助かったよ」
外の騒ぎを聞きつけ、人が集まってきたようだ。さて、最後の仕上げといきますか。
「この子を頼む」
とにかく、少女を運ぶことにした。
「何事だ!」
ギルドの関係者ならびに、この屋敷の主であろう小太りの男性が並ぶ。
貴族の後ろでは、中年男性が豪華なヨロイを着て立っている。彼が、キルドのマスターらしい。証拠に、腕章がついている。
では、貴族の隣にいる燕尾服のゴツイ男は、護衛か。
「どうしたもこうしたもないでしょう!? あなたのお屋敷が襲われたんですよ!」
獣人少女をおんぶしながら、僕は館の持ち主に詰め寄る。
「ボクたちはただの掃除屋なのに、追いかけ回されたんです! よく見ると、まあドクロ党じゃないですか! ああ恐ろしい!」
大げさに演技して、僕は身の潔白を証明した。
「な、なんと! それは、気の毒に……」
ドクロ党の名を聞いて、貴族は少しばかりうろたえる。
「なのに、どうしてでしょう? あなたの部屋だけ、まったく襲われていない。ご家族は襲われそうになったのに!」
僕の話を聞きながら、冒険者ギルドマスターらしき男性の目が険しくなる。
「本当だろうな?」
「僕は掃除屋ですよ。この目ではっきりと見ました」
部下に「調べろ」と指示を出し、ギルマスは貴族に詰め寄った。
「詳しい事情は、ギルドでお話願えますかな?」
ギルマスが貴族を連行しようとした途端、これまで黙っていた燕尾服の男が、クワッと顔を上げた。
「だから、人間など信用できぬといったのだ。魔族だけでことを済ませば、こんなトラブルには!」
燕尾服が破れ、中から毛むくじゃらのモンスターが現れる。
魔族は、貴族の男性を殴り殺そうとした。情報源を始末するつもりだ。
しかし、ギルマスが盾でかばう。
「クソが!」
ギルドの兵たちが、一斉に矢を射撃した。
だが、体毛に覆われた皮膚が矢を一本たりとも通さない。
「ムダだ。人間ごときにこの私は倒せぬ。やはり人間に化けて社会を裏から操るなんて回りくどいことなど、性に合わん!」
魔族の剛腕が、兵隊たちをふっとばす。やつは片手で、屈強なギルド部隊たちを蹴散らしてしまった。
ギルマスは、動けない。
参戦したくても、今動けば貴族を逃してしまう。
本格的にやばい。ここはまず、背負っている彼女だけでも逃して……あれ? いない。
いつの間にか、おぶっていた少女が跳躍していた。長い手の爪を伸ばし、強固な魔族の首をいとも簡単に跳ね飛ばす。
ゴロンゴロン、と、魔族の首が転がっていく。ギルマスの足先で、止まった。なにか少しでも情報を得ようとしたのか、ギルマスは魔族の首を手に取る。しかし、首は砂となって消えた。首を失った肉体ごと。
「くかー」
また寝た!? 立ったまま前のめりになりながら!
「危ない危ない!」
慌てて、僕は獣人少女を支えた。
しかし、無理な体制でキャッチしたから重さで倒れてしまった。彼女が僕より背が高いのもある。
それにしても、一撃で頑丈な魔族を倒すなんて。
この子は、一体何者なんだ?
その優しそうな寝顔からは、とてもさっきの攻撃を食らわせた張本人だとはわからなかった。
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